【司法書士監修】会社設立と個人事業主それぞれの特徴と会社設立のメリット・デメリット


起業をしたいと思っても、会社を設立するべきか、個人事業主としてスタートするべきか事業形態で悩んでいませんか?

この記事では、会社設立と個人事業主として起業することの違い、会社設立のメリットとデメリットをわかりやすくまとめました。

この記事を読めば、自分に合う事業形態がみえてくるかもしれません。

目次

比較

■会社設立と個人事業主の比較

起業を検討するにあたり、会社と個人事業主との比較で取り上げられやすいのが以下の6点です。
起業する事業形態を決定するための参考にしてください。

  • 起業時に必要な費用
  • 税金
  • 責任
  • 許認可等の承継
  • 事業拡大
  • 人材の確保

・起業時に必要な費用

会社は会社設立登記が完了することによって成立します。
そのため、会社設立登記をするための手続の際に費用がかかります。
具体的には、作成した会社の定款を公証人に認証してもらう手数料や印紙税、登記申請する際に支払う登録免許税です。
また、会社を設立するにあたり資本金を準備することになります。
資本金としては、会社設立時にかかる費用を含め、設備資金や当初の会社運営に必要な運転資金などを想定する額となるでしょう。
資本金も、登記申請をするまでに出資の手続が終了していなければなりません。

個人事業主の起業の場合は、開業届を税務署に提出するだけで完了します。

・税金

会社も個人事業主も、事業により得られた「利益」に対して一定額が課税されます。
どちらも「売上」から「経費」を差し引いた「利益」に対して課税されることは変わりありません。
「利益」を事業所得といいますが、会社は事業所得に対して法人税が、個人事業主は事業所得に対して所得税が課されることになります。

会社と個人事業主では「利益」の算出にあたって、赤字の繰越方を含め費用計上の範囲、仕組み、税率などが異なります。

また、法人には法人住民税が、個人(事業主)には住民税が課されます。

・責任

会社の場合、代表者が経営責任を負うこととなりますが、会社の債務について連帯保証となっている場合や代表者個人の資産に担保を設定しているという事情が無い限りにおいては、会社の債務を代表者個人が負うことはありません。
なお、株式会社の場合には、株主は出資をした額を超えて会社債権者に対して責任を負いません。

個人事業主の場合、責任は個人が負うこととなります

・許認可の承継

許認可とは、特定の事業を行うために行政機関から取得しなければならない許可、認可、届出、登録、免許をいいます。
事業をはじめる際には、許認可の取得が必要となるか否かは確認する必要があります。
この許認可は、事業承継等において違いが生じます。

会社の場合には会社という「法人格」に対して許認可が下りるため、組織再編等の例外を除けば、許認可の承継の問題とはなりません。

個人事業主の場合「個人」に対して許認可が下ります。
許認可取得後に事業承継が発生した場合、個人事業主の場合には承継することになった個人事業主が新たに許認可を取得する必要があり、許認可自体を継承することはできないのが一般的です。
ただし、事業によっては相続等の承継の場合には所定の手続を経て承継できる場合もあります。

許認可等の取得の確認をする際に、事業内容によっては事業形態を想定して検討することも必要となります。

・事業拡大

起業する際には、当然事業が拡大していくことを前提として検討することでしょう。
事業の拡大に伴って、どの程度のスパンでどんな拡大内容となるのか、資本の増強を図るのか、従業員の雇用確保の検討は必要なのか、事業にどれくらいの人たちが関わってくるのかなど色々想定が必要です。

会社の場合には、経営陣を厚くするための機関変更や監督体制の強化を図ったり、資本金を増加したり、他の会社を合併したり様々な方法があります。

個人事業主でも事業拡大のため会社を設立することができ「法人成」といいます。
起業当初は費用を抑えたい方や、経営が軌道に乗るまでの不安が払拭されないために会社設立に踏み切れない方でも、まずは個人事業主として起業し、然るべき時が到来したら法人成をすることも可能です。

・人材の確保

一般的に個人事業主より会社の方が人材を確保しやすいといわれますが、個別の事業評価を含むことが多いため一概にいうことはむずかしいところです。
会社は社会保険などの制度が適用されるため、応募者はある一定の安心感をいだきやすいでしょう。
個人事業主でも、資格やスキルなど属人的な能力による事業や、既に個人として名声がある場合には、人材が集まりやすいかもしれません。
応募者の多くは、正社員か臨時的な雇用かなど雇用形態や、社会保険など福利厚生の完備や、安心して働ける環境が整っているかなどが選択基準となることが多いようです。
優秀な人材を確保したい場合には、待遇面を整備することが必要で、応募者自身が望む働き方が実現できるかなどの工夫が求められるため、事業形態そのものが判断基準となるとまではいえないでしょう。

ここからは、会社を設立した場合のメリットとデメリットについて、個人事業主で起業した場合と比較しながら解説します。

メリット

■会社設立のメリットとは?

