株式会社SMALL WORLDS 代表取締役 近藤正拡さん

起業家の本棚

起業家の本棚では、注目の起業家が語る「その時、私を支えた1冊」をご紹介します。
1人目の起業家は、6月有明に世界最大級の屋内型ミニチュア・テーマパーク 『SMALL WORLDS TOKYO』をオープンした、株式会社 SMALL WORLDS 代表取締役の近藤正拡さんです。

すでに 40 年以上前に原案が! SNS 映えで人気のミニチュアテーマパーク『スモールワールズ TOKYO』誕生秘話

近藤 正拡さん(株式会社 SMALL WORLDS 代表取締役)

近藤正拡 さん(株式会社 SMALL WORLDS 代表取締役)

1996年、青山学院大学 国際政治経済学部国際政治学科卒。
三菱信託銀行 受託財産運用部門投資企画部を経て、ヤフー株式会社でモバイル戦略室長。
2008年 東京ディズニーランド総合プロデューサーであった堀貞一郎氏と出会い、2009年に堀氏の2つの事業企画をもとに「SMALL WORLDS」の事業企画を立案。肉料理特化型のフードエンタテインメント「肉フェス」や、グローバル起業家等育成プログラム「始動 Next Innovator 2020」など、さまざまな事業の立ち上げに関わったのち、2016年にSMALL WORLDS社を創業。



「実はスモールワールズのアイデアは 1970年代にすでに生まれていたものなんです。僕は そのアイデアを受け継いで実現させたに過ぎないんです。」

そう語るのは今、話題のミニチュア世界のテーマパーク『スモールワールズ TOKYO』を 運営する株式会社 SMALL WORLDS代表の近藤正拡さん。2008年、近藤さんは東京ディズニーランド誘致を実現させた伝説的人物・堀貞一郎氏と出会う。スモールワールズの原案は、その堀氏が 1970年代に企画したものだったという。

「1975年に掘さんが書かれた第一原稿の企画書があり、1990年代にそれを手直ししたものが、スモールワールズの原型となっています。僕は堀さんの資料整理を手伝いながらその企画書を読ませていただいたのですが、それは金融で働いてきた視点から見てもサービスを立ち上げた視点から見ても、見事に考えつくされているものでした。読んだ瞬間にビジョンがすべて見えたんです。これをぜひ、自分の手で実現したいと思いました。企画書を読んだ翌年には、スモールワールズを設立する目的で、当時務めていたヤフーを退職したんです。
 堀さんはスモールワールズの原案を企画した 1970年代に、これからの日本の人口の変異や社会構造、どんな文化が到来するかということを予測していました。やがて携帯電話の普及率が9割を超え、人々はリアルなコミュニケーションをより望む時代になるだろうという仮説を当時すでに立てており、東京ディズニーランドや東京ディズニーシーはそれに基づいて新たなカルチャーを生み出すことに成功しました。70年代や90年代にした予測がほとんど外れていないって恐ろしいことですよ。そんな堀さんの企画に惚れ込んで、僕も人生をかけたいと思ったんです。」


■スモールワールズ設立を決意した当時、近藤さんが読んでいたのがその堀氏の著作。

近藤氏 「堀さんと出会ってすぐに、もっと堀さんのことを知ろうと思ってまず読んだのが『“感動” が人を動かす』と『人生は出会った人で決まる』でした。ここに書かれていることは、今の 僕の考え方の柱となっています。『“感動”が人を動かす』は、東京ディズニーランド立ち上 げのバックグラウンドストーリーが記されている本です。僕の前職は、いわばインターネットの世界で人を集めるのが仕事でしたが、テーマパークはリアルに人を集めなければならない。そのために、ディズニーで堀さんたちが目指したのは“人の心を揺さぶる”ことでした。 僕はネットで人を集める戦略は一通りやり尽くしたと思っていたのですが、顧客の心をつかむサービスを生み出すには人の心を動かすことだという原点に立ち返らせてくれた本でもありました。」


■会社で働きながら起業準備を進める人が多い中、近藤さんは起業を決意して間もなく退職し、2016年に株式会社 SMALL WORLDSを設立するまでの約6年間、さまざまな企業やプロジェクトを手伝いながら起業準備を進めていくという形を選んだ。

近藤氏 「その6年間は、堀さんが生み出したビジョンを自分の中に落とし込みながら、起業に必要なスキルや人材、人脈を集めるためにも必要な時間でした。その期間、僕は堀さんのもとに何度も通いながら、堀さんがどうやってここまでの企画を作ったのか、彼のたどった思考を追体験する作業をしていました。堀さんは答えどころかヒントすらくれないんです(笑)。 今は資料をすべて引き継いだので分かっていますが、当時は1つずつ、堀さんと問答のようなやりとりをしながら、堀さんがその企画を生み出していった過程を辿っていきました。」


