経営理論・マーケティング理論の解説(カスタマー・サクセス)
経営理論・マーケティング理論の解説(カスタマー・サクセス)

最近、起業の現場で「カスタマー・サクセス」というキーワードを聞くことが増えています。大企業でもその名前がついた部署が設置されることが多くなっているようです。サブスクリプションを代表とする新しいビジネスモデルが流行る中で、企業のビジネスモデル構築の考え方として注目を集めているカスタマー・サクセスについて解説します。
目次
カスタマー・サクセスの考え方(顧客満足から顧客成功へ)
カスタマー・サクセスの基本的な考え方は、「企業の収益は、顧客の成功体験から得られる顧客満足に基づく」です。一時的に広告宣伝や販売戦略などで顧客を集めたとしても、製品・サービスそのものでお客様が購入目的を達成(成功)しなければ、お客さんはすぐに離れてしまいリピートは望めません。そのため顧客やユーザーが初期導入後も継続的に成果を上げられるよう支援する活動のことを、カスタマー・サクセスと呼びます。
また昨今のSNS全盛の時代に、顧客の満足/不満足の評価/評判はすぐに拡がってしまいます。カスタマー・サクセスを疎かにして顧客の不満足を放置している企業は、生き残ってゆけない時代といえます。
LTV(生涯顧客価値)とビジネスモデル
LTV(Life Time Value)は生涯価値と訳され、1人の顧客がある企業に累積で使ってくれるお金、つまり収益のことを示します。新規顧客の獲得コストは既存顧客の継続コストの5倍以上と言われており、優良顧客を囲い込み、既存顧客にいかにリピートしてもらうかが、企業の収益性の向上と安定にとって非常に重要です。
サブスクリプションとカスタマー・サクセスの密な関係
サブスクリプション(以下サブスク)は、元は新聞・雑誌などの購読を意味していましたが、音楽聴き放題などのコンテンツ配信サービスがサブスクと呼ばれるようになり、今では期間契約のサービス一般を指して使われるようになりました。
サブスクビジネスは、月または年額課金が一般的ですが、いつでも解約されるリスクがつきまといます。サブスクでは、初期費用を安く設定することで新規顧客の獲得を容易にするのが特徴ですが、その反面、企業が1人の顧客に注いだ初期投資を回収できるまでの期間は長くなり、企業側のリスクが高まります。
他方、物販などの売り切りモデルは、顧客側に、購入した製品が期待に添わないリスクがある提供モデルです。サブスクが人気になったのは、初めてのものの選択失敗のリスクが低いことも理由です。

サブスクモデルでは、図のとおり、企業の収益は顧客の便益と比例する形で発生するため、常に顧客がメリットを感じる状態を維持し続ける必要があります。
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トライアル、オンボーディングとKPI(重要達成指標)
サブスクでは、新規顧客の導入の敷居を下げるため、無料お試し期間(トライアル)を設定したり、利用度に応じた従量型課金を併用したりします。そのため、顧客が使い続けて利用度が上がることが、企業側での投資回収を早めるポイントとなります。
サブスクビジネスでは、トライアル顧客を本格稼働に移行してもらうために、「オンボーディング」プログラムを準備しておくと良いでしょう。オンボーディング(on boarding)とは、船に乗り込むという語源から、元は新入社員が会社に馴染むための研修プログラムを指すものとして良く使われていました。それが、「トライアル顧客の参加を歓迎し、本稼働ユーザーになる事を促す働きかけやサポートを行う」プログラムの名称として使われています。具体的には「カスタマー・サクセス」部門が、トライアルユーザーにコンタクトして、製品の使い方がわからなかったり困ったりしていないかを確認し、顧客の困りごとの解決を丁寧にサポートします。
サブスクの利用顧客は、登録しただけの休眠状態→お試し利用段階→ユーザーの利用度が毎月/毎週/毎日と増加→さらにユーザーが1人/2人・・・多数と増加する、といったステージで活用が拡がります。
カスタマー・サクセス部門では、個々の顧客毎がどの活用ステージにいるのかと、顧客全体で各ステージにいる顧客の割合を、KPI(Key Performance Indicator = 重要成功指標)としてシステマチックに管理します。ステージが上がらない顧客数が増えたり、特定顧客が1つのステージで滞留したりした場合に、適宜顧客にコンタクトして、ステージアップの障害に対して、カスタマー・サクセス担当者が一緒になって解決に取り組みます。
カスタマー・ロイヤリティ(忠誠度)とNPS(顧客推奨度)

