創業時に作る事業計画書の考え方|売上計画・集客計画を数字で整理するポイント
創業時に作る事業計画書の考え方|売上計画・集客計画を数字で整理するポイント

創業時に作る事業計画書は、融資や補助金のためだけに作る書類ではありません。自分の事業を客観的に整理し、創業後も見直しながら使っていくための「経営の設計図」です。 経験則的に「うまくいく」と感じる事業であっても、売上、客数、単価、費用、集客方法を時系列にし、数字にしてみると、思わぬところに課題や不足している点が見えてくることがあります。 本記事では、創業時に事業計画書を作るということの意味、売上計画や集客計画を数字で整理する考え方、創業前や創業後に計画を見直すポイントについて解説します。
目次
創業時に事業計画書を作る意味
事業計画書は、本来、外部に提出するための書類ではありません。もちろん、融資や補助金の申請で必要になることもありますが、もともとは、創業者自身が事業の成り立ちを確認するための有効な手段です。 創業前は、「この商品なら売れそう」「このサービスなら喜ばれそう」と、直感的に感じるような場面は多々あることでしょう。一方、創業した後、現実に事業を続けていくために、売上がどのように立ち、費用がどのくらいかかり、どのくらいのお客様に利用してもらう必要があるのか把握する必要があります。 事業計画書を作ることで、ターゲット、価格、販路、必要資金、毎月の固定費などを一つずつ整理し、確認することができます。その結果、「想定している売上に対して客数が足りない」「価格設定に無理がある」「集客方法が具体化できていない」といった「落とし穴」に気づき、予め対策を講じておくなどにより事業の継続性を高めることができます。 なお、事業計画書は、創業前の確認だけでなく、創業後の事業のブラッシュアップにも活用されています。売上額、人気商品、獲得顧客数、売上単価などの「計画」と「実績」を比べることで、商品、価格、集客、稼働時間、費用のどこを改善すべきか判断しやすくなります。 このように、事業計画を作成する上で欠かせないのは、どう売上を上げていくかという「売上計画」です。では、売上計画についてみていくことにします。
20代で起業、資金調達する場合の注意点
20代で起業する場合、まず自己資金をしっかり確保することが重要です。しかし、資金が不足する場合は、金融機関からの借入や(公財)東京都中小企業振興公社と東京信用保証協会との提携保証制度「スピリッツ」(以下、「スピリッツ」という)を活用するといった選択肢もあります。
売上計画は「誰に・何を・いくらで・どう届けるか」から考える
売上計画を作るときは、希望的推測や意気込みではなく、「誰に・何を・いくらで・どのように届けるか」を整理することが大切です。 まず、誰に売るのかを具体的に考えます。年齢や性別だけでなく、どのような悩みを持っている人か、どのような場面で利用するのか、なぜ自社を選ぶのかまで考えてみましょう。 次に、主力商品や主力サービスを整理します。創業初期は、提供できるものをすべて並べたくなるかもしれません。しかし、最初から商品やサービスを多く打ち出しすぎると、伝えたいことがぼやけてしまいます。まずは、中心となる商品やサービスを決め、その周辺に補助的なメニューを整理すると分かりやすくなります。 価格については、競合と比較するだけではなく、提供する価値、必要な時間、原価、事業を継続していくために必要な利益、などを踏まえて考えます。安くすれば売れるとは限りません。この先も事業を続けられるような価格設定になっているかどうかも重要な視点です。
売上を実現可能な数字に分解する
売上計画は、具体的な項目に分解して考えると、現実味が出てきます。 基本的には、売上は「客数 × 客単価 × 利用回数」で考えられます。たとえば、月の売上目標を決めたら、何人のお客様に、いくらの商品やサービスを、月に何回利用してもらう必要があるのかを計算してみます。 店舗型の事業であれば、席数、営業時間、1日に対応できる人数も確認が必要です。サービス業であれば、1人のお客様対応に必要な時間や、1日に受けられる件数も考慮する必要があります。 また、創業直後から目標通りに売上が立つとは限りません。開業初月から満席やフル稼働を前提にするのではなく、少しずつ認知が広がっていく前提で考えるほうが現実的です。 季節による繁閑、平日と休日の違い、初回利用と継続利用の違いも考慮しましょう。このように、売上計画は、事業計画を実現するための条件を客観的に確認するものです。次は、その売上計画を実現していくための有効な手段である「集客計画」についてみていきましょう。
オススメ!売上分解のヒントは、こちらのブログにもあります。
事業計画書の重要性と売上予測のポイント
「思ったより客が来ない」「売上が少ない」「資金が足りない…」 これは多くの創業者がぶつかる壁ですが、実は「事業計画を作っていないこと」が原因のケースがほとんどです。 なぜ事業計画書が必要なのか、根拠のある売上計画を立てるポイントをわかりやすく解説します。
集客計画は販路開拓の一部として考える
どれだけ良い商品やサービスがあっても、知ってもらう方法や利用してもらう導線がなければ、売上にはつながりません。そこで頼りになるのが「集客計画」です。 集客計画とは、お客様を集めるための計画のことです。まずお客様が自社を知り、次に他のお店、商品、価格などと比較し、続いて自社への問い合わせや来店を経て、最終的に購入に至るという、具体的な一連の流れに合わせて作成していきます。 たとえば、知ってもらう方法としては、紹介、チラシ、看板、イベント、地域でのつながり、ホームページ、SNS、地図情報、広告など、さまざまな手段があります。どれが正解というより、事業内容や対象となるお客様に合った方法を選ぶことが重要です。 地域のお客様を対象にする事業であれば、所在地や営業時間、サービス内容が正確に分かる状態にしておくことが大切です。BtoBの事業であれば、実績、対応範囲、代表者の経歴、問い合わせ方法などが信頼材料になります。 WebやSNSは、あくまで販路開拓の一部です。事業計画の中では、「どのように知ってもらうか」「どのように相談や購入につなげるか」を考えるための手段として位置づけると整理しやすくなります。
続けられる計画にする

