アクセラレーションプログラム利用者インタビュー
じょうろ 秋田 匠さま
ファクトリープランナーの伴走と、縫製工場図鑑「なにぬぅ?」で
作り手の魅力が正しく伝わり、誇りを持って働ける業界へ。
COMPANY INFORMATION
2021年創業。「ものづくりの土壌に水を注ぐ道具(人)となりたい」という想いから屋号を「じょうろ」とし、アパレル製造現場の課題解決を専門とする「ファクトリープランナー」として、工場の業務改善、ブランディング、新規事業開発などをオーダーメイドでサポートする。国内縫製工場の技術や想いを可視化するポータルサイト「縫製工場図鑑 なにぬぅ?」の公開に向けて準備中(2026年4月現在)。
多摩美術大学でテキスタイルを専攻後、イッセイミヤケでの企画アシスタント、婦人靴メーカーの企画営業、その後、イッセイミヤケでの生産管理に従事。デザインから製造、店頭に並ぶまでの一連のプロセスに10年以上携わった経験を持つ。自身がお世話になってきた製造現場と作り手を支え、豊かなものづくり環境を再構築したいという想いから「じょうろ」を設立。
誇れるものづくりを続けるために「作り出す環境」を豊かにするサポートをしたい
かつて活況を呈した日本のアパレル産業ですが、海外生産の拡大をはじめとした要因により、国内の製造現場は減少しました。現在、アパレルの国産比率はわずか1.4%にまで落ち込んでいます。このままでは、日本だからこそできる独自のものづくりが、いつかできなくなってしまうのではないか……そんな危機感を抱いたことが、起業の始まりでした。 私はこれまで、サンプルづくりから店頭に商品が並ぶまで、ものづくりの一連のプロセスを経験してきました。その中で実感したのは、製造現場の消耗です。人材不足や高齢化、そして日々の業務に追われ、「新しいこと」に挑戦したいのに、その余力が残されていないという現場もありました。 ものづくりの世界では、デザイナーや企画者が素晴らしいアイデアを思いついても、それを形にする「作り手の環境」が豊かにならなければ、世界に誇れる製品を世に出し続けることはできません。製造現場で頑張る方々が評価され、技術を継承していける環境づくりをサポートしたい。そう感じた私は、これまでにお世話になり、この先も日本のものづくりを支えてくださっている「作り手の方々」を、自身の経験を基に貢献しようと決意しました。アドバイスをして終わりではなく、現場で共に時間を過ごしながら、一緒に課題を解決していく「ファクトリープランナー」として事業を開始したのです。
専門家の助言により、一過性のイベント企画が継続的なメディア構築へ変化
まずは全国のアパレル産地や縫製工場へ足を運び、現状のヒアリングから始めました。現場では「新しいことをやりたいが、推進する人材がいない」「数年かけて育てた人材が辞めて、計画が止まってしまった」といった、様々な声を伺いました。こうした課題に対し、私は工場の「準社員」のような立場で、オーダーメイドのアイデアの提供や業務サポートを行っています。しかし、一人で「足で稼ぐ」営業スタイルには限界があり、販路開拓には非常に悩んでいました。そこで応募したのが、TOKYO創業ステーションのアクセラレーションプログラム(以下、アクセラ)でした。 アクセラの存在は、TOKYO創業ステーションの「プランコンサルティング」を受けた際に知りました。アクセラへ参加した当初は、「製造現場を集めた展示会やビジネスマッチングイベント」を開催し、業界内の交流促進とともに、「じょうろ」のPRの場としたいと考えていました。しかし、中小企業診断士等の専門家の方々との継続的な経営相談で「展示会は一過性で終わる可能性が高い。業界内で『じょうろ』の認知度を高めて販路を開拓するなら、中長期的に情報が蓄積される『ポータルサイト』の構築を考えてみてはどうか」と助言をいただきました。 アクセラでは約1年間、計20回近い経営相談を通じ、ポータルサイトのコンセプト設計から実装までのアドバイス、さらにはキャッシュフロー計画の策定や融資に向けた書類の作り方といった実務面の相談もできました。また、「顧客ニーズ検証の実践」というワークショップに参加したことで思考の整理が進み、製造現場の中でも知られるきっかけが少ない「縫製工場」に焦点を当てようと決断することができました。さらに、「ニーズ検証の実践・販路開拓費の助成」による助成金は、ポータルサイトのコンセプト設計やロゴ・サイトのデザイン委託費、サイト開発の実証実験に用いるデバイス等の費用に対して活用しました。
ポータル内で情報と人の往来を活発にし、日本を「グローバルな縫製の産地」へ
こうして形になったのが、ポータルサイト「縫製工場図鑑 なにぬぅ?」です。「なにぬぅ?」のコンセプトは「縫製の現場を『知る』」で、私が工場へ足を運んで取材した内容を、一企業のホームページに匹敵するボリューム感で丁寧に掲載します。「なにぬぅ?」は単なる情報紹介サイトではなく、業界内の情報の往来、そして人の往来を生む場所となることを目指しています。例えば、デザイナーが、自分の想いを形にしてくれる現場を見つけられる場所、学生や求職者が憧れの縫製現場を見つけ、一歩踏み出すきっかけとなる場所、地域の異なる工場同士が、互いの取り組みを知り、コミュニティスペースで切磋琢磨し合える場所……そんな多様な往来が生まれるサイトになればと願っています。 将来的には「なにぬぅ?」の英語版を作成し、「日本の縫製工場それぞれが持つ特徴や魅力」を海外へ発信したいと考えています。「なにぬぅ?」での業界全体の認知度と魅力アップ、「じょうろ」としての「プランニングと業務サポート」という両輪の活動を加速させ、一つひとつの縫製現場を強く、魅力的にしていくことが今後の目標です。
アクセラに参加する最大の価値は、事業をより良くしようという「共通認識」を持つ専門家の方々に、第三者的立場から本気で向き合っていただけることにあります。特に、起業家は業務を一手に担うことが多く、客観的な視点を取り入れながら、事業の方向性や課題を定期的に確認する機会が不足しがちですし、立場を同じくする創業者仲間もたくさんいるわけではありません。 今回、アクセラで親身に相談に乗っていただけたからこそ、「ポータルサイト構築」という継続的な広がりを持つ事業展開に辿り着けたと感じています。第三者の力を借りることを恐れず、想いを形にするための「土台」をここで築いてください。