わたしの創業ものがたり
株式会社Study Valley 編

株式会社Study Valley 田中悠樹

創業当初の社員は2名だった。現在は社員が増え、外国人も在籍しており多角的な視野でサービスを開発する。


勉強の目的意識を明確にして意欲を引き出し
子供たちの生きる力と学習能力を育んでいく
探究学習プラットフォーム『TimeTact』。

COMPANY INFORMATION

株式会社Study Valley
東京都江戸川区中葛西5-20-14 水戸ビル2F
「教育業界における課題を、テクノロジーを駆使して解決し、より良い日本を創る」を理念に掲げ2020年1月23日設立。
https://www.studyvalley.jp



代表取締役/田中悠樹
東京大学大学院卒業後、ゴールドマン・サックス証券株式会社に新卒入社しテクノロジー部に在籍。その後、株式会社リクルートにて新規事業立ち上げ責任者や、アメリカやイスラエルなどでスタートアップ投資を担当。その経験から、日本の未来を変えるためには子供たちへの教育の拡充が重要であると考え、株式会社Study Valleyを創業する。



-起業のきっかけ-
海外で感じた日本の教育意識との落差


『TimeTact』の画面

今はまだ馴染みのない「探究学習」だが、周知の事業領域ではないことが成功の鍵だという。


私は前職で数か国に赴任していた経験があります。海外勤務では、日本の世界における相対的な地位の低下に対する危機感を抱く機会が多くありました。その源泉は教育にあると確信を持ったのは、イスラエルで暮らしているときのことでした。イスラエルでは高校を卒業すると、男子・女子ともに兵役があります。それが直接関係しているのかはわかりませんが、高校生でも、自分が社会人になって仕事をすることで「どのように国を発展させていきたいか」という明確な将来のビジョンを持っています。だから目的意識を持って大学を選びます。「この大学の、この教授から、こういう知識を学んで、それを仕事に活かして社会に貢献していきたい」と、親に学費の相談をするわけです。果たして日本の学生はどうでしょう。日本の高校・大学生に学ぶことへの目的意識や興味を持ってもらわないと、日本の経済的な地位はさらに落ちていくと思いました。


世界経済の中で日本の存在感を復活させるために、「源泉となる教育の質にこだわるべき」「子供たちのために何かをやりたい」、でも私には教育業界のノウハウがありません。行動を起こせないのが現実でした。


そんなとき、たまたま大学の同窓会に出席しました。2019年11月のことです。親しかった同級生に近況を聞くと、学校の先生をしていると言います。私は彼に話しました。「現在の教育の方向性には課題が多いと思う。解決したいのだけれど、どのようにアプローチすれば良いかがわからない」。すると彼は「じゃあ、一緒にやるか?」と言ってくれたのです。その瞬間に起業を決め、翌日には勤めていた会社に辞表を出しました。


-事業化に向けて-
子供たちのやる気を引き出す探究学習プラットフォームの開発へ


『TimeTact』の画面、経済産業大臣賞 最優秀賞 受賞の文字の表示。

『TimeTact』は日本のキャリア教育のさまざまな課題を解決するプラットフォーム。
経済産業省 第12回「キャリア教育アワード」で経済産業大臣賞 最優秀賞 受賞。


TOKYO創業ステーションを知ったのは、起業を決めた直後です。起業の際は誰でも少なからず不安になるものだと思います。私の場合は深刻で、何がわからなくて不安なのかがわからなくなっている状態でした。TOKYO創業ステーションのプランコンサルティングで担当していただいたコンサルタントに、頭の中にある事業のイメージをひとつひとつ丁寧に引き出していただき、それを事業計画書に書き込んでいくことで課題が明確になり、不安要素を解決する方法も少しずつクリアになっていきました。このとき作成した事業計画書は、今でも金融機関に融資の相談をする際にアップデートしながら活用しています。


そして、最初に開発したのが、AIを活用した小学生向けオンライン学習サービス『アンカー』です。この『アンカー』は算数に特化したアプリです。日本では高校で文系か理系かを決める場合が多いですが、文系を選ぶ理由として「算数が苦手だから」という人が多いと思います。つまり消去法で進路を決めているのです。そこで苦手な原因をAIで分析し、苦手意識を克服すれば将来の選択肢が広がると考えたのが開発の背景です。


しかし、苦手科目を克服するだけではやる気にはつながりません。子供たちが将来やりたいことを見つけるにはどうすればいいのか、悩み抜いた末にたどり着いたキーワードが「探究」でした。


そして弊社は、学習事業者や学校で利用できる学習・業務支援プラットフォーム『TimeTact』を開発しました。『TimeTact』は、探究計画からテーマ探し、探究後の評価、振り返りまで一気通貫でサポートする探究に特化したオンラインツールです。『TimeTact』には、クラウドでの情報共有に加えて、課題をクリアして貯まったポイントでさまざまな体験ができるなど、学習意欲の向上につながる施策も組み込んでいます。


-これからのビジョンは?-
年齢、環境を問わない全国規模の展開を目指す


株式会社Study Valley 田中悠樹


探究学習は学習指導要領の改定により2022年度から高校で必修化され、次代を担う子供たちの「生きる力」を育む学習と位置付けられています。私は、この探究学習をより多くの高校で成功させることが日本の未来を担うと考えています。最近では、大学や企業からも、『TimeTact』を利用できないかというお問い合わせをいただくようになりました。3年以内には、進化させた『TimeTact』をアカウント数60万のプラットフォームにしていきます。



創業を目指す方へ~応援メッセージ~

自分の描く事業のイメージを具現化していくプロセスは創業者にしか味わえない特権です。ただし、事業はひとりではできません。協力者がいるから目的を達成できると思います。私は事業が順調なときも、そうでないときも、協力者の恩を忘れないことが最も大切だと思っています。

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