起業前に自分に問いかけてほしい5つの質問 ─ ドラッカーが教える「なぜやるのか」の見つけ方

起業前に自分に問いかけてほしい5つの質問
── ドラッカーが教える「なぜやるのか」の見つけ方

起業前に自分に問いかけてほしい5つの質問 ドラッカーが教える「なぜやるのか」の見つけ方

「起業したいけれど、何から考えればいいのかわからない」──そんな声を、プランコンサルティングの場で何度も耳にします。多くの方が最初に取り組むのは「何を売るか」「いくらにするか」という商品やサービスの検討です。しかし、ビジネスを長く続けていくためには、もっと根本的な問いに向き合うことが不可欠です。 経営学者ピーター・ドラッカーは、事業の本質を問い直すための「5つの質問」を提唱しました。それは、これから起業を目指す方にとっても強力な道具になります。今回は、ドラッカーの「5つの質問」を創業者の視点から読み解き、起業前に自分自身と向き合うためのヒントをお伝えします。

起業準備で「何を売るか」より先に考えるべきこと

起業の準備をはじめると、「どんな商品を売るか」「価格はいくらにするか」「どこで販売するか」という具体的な検討から入ってしまいがちです。これらは確かに重要な要素ですが、こうした「手段」の議論を先行させると、事業の根っこにある「なぜやるのか」「なぜ私がやる必要があるのか」が曖昧なままになりがちです。 曖昧だと何が問題なのか。それは、「なぜやるのか」「なぜ私がやる必要があるのか」が明確でない事業は、方向性が定まらないため、想定外の事態や困難に直面したときに右往左往するなどして立て直しが難しくなります。また、資金調達や許認可の申請など、事業計画書を作成する場面でも、自分の言葉で事業の意義を語れるかどうかが、書類の説得力に直結します。 だからこそ、具体的な商品・サービスの検討を始める前に、自分の事業の「軸」を言語化する作業が必要です。その作業を助けてくれるのが、ドラッカーの「5つの質問」です。

ドラッカーの「5つの質問」とは?

ドラッカーの「5つの質問」とは?

ピーター・ドラッカーは、20世紀を代表する経営学者です。「マネジメントの父」とも呼ばれ、組織が成果を上げるための本質的な考え方を数多く提唱しました。 「5つの質問」は、ドラッカーが著書『経営者に贈る5つの質問』の中で示した経営ツールで、組織が自らの存在意義と方向性を点検するための問いで構成されています。その5つとは、次のとおりです。

  • 質問1:われわれのミッション(使命)は何か?
  • 質問2:われわれの顧客は誰か?
  • 質問3:顧客にとっての価値は何か?
  • 質問4:われわれの成果は何か?
  • 質問5:われわれの計画は何か?

この「5つの質問」はとてもシンプルに見えますね。ですが、いざ自分の言葉で答えようとすると、多くの方が「意外と難しい」と感じるのではないでしょうか。表面的な商品・サービスの話ではなく、事業の「存在意義」について考えさせる質問であるため、いざ応えようとすると難しいのです。

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あなたは今、この問いに答えられますか?

本題に入る前に、一度立ち止まって確認してみましょう。次の問いに答えられるかどうか、試してみてください。

  • なぜその事業をやるのか、自分の言葉で話せる
  • 誰のための事業か、具体的にイメージできている
  • その人にとっての「価値」が、顧客目線で言語化できている
  • 事業が成功した状態を、数字以外の言葉でも描けている
  • 最初の一歩として、何をいつまでにやるかが決まっている

すべてに即答できた方は、すでに事業の軸ができています。ひとつでも「うーん」と止まった項目があった方は、
次の実践ガイドを読み進めてみてください。

補足しますと、本稿の目的は、知識や準備のレベルを判定することではありません。起業を目指す皆さんが、立ち上げる事業を長く継続していっていただくことが目的です。ですから、今の時点で準備が完璧である必要はありません。あなたにとって、抜けている穴を発見し、それを落ち着いて・しっかりと埋めていくことで、あなたの事業(計画)の精度が向上していくことを目指しましょう。

創業者のための「5つの質問」実践ガイド

創業者のための「5つの質問」実践ガイド

それでは、各質問を創業者の視点から読み解いていきましょう。

質問1:われわれのミッション(使命)は何か?

「ミッション」とは、事業を通じて社会や顧客に提供したい「価値の根幹」です。「〇〇を売ること」ではなく、「〇〇を通じて、誰かの何かを解決・実現すること」という形で表現されます。 たとえば、「地域の高齢者向けに移動支援サービスを提供する」という事業であれば、ミッションは「交通手段に困る高齢者の方が、自分らしく外出できる社会をつくる」といった形になるかもしれません。たとえば、「地域の高齢者向けに移動支援サービスを提供する」という事業であれば、ミッションは「交通手段に困る高齢者の方が、自分らしく外出できる社会をつくる」といった形になるかもしれません。

【自問してみましょう】自分がこの事業をやろうと思ったきっかけは何ですか?その動機の奥にある「社会や誰かへの貢献」を言葉にできますか?

質問2:われわれの顧客は誰か?

