「やりたい」を形にする ビジコン活用術

「やりたい」を形にする ビジコン活用術

「やりたい」を形にする ビジコン活用術

創業相談の中で、「ビジネスコンテストに興味はあるものの、自分にはまだ早いと思っています」という相談を受けることがあります。 その理由として、「アイデアがまだまとまっていない」「売上がない」「プレゼンテーションに自信がない」-そういった不安を抱えている方は少なくありません。 しかし、私が創業支援を行う中で感じるのは、創業前だからこそ「ビジコン」を活用する価値がある、ということです。実際、ビジコンへの応募時点で、事業が完成していたケースはそれほど多くありません。むしろ、応募書類の作成を通じて自分の考えを言語化することで、事業計画が具体化し、作り上げた計画を実行していくことで、その後の事業展開につながっていく、というケースを数多く見てきました。 本記事では、創業支援の現場での実例を交えながら、ビジコンを単なる「優勝するための場」として利用するのではなく、「事業を育てる機会」として活用する考え方をご紹介します。

ビジコンとは「事業計画を言語化する機会」

ビジコンとは、自分の事業アイデアやビジネスプランを応募し、審査員へ発表する場です。自治体、金融機関、大学、民間企業など、様々な団体が開催しており、対象も学生から創業予定者、創業間もない事業者まで、幅広く設定されています。 ビジコンの応募書類やプレゼン審査では、「誰の、どのような課題を解決するのか」「どのような方法で価値を提供するのか」「どのように事業として継続していくのか」といった点を、限られた文字数や時間の中で整理し、応募・発表する必要があります。 創業相談でも、「やりたいことはあるが、うまく説明できない」という悩みをお聞きすることは少なくありません。自身の事業や思いを第三者に伝わる言葉にすることは、実際にやってみると、想像以上に難しいものです。 しかし、「ビジコンへの応募」という、具体的な目標があるからこそ、それに向けて、自分の考えを整理し、第三者に伝わるように客観的にまとめるという必要性が生まれます。そういった環境に身を置き、応募書類を作成していくことで、これまでは気付かなかった事業の強みや課題、市場との関係性などが、少しずつ明確になっていきます。 このように、ビジコンへの応募は、単に審査を受けるための準備だけではありません。自分の事業を第三者に理解してもらうことを想定して、丁寧に見つめ直す作業を繰り返していくことで、より具体的で実現性のあるプランへ磨き上げていく絶好の機会でもあるのです

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ビジコンへの挑戦が事業の転機となった事例

以下は、実際に私が支援した事例になりますが、創業を希望されている方の中に、ビジコンへの挑戦が創業の大きな転機となった方がいました。 その方は、「自身の持つ美容の技術で困っている人の課題を解決したい」という思いを持って創業しようとしていましたが、やりたいことは数多くある一方、事業として「誰の・どのような課題に対して」、「何を軸として」取り組むのかが、明確になっていませんでした。

そこでまず、その方が取り組んだのは、市場調査です。顧客として想定する当事者や関係団体へのヒアリングを重ねるかたわら、小規模なサービスの実施や関連イベントへの出展、SNSでの情報発信などを続けながら、「誰か・どのようなことに困っているのか」、「本当に必要とされているサービスは何か」、「想定していた課題と実際の課題に違いはないか」を確認していきました。 その結果、「視覚にハンディを抱えている方に対するおしゃれの支援」という事業の方向性が明確になり、事業として継続していくための計画をまとめていきました。

そして次に、更に事業を磨く機会として選んだのが、自治体が主催するビジネスコンテストへの応募でした。 書類審査や面接審査では、「社会課題の解決につながる事業である」という点だけではなく、「どのように事業として継続していくのか」、「収益をどのように確保するのか」といった質問も数多く寄せられました。 「社会課題を解決したい」という思いだけでは、事業を継続することはできません。こうした問いに向き合う中で、社会性だけではなく、事業性についても改めて考える機会となり、プランは更に具体的なものへと磨かれていきました。 結果として、優勝には至りませんでしたが、最終選考での発表をきっかけに、同じ社会課題に長年取り組んできた企業や団体、当事者の方々との新たなつながりが生まれました。

ビジコンへの挑戦から約1年後、事業の成長に合わせていく形で法人化を実施し、事業領域は、創業当初の個人向けのサービスだけでなく、企業の接遇改善や商品開発支援、学校での講演や社会啓発活動へと広がっていきました。現在では、「おしゃれのバリアフリー化」を目指し、当事者や様々な企業・団体と連携しながら活動を続けています。

