2020.10.03 令和時代に「売れる商品」とは

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2020.10.03


8月21日(金)にオンラインで開催したイベント「令和時代に「売れる商品」のポイントとは?」のレポートをお届けします。
「モノが売れなくなっている」と言われるこの時代。時代にマッチするサービス・製品を生み出すことは、起業家にとって非常に重要なテーマです。「この時代でも売れている」また「この時代だからこそ売れている」商品やサービスとはどのようなものなのか?リアルマーケティングのプロである、蔦屋家電プラスプロデューサーの木崎氏に伺いました。


木崎 大佑 氏

木崎 大佑 氏
(蔦屋家電エンタープライズ 商品部 商品企画Unit 新規事業Team Leader)

大手家電量販店にて販売職・マーケティング・PRを担当し、2013年CCC(株)に入社。企画段階から二子玉川 蔦屋家電の立上げに携わる。売場マネージャー、広報、MDなどを経験したのち、2018年4月から(株)蔦屋家電エンタープライズに出向。2019年4月にオープンした日本初のネット時代の次世代型ショールーム「蔦屋家電+(プラス)」プロデューサーを務める。日経クロストレンド アドバイザリーボードメンバー。一般社団法人LIVING TECH協会理事。

消費者行動にオン・オフの垣根はない

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ネットショップ増加にともない、消費者行動は「お店で選び→そのまま購入」から「お店で選び→ネットで購入」に変化してきています。こうした状況下でも、amazonの無人コンビニ「amazonGO」やメルカリの新宿出店、中国家電メーカーのXiaomiが爆発的に出店を伸ばすなど、リアル店を増やしている企業もあります。木崎氏によるとこういったIT企業を中心に、ネットと店舗の垣根をなくし購買意欲を掻き立てるマーケティング「Online Merges with Offline(OMO)」が進んでいるとのこと。そして消費者行動でも、オン・オフの概念がなくなっているのだそうです。

情報過多時代のマーケティング術

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世界中で1分間に40ゼタバイト(1ゼタバイトは10億テラバイト)の情報量が常に流れている、情報過多時代。重要視されているのは「ファンマーケティング」の考え方だと木崎氏。「ファンマーケティング」とは文字通り、1人のファンを獲得し、ライフタイムバリュー(LTV)を上げること。1人ファンがつけば、繰り返し利用する、あるいは口コミでの拡散が可能になります。ただ、こうしたファンを獲得・保持し続けるには「アフターサービス」が大事。従来の「売って終わり」商売は通用しません。

もう一つ重要なこととして、木崎氏は「ブランディング」を挙げました。同じようなものがどこでも買えてしまう時代、選ばれるためにはスペックではなく「個性」を打出すことが重要だと言います。なぜ、この商品を作ったのか?社会的にどういった意義があるのか?商品とともにストーリーを発信し、消費者の共感を得ることが購買につながると言います。

顧客が「片づけてほしい仕事」は何なのか

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こういったマーケティングの変化をうまく捉えているのが、allbirdsやNIKE、appleといったD2C(Direct to Consumer)ブランド。チャネルは旧来型の「作ったものを誰かに売ってもらう」姿勢から、自社で直接販売へ。直営ECやアプリ、AmazonやYahoo!へ出店し販売しています。また、顧客は「仲間」という考え方で、顧客と一緒に製品開発をしたり、SNSでの交流、ワークショップでの直接体験などを積極的に行っています。そしてD2Cブランドのカタログを開けば、語られているのはスペックではなくストーリー。モノ(商品)をつくって売るだけではなく、この商品を使えばどんなライフスタイルが送れるかという部分に価値を置いて提案することがポイントだと言います。

ここで木崎氏より「ジョブ理論」の解説が入りました。

「ジョブ理論」とは、「人がモノを買う時は何か片付けてほしい仕事があるからモノを雇用する」という考え方です。つまり、モノを作る側は「片づけてほしい仕事は何なのか」を突き詰めて考え、顧客のニーズを探るということ。木崎氏からは「高級ドライヤー市場」「携帯ゲーム機」「デジタルカメラ市場」を例に、ジョブ理論を詳しくご説明いただきました。ジョブ理論=ニーズの発掘が重要視されているのは、ライフスタイルの多様化が起こっているため。属性で予想したターゲットに向けて作られる商品には失敗が多く、より一層一人一人のニーズを深掘りしていくことが求められているのだそうです。

「売れる商品」おさえておきたいポイント

最後に、ここまでお話しいただいた消費行動とマーケティングの変化のまとめとして、これからの時代「売れる商品」のポイントを6つ挙げていただきました。

(1)ニーズ起点
万人受けではなく課題、「片づけてほしい仕事は何なのか」にフォーカスすること。
(2)自己実現欲求を満たすもの
その商品を使うことで得られるライフスタイルを提案したり、ストーリーを語ること。ブランディング。
(3)共感できる
顧客が友だちにおススメしたくなる製品を作ること。ファンマーケティング
(4)余白がある
すべてを作らず「仲間」である顧客と一緒に作っていくこと。
(5)透明性
価格も品質も顧客から見えやすくすること。1分間に40ゼタバイト情報量が常に流れている世界では、過剰広告はすぐバレる。
(6)関係構築
現場視点で顧客一人一人と向き合い、売った後も付き合う努力をする。アフターケア。


数々のスタートアップ製品のリアルマーケティングを実際に行ってきた木崎さんに、プロ目線での貴重なお話頂き、視聴頂いた方からの質疑応答も非常に盛り上がりました。特に、売れる商品のポイント6つは、今後製品やサービス開発を目指す方には、参考になる要素がたくさん詰まっていたかと思います。イベント後の感想では、「なぜ、今ジョブ理論が重要視されているのかがよくわかった。」「今売れているものとその理由(ロジック)が理解できた。」などのご意見を多数頂きました。


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神田達也【Startup Hub Tokyo TAMA イベント企画担当】

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