資金調達のイロハ
資金調達のイロハ

事業を行うには資金が必要です。創業においても同様であり、金融機関から借入を行う場合があります。ただ、誰しも初めての経験。どのように進めれば良いか分からことも多いでしょう。本ブログでは資金調達の基本について解説します。
目次
資金調達の必要性
多くのビジネスでは先に支払いが発生して、売上代金の入金まで時間がかかります。そうした中で事業が軌道に乗るまで自己資金だけでの経営はリスクもあります。それを回避するために金融機関から創業融資という資金調達を行う選択肢があります。しっかりと創業計画書を作成して申し込めば、創業融資は比較的受けやすい傾向があります。反対に創業後に資金が減ってきて、そこで初めて融資を申し込んでも借りられない可能性が高くなります。借金を怖がる方がいますが、経営者であればて資金確保の手段として借入を選択肢の1つとして検討すべきです。
申込みできないケース

融資に際しては金融機関の審査があり、可否はその結果次第です。ただ、そもそも創業融資を申込めない場合もあります。典型的な例は税金の未納がある場合です。また社会保険料の未納や過去にクレジットカードなどの未払事故を起こし、その記録がまだ信用情報に残っている場合なども同様です。ここでは「申込みできない」と書きましたが、実際には申込みできるかもしれません。しかし、審査に通ることは難易度が高いと言えます。
金融機関が重視する要素
審査は様々な観点から行われますが、その中でも金融機関が重視するポイントとして「自己資金」、「ビジネスモデル(創業計画書)」、「その事業に関係する過去の経験」などがあげられます。自己資金は開業に必要な資金額の2~3割程度が目安、次に融資の返済が十分に見込めるビジネスか、またそれが計画書に表現されているか。そして、過去の経験や知識、スキル等を活かせるビジネスか、を重視します。例えば、ずっと会社員だった方が定年後に経験のない飲食店を始める、などは審査上で相当厳しい見方をされます。
主な調達先
創業融資の調達先は主に2つ、国の銀行である日本政策金融公庫(以下、「公庫」という)と民間金融機関です。公庫の特徴として審査と面談を無事に通過するとして申込みから入金まで早ければ4週間程度と短期間であることです。一方、民間金融機関の場合は審査を経て銀行や信用金庫が融資を実行します。また民間金融機関と地元自治体、信用保証協会(「信用保証協会」については後述)が連携して融資を行う「制度融資」という仕組みがあります。設定されている融資条件に該当すれば自治体が利子負担をしてくれて、より低い金利で資金調達ができます。なお、制度融資では申込みから入金までは2か月程度かかることが多いです。

日本政策金融公庫の創業融資での注意点
日本政策金融公庫の創業融資での注意点をご紹介していきます。今回お伝えすることを守らない場合、融資の審査に悪影響が出てしまう可能性が高くなります。 必ず創業融資の申し込み前に再確認をして下さい。
資金使途
融資申請において、資金の使途は非常に重要であり、金融機関も重視しています。資金使途には「運転資金」と「設備資金」の2つがあります。よく資金使途を聞かれて、「運転資金です」などと答える方がいますが、相手が聞きたいのはその先の具体的な使い道です。運転資金であれば仕入や人件費、外注費、広告宣伝費など。設備資金であれば内外装工事や機械購入、保証金など予定している具体的な使途の明示が求められます。なお設備資金の申込みにあたっては業者から入手した正式な見積書を提出します。
金利
借入をすれば金利がついてきます。昨今は低金利と言われていますが、どのくらいの利率か、月々に支払う金利が幾らになるかについては気をつけたいところです。具体的な金利については金融機関に詳しく聞いてみましょう。あくまでも例ですが500万円の借入で、金利1%なら単純計算で年間5万円、月あたり4,200円程度を「支払利息」として金融機関に払います。
返済計画(返済方法 返済額、据置など)
創業融資の返済についてはおおむね貸付期間において毎月定額返済となります。運転資金なら5~7年、設備資金なら7~9年程度が貸付期間になります。その際に「据置」という制度があります。これは元金の返済猶予の期間となり、最大1年から2年程度が設定されています。これは利用するか否かは選択可能です。例として運転資金500万円を貸付期間7年、据置12か月で借入した場合、最初の12か月は現金返済ゼロで金利だけ払います。そして13か月目以降から金利支払いに加えて、毎月約7万円(500万円÷72か月)の返済をすることになります。気をつけたいのは元金の返済額です。無理なく返済できそうな金額に収まっているか慎重に検討しましょう。
担保・保証

