事業計画書は「起業の疑似体験」である!

事業計画書は「起業の疑似体験」である!

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以前にも事業計画書の必要性については触れましたが、より深堀した内容を記載いたします。

起業準備は何から始めるの?事業計画書って必要なの?
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質問として、「そもそも事業計画書って必要なのか?」との言葉を多くの方から伺います。さらに言えば、「事業計画書を作成しても計画通り行かないですよね!」、「計画通り行かないのに、作る必要ってあります?」とのご意見です。結論から言えば、「作れるなら作ってください!中小企業でも大企業でも事業計画は作成するのが一般的です。」が答えです。

事業計画書の必要性

あなたは「事業計画書」を作りたいですか?と問われると、どのような反応をされますか。
そう聞かれると「できれば、作らないで起業したい!」と思いますよね(笑)。
事業計画書を作るのに、どれだけの時間と労力が必要なのか?そもそも、その必要性はあるのか?などと思いますよね。その声は多くあります。

実際、事業計画書の策定支援に申込まれる方は、起業後の方が多いのが現状です。
「事業計画書なしに起業したら、資金が短期間でドンドン無くなっていきます!」と訴える方も少なくないです。

事業計画書の必要性は下記になります。

【事業計画書の必要性】

① 起業の疑似体験ができる(ビジネスの勘所が分かる)
② 未来地図になる(半年後、1年後、3年後、5年後の未来が創造できる)
③ 資金調達では必ず必要になる(融資、投資、助成金など)
④ ビジネスパートナーへの説得材料
⑤ 人材雇用などの雇用時の説明資料(ビジネスの将来性)
⑥ 仕入れ先や取引先への説明資料 など

最も重要なのは「起業の疑似体験ができる」です!
え、え、事業計画書をキッチリ書くのは、金融機関からの融資や行政機関からの助成金などの資金面が目的では?と思われる方も多いのではないでしょうか?

紙面上で起業を体験することが重要なのです。理由は、いきなり起業しても上手くビジネスが動くわけではないからです。もっと言えば、計画通りにビジネスは動かないからです!
ですから、疑似体験が必要になるのです!

コンサルにお金を払って事業計画書を作ってもらって、素晴らしい計画書ができても、実行できない事業計画書を作成しても全く意味がありません。それは疑似体験できていないから、融資や助成金の申請後に面談しても、彼らはプロです。直ぐにわかります!「ビジネス解像度が低い」と分かってしまいます。

6割~7割は事業計画の売上未達

事業計画書を作成された方の6割~7割は事業計画書における計画売上が未達になっている状態です。これには様々な理由があります。

【計画売上の未達理由】

①そもそも売上見込みが甘いから(1年目の売上1億円とか根拠のない数字を書く)
②仮説と検証ができていない(仮説のみで事業をスタートしてしまう)
③競合分析や商圏調査を行っていない(私のビジネスに競合はいない⁉)
④ターゲット顧客が自社の商品・サービスを知らない(プロモーションを行っていない)
⑤売上と利益の関係性が連動していない(想定以上の経費過多で計画売上が破綻している)
⑥市場やマーケットが小さすぎる(でも市場やマーケットは絞った方が良い!程度の問題) など

事業計画書における計画売上の未達理由を見ると、しっかりと事業計画書を作成すれば、回避できる要素は多いのです。
笑い話ではございませんが、「売上が〇〇百万円ないと、収支が赤字になるので、この売上にしました!」とかです。

重要なポイントは、なぜ起業するのか(起業する理由や背景)、「誰に、何を、どのように」のビジネス戦略、ターゲットを明確にした仮説・検証や競合分析等のマーケティング戦略、そして資金繰りや収支計画などが骨組みになります。

この事業計画書をお一人で作成するのは大変ですし、危険です。なぜなら、そこにはリスクテイクできてない事柄が沢山あるからです。専門家や起業家の経験知など第3者の意見が必要になります。

企業の目的は「顧客創造」

顧客創造

企業の目的は「顧客創造」であり、そのためには「マーケティング」と「イノベーション」の機能しかないと、ドラッカー氏の著書にも書かれております。 まずは「顧客を知り尽くすほどのマーケティング調査」、「他社と差別化できる新たな仕組みやサービスを構築すること」が重要なキーワードになります。それによりターゲット顧客を継続的に創造して行くことが不可欠です。

【事例】カフェショップの場合

最近、多いのはカフェショップの起業希望者です。カフェショップは非常に難しいビジネスです。なぜなら、コンビニエンスストアやファーストフード店でも100円カフェなどがあります。その中でどのようにマネタイズ(収益化)しなければならないでしょうか?

