創業期に放出する株式シェアはどれくらいが望ましい?

コンシェルジュ通信

コンシェルジュ通信では、スタハで実施しているコンシェルジュ起業相談の事例をもとに、少し発展的なトピックスをご紹介します。
今回の担当は、中西弘士コンシェルジュです。

コンシェルジュ 中西 弘士

コンシェルジュ 中西 弘士

東芝で半導体の研究開発に従事した後、中央青山監査法人(現あらた監査法人)に入所。上場企業監査やIPO支援業務を行いながら、東京大学 産学連携本部の客員連携研究員として大学発スタートアップや知的財産の短期調査業務等に携わる。2007年野村證券に入社し、ベンチャー投資とExitまでの一連のサポート業務、ならびに資本市場制度に関する制度調査業務、年金基金向けの資産運用アドバイザリー業務を経験した。その後、AIG富士生命保険(現FWD富士生命)では、コントローラーとして、日々のオペレーション業務や業務改善のほか新規プロジェクトの立ち上げなどのマネジメントを経験。2014年あずさ監査法人に入所し、IPOを目指すスタートアップの資金調達や資本政策の支援に注力。同時に、CVCアドバイザリーチームのコアメンバーとして事業会社のファンド設立・運営支援、新規事業立ち上げ支援などを実施した。
2019年、事業会社のCVC支援、スタートアップ支援を目的にパックス・パートナーズを設立。同時にコンコードベンチャーズのディレクターとして、ソーシャルベンチャーを中心としたシード投資業務を実施。この他、モビリティ、AIなど複数ベンチャー企業の社外役員を兼務。

<資格・所属団体等>
公認会計士


目次
【1】まず創業者が考えるべきこと
【2】投資家との企業価値に関する合意が必要
【3】創業期に放出する株式シェアはどれくらいが望ましいのか?



Q: 現在、会社設立準備中で、第三者への株式発行による資金調達を考えています。どれくらいの株式シェアを放出すればよいのでしょうか?その考え方や企業価値の相場観などについて、教えてください。

A:
【1】まず創業者が考えるべきこと


放出する株式シェアの割合を考える前に、第三者に株式を与える意味について知っておく必要があります。会社法によって、株式会社の重要な意思決定は株主総会で行うことが決められています。
下表は、創業期の事業活動に重要な影響を与えると思われる決議事項についてまとめたものです。

創業期の事業活動に重要な影響を与えると思われる決議事項

事業基盤が十分確立できていない創業期には、柔軟で迅速な意思決定が求められます。株主総会では各株主が保有する議決権割合に応じて投票が行われるため、創業者は十分な株式シェアを確保しておくことが重要です。
例えば、外部株主の議決権保有割合が50%超になると取締役の選解任の権限を失うことになり、柔軟な経営体制の構築に支障が出るかもしれません。さらに、66.7%以上になると資金調達の最終決定権も依存することになるため、事業拡大のための迅速で柔軟な資金調達のボトルネックになる可能性もあります。究極的には、事業の進捗次第では創業者の意向に反して会社の解散決議まで出来てしまいます。

また、株式シェアは将来企業価値が増加した際の経済的な果実の分配割合でもあります。創業期の不安定な事業環境下で一番リスクを取っているはずの創業者自身の持ち分が相応でない場合、事業拡大に対するモチベーションが低下する可能性もあります。

このように、第三者から株式での資金調達を行う際には、
① 会社経営の観点
② 創業者のモチベーションの観点
をきちんと整理する必要があります。

【2】投資家との企業価値に関する合意が必要

株式発行により第三者から資金調達する場合、放出するシェア、すなわち各投資家の株式シェアは、その時点での企業価値に占める資金拠出額の割合によって算定されます。例えば、事業に必要な資金3百万円を外部の投資家から調達する場合、その時点での企業価値によって放出シェアは異なります。

企業価値によって放出シェアは異なります

企業価値とは、端的に言うと、その会社の事業から生まれる将来の収益獲得総額の期待値で、それは、創業者が一方的に作成した数値ではなく、投資家も納得した数値で算定したものとなります。【1】で示した創業者の考える理想的な株式持分を実現するためには、投資家にとって魅力的なビジネスプランが重要である点は言うまでもありません。

【3】創業期に放出する株式シェアはどれくらいが望ましいのか?

一般的に、会社は事業進捗に伴い第三者からの資金調達を繰り返し、創業者の株式持分比率は低下していきます。将来の資金調達予定も踏まえ、外部株主のシェアを検討・決定する計画を「資本政策」といい、事業計画と同様、外部から資金調達する際に作成する重要な経営資料でもあります。下表は、複数のVC担当者へのヒアリングや私のこれまでの経験を踏まえ、一般的なスタートアップ企業の成長ステージごとの資金調達額や企業価値の相場観、および株式放出シェアや創業者持分比率のイメージを記載したものです。

創業期に放出する株式シェアはどれくらいが望ましいのか?

※数値は、あくまで個人の経験に基づくものである点はご承知おきください。

もちろん、会社ごとの個別事情を勘案しながら資本政策を策定して放出シェアを決定するべきですが、上記表に記載したように、設立やシード期の会社創業ステージにおいて第三者に放出する株式の割合は20%くらいまでに抑えるのが望ましいのではないかと考えています。

会社の資本政策には唯一絶対的な解は存在しません。実際には、創業者の想いや経営に対する考え方、企業価値の相場観などを踏まえたうえで、自分なりの解を見つけていくことになります。 その際には、具体的なファイナンス手法の選択やバリュエーションの考え方など複雑な要素も絡んできますので、必要に応じて、コンシェルジュへの相談もご検討ください。

コンシェルジュ 中西 弘士

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