2026.7.6 起業コンシェルジュインタビュー 和田 康宏氏
みなさんこんにちは!Startup Hub Tokyo TAMAの広報です。
「起業のことを相談してみたいけれど、どのコンシェルジュに相談すればいいか迷っている。」
「コンシェルジュがどんなことをしている人なのか興味がある。」
そんなみなさまにTAMAコンシェルジュのことをもっと知っていただくために
各コンシェルジュにご自身のこと、起業相談のことをインタビューしました。
ぜひ最後までご覧ください。
目次
- 1. 起業するきっかけや経緯は?
- 2. 起業してよかったことは?
- 3. 起業時の困ったことや失敗談あれば教えてください。
- 4. 起業するかしないかでは迷わなかったのですか?
- 5. 起業相談での得意分野は何でしょうか?
- 6. 起業相談の際に心掛けていることは?
- 7. 起業相談の前に準備しておいたほうがよいことは?
- 8. 起業相談をしようか迷っている方へメッセージをお願いします。
1.起業するきっかけや経緯は?
私が福祉機器を開発しようと思った一番の背景には、家族の障害を身近に感じていたことがあります。子どもの頃から、本人や家族が困っていても、社会の仕組みや既存の製品だけでは十分に解決できないことがあると感じていました。だからこそ、「技術で生活を変えられるはずだ」という思いが、進路や仕事を考える上で大きな軸になりました。
九州工業大学でも福祉機器を研究する環境にいましたが、卒業後すぐに起業しようとは思いませんでした。まずは「製品化や量産をどう行うか」をメーカーで学びたいと考え、日立LGデータストレージに就職し、光ディスクドライブの開発に携わりました。当時の開発現場は非常に厳しく、日本で企画・設計・開発を行い、韓国のLGの主力工場である平沢で量産立ち上げ・品質管理を担当していました。飛行機のチケットは片道で、品質基準を満たす製造ラインを維持するため、現場に張り付きながら対応していました。過酷でしたが、貴重な経験を積むことができました。
将来的に福祉機器の開発に戻るつもりでしたが、当時携わっていた機器がBtoB向けであったこともあり、より生活者に近いコンシューマー製品に携わりたいと考え、2007年にソニーへ転職しました。そこではカメラ部門、スマートロック「QRIO」、プロジェクター、ロボット犬「aibo」などの製品開発・量産対応を担当しました。その後、2015年頃から起業を考え始め、本当に自分のやりたいことを実現するために、2018年に退社して自身の会社を立ち上げました。
コンシューマー領域の経験を積みたかった理由の一つは、将来的に起業して作りたかったものが「介護機器」ではなく「福祉機器」だったからです。介護機器は主に介護者が使うものですが、福祉機器は障害のある本人が自立して生活するために機能を補うものです。
起業後は、視覚障害のある方が一人で外出できるよう、カメラで危険を検知する首掛け型の歩行アシスト機器などを開発しました。福祉機器は資金調達のハードルが高く苦労も多かったですが、自己資金や借入、他社のハードウェア量産コンサルティング等で資金を回しながら開発を進めました。
2.起業してよかったことは?
率直に、自分の人生において、本当にさまざまな人に出会えたことです。会社員時代には出会えなかったような、多様な職種やバックグラウンドを持つ人たちとつながりを持つことができ、視野も知見も大きく広がりました。
3.起業時の困ったことや失敗談あれば教えてください。
そもそも「何をしたらいいかわからない」という状態だったことです。
お金のこと、会社設立の手続き、進める順番など、すべて自分で調べながらやらなければなりませんでした。
また、日本では起業に関する教育に触れる機会がまだ少なく、「出資」と「融資」の違いや、株式会社の仕組みなど、基礎知識を学ぶ機会が限られていることも課題だと感じています。株式投資や出資をギャンブルのように捉える声もあり、起業に必要な正しい知識を得るのが難しい環境だと感じました。
4.起業するかしないかでは迷わなかったのですか?