■その準備期間、堀氏の企画を自分の中に落とし込み、自らもさまざまなプロジェクトに携わり、その経験を生かしながら事業計画に磨きをかけていった近藤さん。

近藤氏 「中でもとくに大きな経験となったのが、伊佐山元さんが代表を務めるWiLと経産省がともに立ち上げたイノベーター育成プログラムに携わったことでした。これは日本の起業家をシリコンバレーに送りイノベーションの現場を体験させるというプロジェクトで、僕自身も勉強になることが本当に多かったです。この経験とともに重要な知見を与えてくれたのが、入山章栄さんの『世界標準の経営理論』です。イノベーションに関する本で、主要な 経営理論の数々を解説する内容となっています。この本は、堀さんの企画書に対して、僕が自分なりの考え方を加えるうえでとても重要な本となりました。企画書に書かれていない部分、いわば未知の世界に入ったときに、自分なりの答えを見出していく助けになった本です。」


■近藤さんは「すでにあった企画書をもとに作っていっただけ。」と言うが、企画者の堀氏自身も実現しえなかったアイデアを実現させるという大きな挑戦だけに、相当な困難があったはず。実際に、当初は2020年4月に予定していたグランドオープンが新型コロナウイルス感染症拡大の影響により 6 月に延期になるという予想外の事態にも直面している。

近藤氏 「開業延期は確かに予想外でしたが、それでも我々は早くに世界的な感染拡大の状況をつかみ、海外の感染対策を視察するなどして、徹底した対策を組みこんでいくことができました。もちろん、開業前にもいろいろなことがありました。そういうとき心の支えになってくれた本が、堀さんと出会った当時にも読んでいた『人生は出会った人で決まる』。これは、堀さん自身の意思決定に深く関わった人々との出会いが記されている本です。堀さん自身も、 もとは大手広告代理店に所属しテレビ局のプロデューサーをしていたところを江戸英雄さんらと出会い、当時はベンチャーだったオリエンタルランドに入社して東京ディズニーランドを誘致するわけですが、そういった経験から綴られる言葉を通して“どんな人と出会うか”が、いかに重要か考えさせられる本となっています。」


■とくに参考になったのが“どんな人と付き合っていくか”という視点だったという。

近藤氏 「堀さんってネガティブな縁はさっさと切っていくんですけど、僕はもとが銀行員で、銀行員とは基本的にどんな人とでも笑顔で付き合わなければならないと教え込まれるものなので、そういう考え方ができるようになるにはかなり大きな壁を乗り越えなければいけませんでした。でも確かに困難な状況を分析してみると、あきらめるとか切り替えることで新たな道が生まれる場合が多々あるんです。我々も開業を目前に、急に1つの企業から出資を断られるという事態に直面したのですが、その2週間後には別の同業他社さんが名乗りを上げてくれたことがありました。堀さんのそういった考え方に触れてからは僕自身、課題に直面しても、課題があるなら解決するために動くというシンプルな受け止め方ができるようになりました。それが習慣づいて、いつの間にか答え探しを楽しめるようになりましたね。」


■何より近藤さんの心の支えになったのは…。

近藤氏 「実際は堀さんの言葉というより、東京ディズニーランドそのものなんです。課題が生まれたときや選択しなければならないときなど、何かあると僕はいつも東京ディズニーランドに行っていました。それも、アトラクションのホーンテッドマンション。あのゴースト・ホストの声は、堀さん自身が演じているんですよ。直接、会いに行くと怒られそうだから(笑) ホーンテッドマンションの声を聞きながら堀さんの視点に立ち返っていました。堀さんは、普段はとても優しい方なんですが、ある日“君は僕の時間を一体なんだと思っているんだ”と、 ものすごく怒られたことがあったんです。そのときは本当にへこみましたけど、後になって、あれは堀さんなりの“卒業証明書”だったんだと気づきました。もう大丈夫だから、ここから先は自分で考えろ、と。」


■人気のキャラクターの世界観を取り入れるなど、現代にも刺さる要素が随所に仕掛けられているSMALL WORLDS TOKYO。SNSやメディアでも話題を呼び、すでに若い世代にも多くのファンを生んでいる。

