2024.10.30 TOKYO創業ステーションTAMA 4周年イベントレポート
7月28日(日)、TOKYO創業ステーションTAMA設立4周年を記念したイベントを開催。
本イベントでは「多摩地域の起業を盛り上げよう!」をテーマに、地域資源を活用したビジネス創出の可能性を探りました。当日は多摩大学経営情報学部の松本教授による基調講演や、多摩の起業家3名をお招きしたパネルディスカッションなどを実施。
今回は本イベントの様子を、ハイライト形式でレポートしていきます。
- 1. 多摩地域でビジネスをする強みとは
- 2. 起業家3名が語る“多摩地域のビジネスチャンス”
- 3. まとめ
当日の会場の様子
当日は4周年を記念して製作したTシャツを着用
4周年を記念したシールも配布
1.多摩地域でビジネスをする強みとは
イベントの前半は多摩大学経営情報学部の松本教授が登壇。学生とともに、これまで奥多摩の活性化をさせる仕組みづくりに向き合ってきた松本さん。「多摩地域におけるビジネスの可能性と未来 」と題し、多摩地域のビジネス環境や特徴について話しました。
多摩大学経営学部の松本教授の講演の様子
松本「多摩地域でのビジネスの強みは、『東京である』ことです。
東京全体、隣接する神奈川、埼玉、千葉、山梨で暮らす約3900万人という大規模な市場を狙ってビジネスができます。また東京は海外ともつながりが深い。小さなビジネスでも拡大し、発展する可能性がある贅沢な地域なんです。
ただ“多摩”といえど各地域にそれぞれ特徴があり、地域ごとに広がっているビジネスも異なります。つまり多摩には、地域や住民の特性を反映した『地域だからこそ』の多様なビジネスが広がっているのです。このように多摩には豊富な地域資源があり、さらには創業支援のための施策が充実しているのも大きな強みです」
最後に松本教授は、本講演のまとめとして「多摩のビジネスの未来を考える3つのキーワード」を話します。約20年ものあいだ創業支援に携わってきた松本教授の目から見る、成功する創業者が持っているものとは一体何なのでしょうか。
松本「成功する創業者には三つの特徴があると思っています。一点目は『協創』。みなさんがどのような方々とビジネスしていくのかは成功するために大事な要素になります。二点目は『再発明』。日々の変化に対しても、地域資源に対しても、当たり前を捉えなおす“まなざし”を持つことが大切です。
最後は『素直さ』です。これが特に重要だと考えています。素直さといっても、『言うこと聞く』という意味ではありません。社会、地域、顧客の声を“素直”に聴く。自分自身を“素直”にみつめ、その志に“素直”に従う。そういうことが大事なのではないかと思っています。
これら三点を持つ人が、自己実現、さらなる成長につながるのはないかと思います。今後も多摩地域でたくさんのビジネスが発展していくことを期待しています」
2. 起業家3名が語る“多摩地域のビジネスチャンス”
後半は、多摩地域の起業家3名と松本教授、ファシリテーター小崎奈央子さん5名によるパネルディスカッションを実施。
3名が起業したきっかけ、失敗とその乗り越え方、多摩地域での起業のリアルなどについてお話ししました。
登壇したのは、LightBank株式会社 代表取締役の加賀谷史央さん、こめのこcafé代表兼地域コーディネーターの中倉美奈子さん、ファームマチダ東京株式会社 代表取締役 松井優一さんです。
それぞれの視点から起業したきっかけと、多摩地域で起業するメリットについて話しました。
40代後半で大手電機メーカーを退職し、起業に踏み込んだ加賀谷さん。現在は小金井で自社ブランドの開発を軸にしながら、デザインや取り付けなどを行う照明メーカーを営んでいます。
加賀谷「会社で働いてこのまま定年してしまうのに、どこか違和感があって。自分で挑戦してみたいという想いから起業しました。多摩地域で起業する一番のメリットは、松本教授が言っていた通り、“東京都であること”だと思います。東京は地方に比べると比較的裕福な方が多く、制度も充実している。人口も多く、マーケットも大きい。さらにグローバル展開を見据えると、東京発というと響きが良いと思います。このように東京で起業するということはメリットがたくさんあるんです」
次にこめのこcafé を営む中倉さん。彼女は住んでいる稲城市を選び、起業しました。
中倉「起業するきっかけは、地域コーディネーターとして活動するなかでの気づきからでした。各地域で活躍するキーマンに会っていくと、稲城にはプレイヤーが少ないことが分かりました。であれば、自分が稲城を代表するプレイヤーの一人になりたいなと思うようになって。最初はほんとに軽い気持ちで自分のやりたいことを公に発言してみたら、どんどん協力者が集まってきてくれて、チームが出来上がり、結果的に起業に至りました。
稲城はコンパクトさと人情味が特徴です。
実は一度も自分からマルシェの営業に行ったことないんですが、街にいるキーマンがどんどん人を紹介して、つないでくれて。今では地域の人とたくさんの繋がりができました。日々多摩の人の温かみを感じています」
松井「私は地元である町田市で起業しましたが、貢献性と実現性を踏まえると、むしろこの街以外には考えられなかったように思います。とはいえ、町田にはもともと農家さんが多く、入っていくときには最初から『町田市の繋がりを私が変えてやる!』と思うのではなく、『ときほぐしていていくぞ』いう気持ちでいることを大事にしていました。それが事業の成功要因だったかなと思います」
最後に、松本教授は「お三方の話を聞いて、改めて多摩地域の魅力は東京であることと、人の魅力にあるのだと感じました。そんな人の魅力にも動かないと気づけません。行動しない理由はないですね」といい、パネルディスカッションを締めくくりました。
3.まとめ
イベントの最後には交流会を実施。ケータリングには、TOKYO創業ステーションTAMAを利用し起業した2名をご招待し、自家製のパンやスイーツを準備していただきました。
福生市にあるグルテンフリースイーツのお店「グルテンフリースイーツ mug(マグ)」
交流会には、普段よく来てくれている利用者だけではなく、「近くに住んでいて気になっていて」と初めて訪れてくださった方もいらっしゃいました。また「偶然近くにいた人と話してみたら、思わぬ共通点があったんです」と話す方も。参加者、登壇者、運営が集結し、多くの新たな交流が生まれました。
イベント後には参加者から以下のような声をいただきました。
「多摩地区での起業の動態や地域特性について全体像を把握できました。稲城市のキーマンを巻き込んでアイデアを具現化する戦略や、町田の農業法人では持続可能性を実現するための仕組み作りがあることなど、取り組みの事例をたくさん聞けて大変参考になりました」
「起業家にもいろいろなタイプがいて、それぞれのやり方で進めればよいのだと思えました。また起業家になるには周りから支えてもらえる人柄を持ち合わせ、お客様とはWINWINの関係を作ることが大切だと分かりました」
参加者それぞれが自分の事業や起業アイデアと重ねて、今後に活かせる材料を持ち帰ってくれたのではないでしょうか。多摩地域で起業を考える人にとって、何かに踏み出すきっかけになっていたらと思います。
本イベントのテーマ「多摩地域の起業を盛り上げよう!」を中心に、多摩地域で活躍する起業家、教授、起業を目指す方々などが一挙に集結した本イベント。和やかな雰囲気でイベントの幕を閉じました。
今後もTOKYO創業ステーションTAMAは、「起業を、もっと身近に」という想いを持ち、引き続き多摩地域の起業を盛り上げるサポートをしていきます。