カスタマー・ロイヤリティは、顧客が自社をどれくらい熱烈に支持してくれているかの度合いのことです。ロイヤリティの高い顧客は、リピート注文を頻繁に行ってくれ、知り合いに自社製品をお薦めしてくれたり、良い評判をSNSなどでシェアしてくれたりなど、自社の顧客拡大を自主的にサポートしてくれます。
ロイヤリティを客観的に把握する方法としては、購買頻度、購入金額以外に、顧客内シェアなどが使用されますが、サブスクやサービス業(飲食など)では、NPS(Net Promoter Score=顧客推奨度)という指標もよく使われます。最近、顧客アンケートなどで「当店のサービスを家族や同僚におすすめしますか?」という設問を見ることがありますが、顧客がカスタマー・サクセスの状態に至っているかを、間接的・客観的に把握することが可能です。
カスタマー・サクセスにおけるCRMの重要な役割
カスタマー・サクセスにおいては、自社と顧客の全ての接点や接触履歴を記録して管理する、CRM(Customer Relationship Management = 顧客関係情報管理)が重要な役割を担います。1人1人の顧客に、その嗜好や購買履歴に即した個別対応(例:レストランで誕生月にお祝い値引きをオファーして来店を促す、など)を行うことは、カスタマー・サクセスの成功の鍵です。
サブスクビジネスにおいて、一人一人/一社一社の使用機能や利用頻度、利用ユーザー数などを把握しないと、顧客への適切な助言が行えません。また個々の顧客のサクセスKPIを管理して、利用度が停滞している顧客をいち早く発見して、コンタクトを起こすトリガーとするためにも、CRMは必須のツールとなります。
カスタマー・ジャーニーからカスタマー・サクセス・ジャーニーへ

カスタマー・ジャーニーとは、元々はECビジネスなどで、「顧客体験」の悪さから顧客が途中で離脱してしまうことを防止するために、ユーザー視点から全ての業務やシステム操作の流れを見直し、顧客が快適かつスムーズに購入にいたるよう流れを再設計する場合の思考ツールとして使われます。一般的には「認知→興味→比較検討→購入→利用→再購入・推奨」という顧客の心理ステップを、ジャーニー(小旅行)に例え、快適な顧客体験を得てもらえるよう製品/サービスの改善の取組を洗い出します。
カスタマー・サクセス・ジャーニーは、同様なコンセプトをカスタマー・サクセスのオンボーディングのプロセス(初期導入→活用促進→成果実感→更新・拡張→他者へ推奨)に取り入れたもので、顧客が成功に至る道筋において、どのような支援サービスがどのタイミングで必要とされるかを洗い出すのに有効活用されています。
まとめ 人口減少時代のマーケティング
現代の日本は人口減少の途上にあり、下げ止まりが見えない状況にあります。そのような母数である消費者数や企業数が増えない中、1人あたり・1社あたりのLTVをいかに増やしてゆくかは、事業存続のキーコンセプトになります。また、知名度の低い創業者やスタートアップでは、初期顧客をカスタマー・サクセスに導いて「ロイヤルカスタマーに育て、増やす。」ことは、最初の最重要ミッションとなります。
新ビジネスの立ち上げに当たっては、TOKYO創業ステーションTAMAのプランコンサルタントやコンシェルジュを含めた経験者や専門家から、多様な視点からの助言をもらって、カスタマー・サクセスの実現について、じっくりと検討することをお勧めします。
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著者:松井 淳(まつい じゅん)
TAMAプランコンサルタント
日本HPほかIT企業にてマーケティング・営業・商品企画に携わり、執行役員として新事業立上げを担った経験あり。製造業、IT、食品分野に精通。十数年に渡る支援経験の中で、500人の創業希望者の相談に乗りながら、年間150件の事業計画の作成をサポート。大学で創業講座も持ち、学生からシニアまで広く創業の相談に対応。イベント集客、WEB運営、融資取付、会社登記、契約書作成といった、すぐに役立つ実務支援も得意。
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