借入に際しては担保もしくは個人保証を求められることがあります。担保とは借り手が返済困難になった場合に債権者が融資金を回収できるよう提供する不動産等の財産や人を指します。保証は一般的には会社が行う借入に対して、経営者個人が連帯保証人になることです。つまり、会社が借入金の返済が困難になった場合、経営者個人が返済義務を負います。実績のない創業の場合、経営者保証を差し入れることが多いですが、昨今は経営者保証を求めない融資を進めるよう国も積極的に後押しをしており、保証なしの融資や差し入れた保証を解除できる制度が整ってきています。
公的機関である信用保証協会とは
中小企業や個人事業主が金融機関から融資を受けやすくするために各都道府県等に設置された公的機関が「信用保証協会」(以下、「保証協会」という)です。保証協会は借り手が返済困難になった場合に代わりに残債の80%もしくは100%を金融機関へ返済します(これを代位弁済といいます)。金融機関としてはリスクを抑えることができ、それだけ融資しやすくなります。代位弁済されたら、債権者が金融機関から保証協会へ変わり、債務者は保証協会と協議して可能な範囲で返済をすることになります。なお保証協会の利用にあたっては「信用保証料」という手数料の支払いが発生します。
調達成功のカギ
資金調達を成功させる要素は様々ありますが、そのなかの1つがしっかりとした事業計画書です。金融機関は事業の実現可能性、返済の可能性が高いと判断すれば融資を行います。そして、それを判断する材料が事業計画書となります。融資を申し込む側としては、自分の考えやビジネスを説明するプレゼンが事業計画書であり、なぜ資金が必要になるかのストーリーを提示する大事な資料となります。

金額の妥当性を示す
事業計画書の一部として必ず入れてほしい資料があります。それが「資金繰計画表」です。これは毎月の現金の出入りをまとめたもので、月別に12か月先程度まで作成します。これを作ることで収入と支出、各月の現金残高、そして融資申込額の妥当性等を視覚で分かりやすく伝えることができます。これがあると審査上でも有利に働く可能性が高くなります。
金融機関との関係構築

金融機関との付き合いは資金調達ができたら終わり、ではありません。できれば3か月に1回程度はこちらから訪問して、業況報告をするなど良好な関係構築をすべきパートナーと認識しましょう。お互いをよく知れば、金融機関も親身になってくれるものです。
専門家を上手に活用する
創業にあたっては自分でしっかりと考えて事業内容などを固め、事業計画書にまとめていきます。しかし、実際に言葉と数字で事業計画書にすることは難しいものです。その時は自治体や商工会議所、あるいはTOKYO創業ステーションTAMAなどの創業支援機関の専門家を是非活用しましょう。自分1人でやるよりも早く進むうえ、第三者の目線も得られて有効です。

事業計画・資金調達のご相談は、TOKYO創業ステーションTAMAへ
TOKYO創業ステーションTAMAの「Planning Port TAMA」には、資金調達から事業計画書、資金繰計画表に関するご相談(プランコンサルティング)ができる専門コンサルタントが多数、在籍しております。また、相談は無料で、電話やZoomでの相談も可能です。
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著者:山口 真徳(やまぐち まさのり)
TAMAプランコンサルタント
中堅商社勤務を経て、英国ブーツブランドの日本法人設立に携わり、その後米国の外資アパレル・ブーツブランドで営業・管理職として勤務。マーケティング、事業計画作成などにも関わると共に卸・小売・ファッション業界の多くの取引先と関係構築。中小企業診断士の資格取得後、2018年独立。杉並区産業振興センター相談員として創業支援の実績多数。また、個人でもストアカ(ストリートアカデミー)で講座を持ち、ビジネスパーソン向けに創業支援を手掛ける。創業準備中の方やこれから創業について考えてみたいという方にも大切なビジネスのポイントを分かりやすく解説。“弱者の戦略”ランチェスター法則に精通。(一社)融資コンサルタント協会認定SP融資コンサルタント。
※本記事は、個人の意見・見解です。また、本記事で紹介している情報は、執筆時点のものであり、閲覧時点では変更になっている場合がございます。