私は迷いませんでした。起業する時点で安全ではありませんし、100%失敗しないとは言い切れません。それよりも「自分のやりたいこと」への思いが勝りました。登壇時にも「大手にいながら安全・安心に起業する道をなぜ考えなかったのですか?」という質問をよくいただきます。ただ、最初から“絶対に安全な道”や逃げ道だけを求めるのであれば、起業については一度立ち止まって考えたほうがよいと思います。
私の場合、会社にいながら本当にやりたいことをやろうとしても、制約が多くてできませんでした。中間管理職になっていたこともあり、大きな組織で新しいことを進めるには、多くの社内調整や承認が必要であることも分かっていました。直接自分の手でやり遂げるには、独立するしかなかったのです。
5.起業相談での得意分野は何でしょうか?
起業の初期段階において、「何から考え、何を始めたらいいか」というゼロからの相談に乗ることができます。事業計画書とは何か、事業場所はどうするのか、登記とは何かといった基礎的な疑問から、特許はどうするのかといった専門的な疑問まで丁寧にサポートします。
また、私のバックグラウンドを活かし、ものづくりの領域も得意としています。ハードウェアやソフトウェアの開発、量産化に向けたシステム設計や要件定義、外注先との進め方(丸投げせず仕様書をきちんと作ることの重要性など)、スタートアップやスモールビジネスが陥りがちな開発・量産の失敗を防ぐための実務的なアドバイスが可能です。
6.起業相談の際に心掛けていることは?
相談者の「話を引き出すこと」に徹しています。相談に来られる方の多くは、自分が何に困っているのか、その原因が言語化できていません。
そのため、背景や現在のお仕事など周辺状況も含めて、まずはできる範囲でお話しいただき、一緒に頭の整理をしていきます。その上で、相談者の状況や確保できる時間の中で「今できること」を提案するように心がけています。
7.起業相談の前に準備しておいたほうがよいことは?
特別な準備は必要ありません。ただ、強いて言うなら、株式会社の仕組みや会計の基礎知識をつけるために、初心者向けの本を読んでおくと相談がより具体的になります。例えば、ストーリー仕立てで財務や会計を学べる入門書などがおすすめです。基礎知識があるだけで、ご自身がやろうとしていることへの理解度も大きく変わってきます。
8.起業相談をしようか迷っている方へメッセージをお願いします。
年齢や状況に関わらず、少しでも起業が気になったら、まずは気軽に相談に来てください。
起業について一人で悩んでいても、なかなか答えは出ません。周囲に起業経験者がいない方も多いと思いますので、相談できる相手がいないのは自然なことです。
実際に相談に来られた方からは、「一人で考えていてもわからなかったので、来てよかった」と言っていただくことがあります。頭の整理をし、次の一歩を踏み出すためにも、ぜひ気軽にいらしてください。
【インタビューを終えて…】
今回のインタビューを通じて、改めて自分自身の起業の原点や、これまでの経験を振り返る機会になりました。私の場合、起業は「会社を作りたい」という思いから始まったというよりも、障害を持つ方が自分の力で行動できるようにしたい、そのための技術を社会に出したいという思いが出発点でした。
一方で、思いだけで事業を続けることはできません。製品化、量産化、資金繰り、知財、外注管理など、実際に起業して初めて直面する現実的な課題も多くありました。うまくいったことだけではなく、苦労したことや失敗したことも含めて、これから起業を考える方の参考になればと思っています。
起業相談に来られる方の多くは、まだ考えがまとまっていなかったり、何から始めればよいかわからなかったりします。それは当然のことだと思います。私自身も、起業当初は分からないことだらけでした。だからこそ、まずは話をしながら頭の中を整理し、その人にとって今できる一歩を一緒に考えることを大切にしています。
起業は決して簡単なものではありませんが、自分が本当にやりたいことに向き合い、形にしていく大きな可能性があります。少しでも起業に関心がある方は、考えが固まっていない段階でも構いませんので、まずは気軽に相談に来ていただければと思います。
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次回のコンシェルジュのインタビューをお楽しみに!