「誰に売るか」は、事業の設計全体に影響します。ここでのポイントは、「なるべく多くの人」とするのではなく、できるだけ具体的に絞り込むことです。 年齢・性別・地域・職業・ライフスタイルといった属性だけでなく、「その人は、今、どんな悩みや状況にあるか」を具体的に描いてみましょう。

【自問してみましょう】自分の商品やサービスを、最も必要としているのはどんな人ですか?その人は今、どんな困りごとを抱えていますか?

質問3:顧客にとっての価値は何か?

ここで問われるのは、「自分がよいと思う価値」ではなく「顧客がよいと感じる価値」です。この視点のズレが、売れない商品・サービスを生む最大の原因のひとつです。 たとえば、「こだわりの素材を使った手作り石鹸」の作り手としては「こだわり素材」「手作り」「品質の高さ」がその石鹸の一番の価値だと思っていても、実は顧客としては「肌トラブルが解決する安心感」「続けやすい価格と安心感のバランス」「贈答用に重宝する価値と価格」からその石鹸を購入したのかもしれません。感じている価値が違うのであれば、パッケージやPOPで伝えるメッセージも違ってくるはずです。そのため、顧客にとっての価値を正確に捉えることが重要で、実際に顧客と対話してフィードバックを聞く姿勢が欠かせません。

【自問してみましょう】顧客はあなたの商品・サービスを通じて、何を手に入れたいと思っているでしょうか?「機能的な価値」と「感情的な価値」の両面から考えてみましょう。

質問4:われわれの成果は何か?

ここでいう「成果」とは、売上や利益だけを指しません。事業を通じて、顧客や社会にどのような変化をもたらしたかが問われています。 創業初期は、売上よりも「顧客の変化」に目を向けることが重要です。「利用した顧客が笑顔になった」「悩みが解決した」「リピートしてくれた」「知人に紹介してくれた」──こうした小さな成果の積み重ねが、事業の実績となり、次のステップへの足がかりになります。

【自問してみましょう】この事業が成功した状態とは、どんな姿ですか?数字だけでなく、顧客や地域にどんな変化が生まれているかを言葉にしてみましょう。

質問5:われわれの計画は何か?

最後の質問は、これまでの4つの問いへの答えをもとに、「では、具体的に何をするか」を考えることです。ミッション・顧客・価値・成果が明確になっていれば、計画は自然と絞られてきます。 計画には、「何を・いつまでに・どのくらいやるか」という要素が必要です。ただし、ここで完璧な計画を求めすぎる必要はありません。重要なのは、計画を立てることで「自分の思考の全体像」が見えてくることです。計画を書くプロセスそのものが、事業への解像度を高め、課題や不安を整理する作業になります。

【自問してみましょう】今日から半年後・1年後に、何を実現したいですか?そのために、最初に動くべき一歩は何でしょうか?

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「答えに詰まる」こと自体が、大事なサインである

「5つの質問」に向き合ってみると、「思っていたよりも答えられない」という感覚を持つかもしれません。しかし、それは失敗ではありません。むしろ、答えに詰まる場所こそが、事業の「弱い部分」や「まだ考えきれていない部分」を示すサインです。 一人で考え込むだけでは、どうしても思考の視野が狭くなります。自分では当たり前だと思っていることが、実は曖昧だったり、矛盾していたりすることも珍しくありません。そういうときに有効なのが、「誰かに話す」ことです。 話すことで、頭の中に散らばっていた考えが整理されます。第三者からの問いかけによって、自分では気づけなかった視点が生まれることもあります。「迷いを決断に変える」ためには、一人で抱え込まず、対話の場を活用することが近道です。

まとめ──問いかけることが、決断への第一歩

まとめ──問いかけることが、決断への第一歩

今回ご紹介したドラッカーの「5つの質問」を、もう一度振り返ってみましょう。

  • 質問1:われわれのミッション(使命)は何か? ── 事業の「なぜ」を問う
  • 質問2:われわれの顧客は誰か? ── 事業の「誰のため」を問う
  • 質問3:顧客にとっての価値は何か? ── 事業の「何を届けるか」を問う
  • 質問4:われわれの成果は何か? ── 事業の「どう変わるか」を問う
  • 質問5:われわれの計画は何か? ── 事業の「どうやるか」を問う

この5つの問いに、自分の言葉で答えていくことが、事業計画書づくりの最初の土台になります。「完璧な答え」でなくても構いません。まず「自分はどう考えているか」を言葉にすることが、起業という決断への第一歩です。

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著者写真 倉島 悠輔著者:倉島 悠輔(くらしま ゆうすけ)
TAMAプランコンサルタント 


会社員時代に長く法務部門に属し、【丁寧なヒアリング】と【わかりやすい言語化】をモットーとする。 副業から独立に至り、独立後は経営理念・経営戦略の策定支援を中心に支援を行い、クライアントから高評価いただき長期契約も多数。小手先ではなく、戦略を大事にする支援が得意。好きな言葉は「夢なき者に理想なし、理想なき者に計画なし、計画なき者に実行なし、実行なき者に成功なし。故に、夢なき者に成功なし。」(吉田松陰) 中小企業診断士

※本記事は、個人の意見・見解です。また、本記事で紹介している情報は、執筆時点のものであり、閲覧時点では変更になっている場合がございます。