近藤氏 「開業するまで、投資家や関係者からずっと“10代、20代の女性が来るような施設になるとは思えない”という意見をもらっていたのですが、実際、今の客層は10代20 代の女性が中心です。女性だけで遊びに来ているグループも多く、自分たちが立てた仮説は間違っていなかったなと実感できました。確かに“ミニチュア”とだけ聞くと、鉄道模型ファンや、大人の男性中心というイメージがあるようですが、我々が行っているのはミニチュアの展示ではなく、心のよりどころになるエンターテインメントを提供することなのです。その“心のよりどころ”を強く求めているのは、まさに10代や20代、30代といった現役世代。何かにチャレンジしている人が、ふと気を抜くことができる。それが今求められるエンターテインメントの根幹にあると思います。」


■まだスタート地点に立ったばかり、と近藤さん。

近藤氏 「現在のスモールワールズは、ようやくプラットフォームができたところです。これからお客様やクリエイター、企業やプロジェクトなど、いろいろな方がこの世界に入り込み発展させてく。これは、そういうエンターテインメントなのです。すでにクリエイターの方々に表現の場として活用していただく企画を始めています。また、スモールワールズにはエンターテインメントとしての側面と、日本の企業によるミニチュア万博事業としての側面という2つの面があるのですが、堀さんも具体的に深掘りできていなかった“ミニチュア万博”として の側面も、今後さらに発展させていくつもりです。今は、スモールワールズを世界展開につなげるプロジェクトの始まりに、ようやく立てたという気持ちです。何しろ10拠点作らないとディズニーランドに追いつけないので、まだまだ先は長いですが(笑)。」

近藤正拡さんの起業家年表&「その時の1 冊」

【1996年4月】 三菱UFJ信託銀行株式会社入社

【2004年4月】 ヤフー株式会社入社

【2006年10月】 ソフトバンクモバイル株式会社出向

【2008年12月】 堀貞一郎氏と出会いテーマパーク事業に関心を持つ

“感動”が人を動かす―東京ディズニーランドの成功を支えた名脇役たち』 (著者:堀貞一郎 致知選書)

「2008年12月ごろ堀さんと出会い、堀さんの本を読みまくったのですが当時その中で最も面白いと感じた本。ネット世界の中で人を集める戦略を考えてきた僕にとってリアルに人を集めるための戦略はとても興味深いものでした。人を集めるためには感動で心を動かすことだという堀さんの、サービスを作るうえでの基本的な指針であり、僕の指針ともなった本。」

人生は出会った人で決まる―夢を持ち行動すれば、人がチャンスを運んでくれる』(著者:堀貞一郎 ゴマブックス)

「これも同じく堀さんと出会ってすぐ読んで以来、僕の考え方の柱となっている本。堀さんが、ともにTDRを作ることになった人々との出会いと、大企業からベンチャーへ移りTDRを作る決意を生んだ意思決定について記されています。僕にとっては困難にぶつかったときの支えにもなった本です。」

【2009年3月】 SMALL WORLDS 設立を決意。堀貞一郎氏創業の株式会社エル・エー・シーにプロデューサーとして参画。

【2015年4月】 株式会社 WiLx 入社。イノベーター育成事業を推進。

世界基準の経営理論』(著者:入山章栄 ダイヤモンド社)

「堀さんが1970年代から構想していたミニチュア・テーマパークの企画書に対して、僕が自分なりの考え方を加えるうえでとても参考になった本。いわゆるイノベーションに関する本で、主要な経営理論の数々を解説しています。」

【2016年11月】 株式会社 SMALL WORLDS 創業。

【2020年4月】 SMALL WORLDS TOKYO がコロナの影響でグランドオープン延期。

【2020年6月】 SMALL WORLDS TOKYO が有明にオープン。SMALL WORLDS OKINAWAの開業準備を開始。

ミニチュア世界のテーマパーク「スモールワールズTOKYO」

6月、有明にオープンするや否やSNSやメディアで大きな話題を呼んでいる世界最大の室内型ミニチュア・テーマパーク「スモールワールズTOKYO」。最新鋭の飛行機がリアルに離発着する『関西国際空港』エリアや、スペースシャトルがダイナミックに発射される『宇宙センター』エリア。アジアとヨーロッパを舞台にした『世界の街』エリア。 憧れのヒロインや主人公が住む世界を完全再現した『美少女戦⼠セーラームーン』エリアに『エヴァンゲリオン』エリアと、動く仕掛けも満載のミニチュア世界に没入できる。自分の3Dフィギュアを設置できる“住民権”付きチケットも人気。

【場所】東京都江東区有明1−3−33有明物流センター
【URL】http://www.smallworlds.jp/

取材:TOKYO HEADLINE