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AuB株式会社代表取締役 鈴木啓太 さん

コロナで注目高まる“腸内環境”でスタートアップ
「サッカー選手を目指したときも“無理だ”と言われた。それでもやるのが起業家」

起業家の本棚では、注目の起業家が語る「その時、私を支えた1冊」をご紹介します。
今回は、プロサッカー選手時代に、浦和レッズ、そしてサッカー日本代表選手として活躍した鈴木啓太さんです。現役時代から、引退後は起業することを考えていたという鈴木さんが起業アイデアとして着目したのがアスリートの“腸内環境”でした。

AuB株式会社 代表取締役 鈴木啓太さん

 

鈴木啓太さん(AuB株式会社 代表取締役)

元サッカー日本代表。2000年にJリーグ浦和レッドダイヤモンズに入団し、2015年シーズンで引退するまで浦和レッズの中心選手として活躍。オシム監督率いる日本代表では唯一人全試合先発出場を果たす。現役を引退した2015年にAuB株式会社を設立。

 

「自分が上手な選手ではなかったからでしょうね(笑)」と、起業意識を持つようになった背景を聞かれ苦笑する鈴木さん。

鈴木氏「僕は学生時代からずっと“一番うまいやつ”ではなかった。だからこそ負けないためにはどうするか、自分をどうチームに生かすか、常に自分の現状を客観し分析して生き残る道を探してきたんです。それが、現役時代から引退後のことを見据えることができた理由だと思います。」

 

プロ生活を引退する年、鈴木さんが設立したのはアスリートの腸内環境の解析を手掛けるスタートアップ企業AuB。もともと調理師だった母の影響で自然と腸によい生活習慣が身についていた鈴木さんは、オリンピック最終予選で他の選手が腸の不調を訴える一方、自分は平気という状況を見て改めて腸内環境を意識するように。同時に、現役引退後のことも早くから考えていたという。

鈴木氏「2002~2007年あたり、浦和レッズが好成績を続けていたのですが、ある年の収益を聞いたところ80億弱だと。それはすごいとみんなは言っていましたが、それくらいの収益を上げている起業家は僕の知り合いにもいて、しかも浦和レッズに比べたら知名度なんて全然ないのに、日本では知る人も多いはずのレッズの収益がそれくらいなのか、と僕は思った。企業としてだけでなく選手個人にしても、それなりの額をもらっているように見えてもプレーできるのはJリーグだと6~7年。それ以前にも多大な投資をしていますし、引退後もそのお金で食べて行けるほどではない。せめて引退後、大学に行くとか専門的知識を学ぶとか、3年くらいは次のステップのための準備期間を持てるような余裕があればいいけど、実際それも難しいんです。まずはスポーツ産業全体をもっと大きくしなければいけない、僕は一度この世界の外に出てビジネスで還元できればということを25~26歳あたりから考えていました。」

 

そしてあるとき排便の記録アプリを作っているという人物と出会う。

鈴木氏「人によって腸に存在する腸内細菌の種類や量がまったく違っていて、優れた腸内細菌はサプリなどにして役立てると知り、それを事業にしたら面白いのではとすぐに思い、1週間後には会社設立を決心していましたね(笑)」

 

しかし製品化までは長い研究期間が続いた。

鈴木氏「研究成果が肝ですからそこをおろそかにするわけにはいかなかったんです。しかしビジネスとしての動きとズレが起こり、やがて資金が底をつきるという状況が迫りました。その時期は現役時代にも感じたことがないようなプレッシャーを覚えましたね。あの時期を経験してかなり成長したと思います(笑)」

 

その後、大手製薬会社などから資金調達。アスリート特有の腸内環境の傾向を見出し、“アスリート菌”とも呼ぶべき腸内細菌を使った製品も完成した。

鈴木氏「うちの家族もこのサプリを使って良さを実感してくれているみたいで。たまに切らしてしまうと妻が“またお願い”と言ってくれます(笑)。自分の家族の健康を守ることができるっていいなと改めて思いました。」

 

起業を決意した当時は周囲から止められたと振り返る。

鈴木氏「バイオでベンチャーなんて絶対無理だ、と言われました。でも僕はサッカー選手になりたいと言っていたときも周りから無理だ、大変だと言われながらも選手になりました。起業しようか迷ってるという人にアドバイスするとしたら僕だって“大変だからやめとけば”と言います(笑)。でもそれでもやりたいことがある、だから挑戦するのが起業、起業家なんだと思います。」