会社を設立することにどんなメリットがあるのでしょうか?以下の4つについて説明します。

  • 取引先の幅が広がる
  • 資金調達の幅が広がる
  • 決算時期を自由に決めることができる
  • 事業継承等資産引継

・取引先の幅が広がる

会社は、会社の規模、機関、事業内容について「登記事項証明書」による公示があること、特に株式会社においては決算公告の義務があることから、誰でも会社の概要やおおまかな財務状況を把握できます。
取引先相手としては、これらの情報が得られる点において、個人事業主に比べると取引を円滑に進めることができるともいえます。
また、事業内容にもよりますが、個人事業主よりも会社の方が、取引先からの制約を受けにくいこともあります。
会社でなければ契約をしない、という取引先がないわけではありません。

・資金調達の幅が広がる

資金調達の1つとして、金融機関からの融資があげられます。

起業時点における融資の審査判断は、会社と個人事業主では大差はないといっていいでしょう。
なぜならば、起業時点においては事業実績を判断する材料が不十分なため、会社であっても代表者である個人の経験やスキル、事業内容や計画性、自己資金などにより判断せざるを得ないからです。

起業後においても、事業実績、展開内容、計画性など総合的に審査判断がなされるため、特段の事情が無い限りにおいて、会社か個人事業主であるかの事業形態によって影響があるとはいえず、個人事業主が不利であるとまではいいきれません。

一方、個人事業主が選択できない資金調達の手段として、社債の発行や、株式会社の場合には株式の発行による方法があります。
よって、会社形態のほうが資金調達の選択肢が広がるといえます。

・決算時期を自由に決めることができる

会社は定款において事業年度を定めますが、この定めは自由に設定できます。
そのため、事業繁忙期には決算事務処理時期が重ならないような決算時期とする決め方も可能です。

個人事業主の所得税の確定申告は、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得の金額とそれに対する所得税等の額を計算して確定させる手続のため、決算日は12月31日となります。

・事業継承等資産引継

会社の場合、代表者が死亡したとしても会社の資産は基本的に影響を受けることはありません。
ただし、代表者が会社の株式や持分を所有していた場合には、個人の財産として相続手続が必要となります。

個人事業主の場合、事業主である個人が死亡すると、事業資産は個人の財産であるため相続財産となります。

デメリット

■会社設立のデメリットとは?

会社を設立することにより発生するデメリットもあります。

  • 会社設立、運営、清算費用の発生
  • 事務負担の増化

会社を設立するべきか個人事業主として起業するべきか、デメリットも含めて検討し慎重に判断しましょう。

・会社設立、運営、清算費用の発生

会社の設立時点で、定款認証や設立登記申請のために費用が発生します。

会社を設立した後も、定款の変更や役員の変更などがあればその都度変更登記申請を行う必要があり、登録免許税や公告等費用が発生します。

会社を解散することになった場合にも、解散公告や解散登記、清算結了登記の登録免許税等費用が必要になります。

なお、変更登記等必要な手続を放置していた場合には、裁判所から過料が通知されますので、定款の変更や役員の変更登記が必要な際には、手続きを怠らないように注意が必要です。

・事務負担の増化

会社の場合、法人税等確定申告などの税務手続、社会保険や労働保険の手続、登記事項の変更手続など会社に関する専門知識を必要とする時間のかかる事務処理が必ず発生します。
法令や制度の変更対応、期日管理などを含め事務の負担は少なくはないため、適切な会計処理であるのか、法令に則った手続が漏れなく行われているかなど専門的な知識を要すると判断した際には、必要に応じて、税理士又は公認会計士、社会保険労務士、司法書士などの専門家に相談しましょう。

■公的機関などが実施する相談窓口

この記事では、会社設立のメリットとデメリットをご紹介しましたが、「自分は株式会社を設立するべきか、個人として起業するべきか」を専門的な知識を持つ人に相談したい、会社を設立すると決めたものの「どこから手掛けていけばいいのか?」「手続はこれで合っているのか?」など、悩むことがあると思います。

その際には、公的機関などが実施する相談窓口を活用し、情報収集しておくことも1つの方法です。

・TOKYO創業ステーションの専門相談窓口

TOKYO創業ステーションが提供している「専門相談窓口」では、専門分野ごとに相談員を配置しています。

経験と知識豊富な「司法書士」、「社会保険労務士」、「弁護士」、「税理士」が、起業に関する手続などのお悩みを伺います。

「TOKYO創業ステーション」で専門相談を受けてみる。

・東京開業ワンストップセンター

東京都と国が共同運営を行う「東京開業ワンストップセンター(Tokyo One-Stop Business Establishment Center:TOSBEC)」では、東京都内で会社等法人を設立予定している方を対象に、法人設立や事業開始時に必要な行政手続(定款認証・登記・税務・年金/社会保険・入国管理)を1か所で行うことができます。各省庁から派遣された相談員がご質問にお答えし、申請書類の受付までサポートしています。

「東京開業ワンストップセンター」で相談してみる

起業相談をする