TOKYO創業ステーション 利用者インタビュー株式会社ロケットリンクテクノロジー 森田 泰弘さま
株式会社ロケットリンクテクノロジー

「いつでも、どこでも」打ち上げ可能!
日本発の革新的な小型ロケット開発で、
誰もが宇宙とリンクする新時代を切り拓く。
COMPANY INFORMATION
株式会社ロケットリンクテクノロジー
神奈川県相模原市中央区由野台3-1-1 JAXA宇宙科学研究所
「ロケットで世界の人々をつなぐ」をミッションに、2023年4月に設立。革新的な固体ロケット燃料技術を核に、小型衛星打ち上げ用ロケットの開発と運用を行う。従来の固体ロケット燃料製造の課題である長い製造期間を大幅に短縮する技術を持ち、「いつでも、どこでも」打ち上げられる機動性の高い小型ロケットの実現を目指している。
代表取締役 森田 泰弘(もりた やすひろ)
JAXA名誉教授。JAXA固体ロケット(M-V/イプシロン)の開発責任者を歴任。「誰でも宇宙で活躍できる社会」の実現を目指して、低コストで使いやすい革新的なロケットの開発に挑戦するため、2023年にJAXAベンチャー株式会社ロケットリンクテクノロジーを創設。産学官すべての立場でロケット開発と宇宙の教育への応用を推進している。
-起業のきっかけ-
宇宙利用を身近にするため、革新的な固体ロケット燃料技術を実用化したい

現代の生活は、小型衛星の稼働による「宇宙利用」によって変化を続けています。地球観測やインターネット通信のためのネットワーク構築など、さらなる「宇宙利用」を進めていくためには、ロケットで多くの小型衛星を打ち上げる必要があります。
これまで、わたしたちはJAXAで固体ロケットの開発に挑戦し、「ロケットを簡単に発射させる仕組み」を生み出しました。次は、「ロケットを低コストかつ短時間でつくる仕組み」を生み出すべく挑戦的な学術研究に取り組み、その研究に実用化の目途が立ったことが創業のきっかけです。
また、国の方針として、小型衛星を打ち上げる小型ロケットの開発・運用は、民間で行うという流れになっています。今までは、JAXAというある意味守られた環境での開発でしたが、「今度は、自分の力でやってみよう」という想いが芽生え、創業へと踏み出すことになりました。
社名に「リンク」という言葉を取り入れたのは、宇宙に挑戦するすべての人とのつながりを強め、人の力を大切にしながら「宇宙利用」の発展に貢献したいという想いからです。当社のメイン事業はロケットというハードウェアの開発ですが、ハードに血を通わせるのは人間です。これまで培った仲間とのネットワークを活かしながら、分野を問わず、さらに新たな仲間を増やしていきたいです。
-事業化に向けて-
小型教育用ロケットから出発し、研究と経験を積んで本格的な宇宙ロケット開発へ

当社のメイン事業は「低融点熱可塑性推進薬(LTP)」を実装したロケット開発です。宇宙利用を発展させるためには、「高性能」「安価」「高機動性」という特徴を持つ小型ロケットで小型衛星を数多く打ち上げる必要があります。
しかし、現在の小型固体ロケットは、発射場に持っていけば3日程度で打ち上げ可能ながら、燃料製造に1ヶ月以上かかる。そのデメリットを解消するのが「LTP」で、燃料製造を1~2日で完了できます。これにより、いつでもどこでも、安価に打ち上げられる小型ロケットが実現できるのです。
現在は、高度100km程度まで到達するロケットの開発に取り組み、段階的にロケットを大きくする戦略を取っています。ただ、現時点の開発でも数億円は必要ですし、ベンチャー企業として事業を現状の10倍、100倍に拡大する責任を負いながらの開発は自分にとって新たな次元での挑戦です。
TOKYO創業ステーションの存在は、創業について情報収集する中で知りました。3カ月間、13回にわたってプランコンサルタントに師事して、経営の初歩からみっちり教えていただきました。
今思い返すと、コンサルティングを受けたことで事業内容に大きな変化がありました。創業を決意した当初は、「子ども向けの教育用モデルロケット燃料の国産化」からスタートしようと考えていたんです。モデルロケットの固体燃料はすべて輸入品で、値段が高い上に納期も長く、時には在庫切れで入手できないこともあります。わたしたちの技術で燃料を国産化し、「宇宙×教育」に力を入れることが最初の目標でした。
しかし、「余生は子どもたちの教育に捧げたい」という私の言葉を聴いたプランコンサルタントは「その想いに共感はするが、本当にJAXAでやり残したことはないか」と問いかけてくれました。その問いを機に「まだ、本格的なロケット開発を続けたい」という真の想いに気付かされ、小型衛星を打ち上げるためのロケット開発へと方向転換したのです。事業計画は、一気に10倍以上のスケールに拡大しました。今、現事業に打ち込めているのは、プランコンサルタントが1対1で向き合い、ともに未来を考えてくださったからです。
ビジョンが明確になったおかげで、東京都中小企業振興公社主催の「東京シニアビジネスグランプリ」では最優秀賞をいただくことができ、事業を進める上での自信になりました。それぞれのフィールドで創業を目指す仲間の話も新鮮で、社会をより良くしたいと懸命になっている姿に刺激を受けたことを覚えています。
-これからのビジョンは?-
日本発の多様なロケットで、誰もが宇宙を利用できる未来を創る

現在の日本では、ロケットの種類も数も圧倒的に不足しています。アメリカではSpaceXのロケットが次々と打ち上げられていますが、日本の衛星を打ち上げるために毎回アメリカに行くのは非効率です。私たちが目指すのは、日本でも多様なロケットを選んで打ち上げられる世界。自動車ならトヨタ、日産、ホンダとメーカーが選べるように、個性豊かなロケット会社、ユニークなロケットから自分に合ったものを選んで衛星をばんばん打ち上げられる環境を整えたいです。
また、当社の「LTP」は、国内外のロケット開発会社に提供できる可能性があります。「我々の技術を使いませんか?」と提案すると意外なほど反応が良く、共通の悩みを抱えているのだと気づきました。ライバルとも協業できる可能性が出てきたことに、面白さを感じています。
さらに、東南アジアの国々にとって、日本は衛星打ち上げ場所として魅力的な選択肢です。日本のロケットは単なる機械ではなく、丁寧にサポートする人がいることが強みです。「血の通ったロケット」を提供することで、アジアの宇宙開発をリードしていきたいと考えています。
創業を目指す方へ~応援メッセージ~
一人で考え始めると堂々巡りになりがちですが、専門家のサポートを受けることで、踏み出した一歩が確かなものになります。私自身、TOKYO創業ステーションのプランコンサルティングを通じて、不安材料とともに展望が見える化されたことで、自然と自信とやる気が増していきました。一度の人生、賭けたいことがあるなら挑戦してみてはどうでしょうか。挑戦する価値は必ずあるはずです。