鈴木啓太さんの起業家年表&「その時の1冊」

【2000年1月】 浦和レッズダイヤモンズ入団

アルケミスト 夢を旅した少年』(著者:パウロ・コエーリョ 角川文庫)

「レッズに入って先輩から本を読んだほうがいいと勧められたのがこの本。人生の広がりを感じて、そこから本にハマりました。キャンプになると10冊くらい持って行って読んでました。でもサッカー選手の本はあまり読まなかったですね(笑)」

【2004年3月】 U-23 日本代表アテネ五輪アジア最終予選。UAE戦前夜から選手全23人中18人が下痢などの不調に

【2015年10月】 発起人としてAuBを設立

海賊とよばれた男』(著者:百田 尚樹 講談社)

「現役時代に読んで刺激を受けた本。出光興産創業者・出光佐三がモデルと聞いて、この時代にこんな大きな勝負に挑んだ先人がいたんだ、小さくまとまってちゃいけないなと思いました。」

 

松明(たいまつ)は自分の手で』(著者:藤沢武夫 PHP研究所)

「起業を決意したころに読んでいた本。本田宗一郎とともに「世界のホンダ」を育てた藤沢武夫氏が自身の経営論などを語っている本です。藤沢氏は泥臭い仕事もいとわず裏方に徹し本田さんを支えた。現役時代の僕の持ち味と似ていて共感を覚えました。よく闘莉王が勝手に上がってっちゃうんですよ(笑)。でも僕は後ろでカバーして点につながればと思っていました。」

【2016年1月】 浦和レッズダイヤモンズ退団。16年間のプロサッカー選手生活を終え、AuBの代表取締役に就任

【2018年10月】 アスリートと一般人の腸内環境の違い「酪酸菌」について学会で発表

【2019年3月】 アスリートから集めた便が500人(27競技)、検体数1000を突破

【2019年4月】 資金が枯渇する危機に直面。4月には残り2カ月で資金が底をつくような状態に。会社を興してから最も過酷な日々で、出資が決まるまでは倒産も頭をよぎり、眠れない毎日を過ごす。

【2019年9月】 大正製薬と三菱UFJキャピタル、個人投資家を引受先とする第三者割当増資を実施し、総額約3億円の調達成功を発表

【2019年10月】 フードテックビジネス参入の第1弾商品となる、腸内環境を整えるサプリメント「AuB BASE」をクラウドファンディングサイト「マクアケ」で先行販売。100万円の目標金額 に対し900万円の支援金が集まる。

【2019年12月】 自社ECサイトにて「AuB BASE」発売

道は開ける』(著者:デール・カーネギー 創元社)

「最初に読んだのは30歳くらいなんですが、研究資金が底をつきかけていたとき、知人から「不安を感じている余裕があるならまだ動ける時間があるということ」と励まされ、カーネギーもそんなことを書いていたなと思い出しました。現役時代から自分の状況を客観的に分析することを心掛けていたのですが、そのときはそれができなくなっていた。改めて読み直し少し冷静になれました。」

【2020年9月】 元オリンピアンの腸内から新種のビフィズス菌「AuB-001」を発見。国際特許を出願

集めた数は700人分超え!アスリートの腸内環境研究からサプリを開発

AuB(オーブ)はサッカー元日本代表の鈴木啓太氏が創業した、アスリートの腸内環境の解析を手掛けるスタートアップ企業。これまでに28競技700人以上のトップアスリートから1400検体以上の便(データ)を収集し研究。創業から4年をかけて、日ごろから運動と食事に気を使うアスリートの腸に棲む菌の種類や割合の傾向を突き止めるなどの成果を生み出し、その研究から開発した「アスリート菌ミックス」を使ったサプリメント「AuB BASE(オーブ ベース)」を2019年12月に発売。第二弾商品として腸内環境を整えるプロテイン「AuB MAKE(オーブ メイク)」を2021年1月初旬に新発売する予定。「マクアケ」で先行販売予約受付中。

AuB 株式会社
【URL】https://aub.co.jp/

AuB 公式・鈴木啓太YouTube チャンネル
【URL】https://youtube.com/channel/UCWcfNaOvJ-UtZvWMTqDaNjw

取材:TOKYO HEADLINE