事業計画は、細かく作ればよいというものではありません。創業者自身が実行できる計画になっていることが大切です。 たとえば、毎日SNSを更新する計画を立てても、実際には接客、営業、仕入れ、経理、商品づくりなどで手が回らないことがあります。計画を絵に画いた餅にしないためにも、自分の理想だけでなく、使える時間や体力、協力者の有無も踏まえて考えるとよいでしょう。 集客計画を実施する際も、予算の有無だけでなく、誰が担当するのか、どのくらいの頻度で実施するのか、効果をどのように確認するのかを決めておくと続けやすくなります。 また、計画は一つだけでなく、「予想に近い場合」、「予想よりうまくいく場合」、「予想を下回る厳しい場合」の3パターンを考えておくと安心です。売上が想定より少なかった場合に、どの費用を抑えるのか、どの販路を強化するのかをあらかじめ考えておくことで、慌てず冷静・柔軟に対応しやすくなります。 月次で確認する項目も、多すぎると続きません。問い合わせ数、来店数、成約率、客単価、リピート率など、自分の事業にとって重要な指標を3〜5個程度に絞ると見直しやすくなります。
数字の根拠を集める方法
事業計画の数字は、希望や思い込みで作るのではなく、できる範囲で根拠を集め、記載すると説得力が増します。 まず、公的な統計や地域情報から、市場規模や対象となる人口、消費傾向などを確認することができます。すべてを細かく分析する必要はありませんが、自分の事業がどのような地域や顧客層を対象にしているのかを把握する材料になります。 次に、競合や近い業態の事業者を観察します。価格帯、サービス内容、客層、混雑する時間帯、口コミで評価されている点などを確認すると、自社の立ち位置を考えやすくなります。 さらに、小さなテストも有効です。試験販売、無料相談、説明会、SNSでの反応確認、知人へのヒアリングなどを通じて、実際にどのような反応があるかを見てみましょう。 正確な数字を当てることは難しいものです。大切なのは、仮説を立て、小さく試し、得られた結果を活かし、計画を見直していくことです。
創業後も見直し続け、あなただけの事業計画をつくる

大切なことなので繰り返しますが、事業計画書は、作ったら終わりではありません。創業後も、実績と照らし合わせながら見直し、その質を高めていくことで、事業計画本来の価値を発揮します。 たとえば、想定より問い合わせが少ない場合は、商品やサービスの魅力が伝わっているか、ターゲットが合っているか、集客方法が適切かを見直します。問い合わせはあるのに成約につながらない場合は、価格、説明の仕方、提案内容、信頼材料に課題があるかもしれません。 売上が計画より低い場合も、すぐに失敗と捉える必要はありません。客数が少ないのか、単価が低いのか、リピートが少ないのか、稼働時間が足りないのかを分解して見ることで、改善すべきポイントが見えてきます。 事業計画は、「創業者を縛るもの」ではなく、あなたの想いを実現するための「羅針盤」のようなものです。客観的な根拠から仮の計画を作り、小さな経験を通じて見直すことで、あなただけの事業計画として、その精度を高め続けて育てていくものだと言えるでしょう。
事業計画の策定は事業を踏み出すための一歩
創業時に作る事業計画書は、融資や補助金にも活用する重要なものですが、そのためだけの書類ではありません。融資や補助金に頼らなくても自分の事業ができるのか、どのように事業が継続しているのか、など自分の事業を数字で理解・整理し、創業後も見直しながら使うためのものです。 大切なのは、「誰に・何を・いくらで・どのように届けるか」を整理することです。「売上計画」と「集客計画」を有機的につなげて考え、自分が実行できる範囲に落とし込むことで、計画の精度は向上していきます。
まとめ
完璧な事業計画書を作る必要はありません。仮説を立て、小さく試し、結果を見ながら修正していくことが、創業を着実に進めるための大切な一歩になります。 事業計画書を一人で作ろうとすると、売上の根拠や集客方法、必要資金の考え方で迷うこともあります。TOKYO創業ステーションTAMAでは、創業に関する相談を通じて、事業計画の整理や創業準備の進め方を確認できます。計画を作る過程で不安や疑問が出てきたら、早めに相談しながら、自分の事業に合った計画へ育てていきましょう。
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著者:南 宏明(みなみ ひろあき)
TAMAプランコンサルタント
理系大学院修了後、地方銀行で営業店に8年間勤務し、金融商品販売(投資信託・保険商品)、個人向けローン、住宅ローン、法人・個人への事業性融資(創業融資含む)、債権管理等の業務を経験した後に独立。現在は、中小企業へのデジタルマーケティング導入・創業支援・FP事業を中心に活動している。中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士。
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