カフェショップの売上 = 客単価 × 客数

店舗系売上はこの構成になります。起業する方は少ない資本で事業運営される方が圧倒的に多いですから、「客単価を上げる」ことが大切です。客数を増やすためには店舗立地や店舗規模、プロモーションなど費用が掛かることが多いです。起業はスモールスタートがベターです。

客単価を上げるためには、「商品単価を上げること」、「フードや物販などで購入点数を増やす」ことなどが考えられます。
仮に、コーヒー1杯500円、サイドメニュー(一律500円)で、ホットドックやバーガー、ケーキなどを販売しようと考えます。
そもそもターゲット顧客は誰ですか?学生、ビジネスマン、OL、主婦などの誰をターゲットとしますか?
例えばOLをターゲットにしようと考えますが、OLって言っても年齢層や収入、趣味、行動パターンも全て異なります。どんなOLなのですか?となります。
そこで立川市内在住20代~30代の独身OLで、SNSに料理やデザートなどを毎週掲出して、健康に気を付け、またちょっとした休憩などでは仕事から強く解放されたいと思う女性(仮にですね)とかのターゲットを決めます。
それでは先ほどのメニューとターゲット顧客とマッチしていますか?となります。 そのターゲット層にインタビューをしてメニューや価格帯などもヒアリングしていきます。

カフェ

「健康的なメニューが欲しい」、「写真映えするメニューがいい」、「他店にはない驚きや癒しが欲しい」、「店内は明るくて綺麗なデザインがいい」などの意見として出てくるかもしれないです。これはターゲットが特定されているから意味があるのです。
実際は、何度も何度もヒアリングしていくことで、ターゲット顧客も知り得ない潜在ニーズを探し出せれば尚良いです。

私が大手コンビニエンスチェーン本部の商品開発に携わっていた時は、1日1店舗当たり800名(今から20年ほど前)来店で、毎日10名が購入してくれれば大ヒット商品になっていました。ターゲットを絞った商品開発をしないと全く売れません(笑)。
そして、サイドメニューは手作りを考えているとなると、廃棄ロスはどの程度になりますか?売れ残りは廃棄しますし、食材も痛む前に廃棄しなければなりません。そのコストは考慮されていますか?また、朝早くから仕込みをするスタッフの人件費もかかります。などなど

他店との差別化するためには、独自色を出さなければならないです。
カフェショップは沢山ありますし、先ほどの他業態も競合になります。
なぜ他店と比較してこの価格なのか?そこにはどのような差別化があるのか?
商品力?サービス力?店舗雰囲気?オーナーの人柄?コミュニティ?などのこだわりがなければ戦いは厳しいです。

あなたしかできないコトは何でしょう!そういったものも加えることもアイディアの一つです。そもそも、カフェショップを開きたい理由は何か?と立ち戻ることも必要です。
また、1日平均の売上金額はどのくらいであれば黒字になるのか?なども必要になります。もちろんキャッシュフローや資金繰りも大切です。手持ち資金がどれだけあって、家賃や内装費用、調理器具などの費用もどの程度掛かるのかなども把握する必要があります。 なるべく固定費を抑えて、少ない売上でも利益を出せる仕組みを考えることが大切です。

カフェ売上

1日平均5万円以上売上げるには、午前中に客数何人と購入点数何点(更に時間帯別や曜日別など検証)、そのためには月20日間では難しいから月25日にするなど、または営業時間の延長や短縮など、様々なシュミレーションを行うことが必要になります。

まとめ

なぜ疑似体験が必要なのか?それはビジネスの解像度を上げていくことが必要だからです。
なぜビジネスの解像度を上げなければならないのか?それは解像度を上げないとビジネスの収支イメージがわかないからです。 ビジネスの収支イメージがわかないと、計画売上における未達の可能性が高まるからです。 計画売上の未達になると、赤字になる可能性が高まり、累積赤字は事業継続が不可能となるからです。

事業計画書をお一人で作るのは難しいです。また、事業計画書をコンサルに依頼して作ってもらっても意味がありません。自分自身の考えや想いに沿って、ビジネスモデルを描き、ターゲット顧客とのカスタマーインタビュー、商圏調査など実施し、プランを検証して、計数管理まで体験しなければ疑似体験はできません。

起業の疑似体験をしっかりされた方とそうでない方とでは、全く見える景色が違います。
「絵に描いた餅」をいくら作っても意味がありません。事業計画書は毎年度見直しすることをお勧めしております。解像度を高めることが起業の第一歩です。

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著者:TOKYO創業ステーションTAMA 運営責任者 山本康博
食品メーカーの法人営業、コンビニ大手のマーチャンダイザー(MD)、営業コンサルタント等を経て東京都中小企業振興公社にて、主に新規事業立ち上げ業務や販路開拓支援(国内及び海外)、タイ・バンコク駐在員(2年間)、創業・スタートアップ支援に従事。中小企業診断士。

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