事例におけるビジコン活用ステップ図

以上の事例では、ビジコンへの参加を契機として事業の方向性が明確化していったとともに、第三者から意見を得たことや、新たな協力者と出会えたことが、その後の事業成長につながったといえます。 このように、ビジコンの価値は優勝や入賞だけではありません。応募から発表までの一連の過程が、事業を磨き、自分の思いを多くの方へ伝え、様々な人たちとの出会いを生み出す機会にもなるのです。

東京都内で挑戦できる主なビジコン

東京都内では、創業予定者や創業間もない事業者を対象としたビジコンが数多く開催されています。
例えば『TOKYO STARTUP GATEWAY(TSG)』は、テクノロジーから社会課題の解決まで分野を問わず、東京での起業を目指す【15歳以上40歳未満の方】が対象です。最初のエントリーは400字のアイデアを書くことから始まり、完成されたプランは必要ありません。
また、『東京シニアビジネスグランプリ』は、【55歳以上の方】を対象としたビジコンで、創業前から創業5年未満の事業者まで応募できます。入賞者への賞金に加え、条件を満たしたファイナリストには起業支援資金の交付対象候補となる制度もあります。

このほかにも、各区市町村や金融機関、民間企業が独自に開催するビジコンも多数あります。上記で紹介した2つのコンテストのように、多くのビジコンは春~夏にエントリーを締め切るため、興味がある場合は早めに調べてみることをおすすめします。また、対象年齢や募集内容はそれぞれ異なるため、自分の事業や現在の状況に合ったコンテストを選ぶことも大切です。そして、創業後も事業を成長させていくことを目的とする場合、ビジコン選びの中で「賞金の有無」は必須でないことは、言うまでもないでしょう。

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応募前に準備しておきたいこと

応募前に準備しておきたいこと

大切なことなので繰り返しになりますが、事業計画は、ビジコンへの応募時点で、完成している必要はありません。 そのかわり、「自分はなぜこの事業に取り組むのか」、「本当に必要としている人がいるのか」、「どのように継続していくのか」について、自分なりの考えを持っておくことは大切です。 そのためには、想定するお客様へ話を聞いてみること、小さくサービスを試してみることなど、小さな実践、トライ&エラーを積み重ねることが役立ちます。今回ご紹介した事例でも、応募に先立ち、対象者へのヒアリングやイベントへの出展、小規模なサービス提供を繰り返していました。その積み重ねがあったからこそ、応募書類や面接審査で具体性を持たせることができたのです。

また、そのような積み重ねや、その後のビジコンへの応募・選考プロセスを通じて、自分だけの思い込みの部分に気が付いたり、一人で考えていた時には気付かなかった、新たな課題に直面することもあります。そのようなときは、一人で悩まず、創業支援機関の相談窓口や、TOKYO創業ステーション(TAMA)が無料で実施するプランコンサルティングを活用することも効果的な手段の一つです。特に、公的な立場の専門家である「プランコンサルタント」との対話を通じて、自分では気付かなかった強みや、解決できなかった課題に対する改善案が見えてくることがあります。

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おわりに

小松田先生 写真

冒頭でも述べたように、ビジコンは優勝者やプランの優秀さを決めるためだけの場ではありません。 創業を考え始めた段階だからこそ、自分の考えを言葉にし、事業を見つめ直し、多くの方へ伝える機会として活用することができ、かけがえのない経験を積むことができます。 応募に向けて市場調査を行い、仮説を確かめ検証し、第三者から意見を頂き、仮説を修正しながら精度を高めていく。その積み重ねは、ビジコンの結果にかかわらず、創業後も事業を長く育て続けていくための土台になるのではないでしょうか。 創業してからでは、日々の経営に追われて経験できないことも増えていくことでしょう。「まだ早い」と感じている方も、一つの目標として、ビジコンへの挑戦を考えてみてはいかがでしょうか。 事業計画の整理やビジコンへの応募準備でお悩みの際は、TOKYO創業ステーションTAMAのプランコンサルティングを是非ご活用ください。第三者との対話を通じて、自分の考えを整理し、より継続性の高い事業計画の作成や、成長性の高い事業の実現につなげていきましょう。

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著者写真 小松田 誠一著者:小松田 誠一
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建設コンサルタントなどで営業・経理・総務などを経験した後、2015年からは創業支援を中心に活動を開始。現在、TOKYO創業ステーションTAMAのほか、秋葉原のワンストップ総合相談窓口や埼玉県の公的支援機関などで、年間800件以上の創業・経営相談に従事している。飲食業、理美容業、サービス業をはじめ、女性創業や社会課題の解決を目指す事業の支援を得意とし、これまで延べ520社を超える創業支援に携わる。補助金事務局での勤務経験を生かした資金調達や助成金に関する相談、ビジネスプランコンテストの支援にも取り組んでいる。中小企業診断士・一級販売士

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