高校生から考える「起業」という選択肢
高校生から考える「起業」という選択肢

私が創業相談を行う中で、高校生の相談を受けたり、学校で講演したりする機会があります。そうした活動を通じて、高校生の皆さんと起業について話すことも少なくありません。 高校生の皆さんからは、「高校生でも起業できますか?」「起業するには何が必要ですか?」「お金はどうすればいいですか?」など、様々な質問を受けます。こうした質問からは、起業に興味を持ちながらも、自分の将来と結び付けて考える機会はまだ多くないのだと感じます。
そこでこの記事では、高校生の皆さんが起業について考えるときの基本的な視点を紹介します。身近な疑問や困りごとがビジネスのきっかけになること、アイデアをどのようにビジネスにつなげていくのか、そして実際に高校生のときにビジネスプランを考えた方の事例を紹介します。 この記事を通して、将来の選択肢の一つとして「起業」を知り、自分の興味や関心、これからやってみたいことを考えるきっかけとして読んでいただければと思います。
目次
高校生にとって「起業」はどんなもの?
高校生の皆さんは起業という言葉は知っていても、「自分が起業する」と考えると、少し遠く感じる方もいるのではないでしょうか。 起業には特別な知識や技術が必要なのか、お金はどのくらい必要なのか、高校生の自分にもできるのか。起業について考え始めると、いろいろな疑問が出てきます。実際に事業を始めることになれば、商品やサービス、お金、仕事の進め方など、考えることはたくさんあります。では、高校生のうちに起業について考える意味はどこにあるのでしょうか。
【図版1】高校生が起業について気になっていること

私は、「自分のアイデアを形にして、誰かに届ける」という考え方を知っておくことに意味があると思います。高校生の段階では、実際に起業するかどうかを決める必要はありません。起業という選択肢があることを知り、「将来、どんなことをしてみたいだろう」と考えてみることにも意味があります。
学校で学んでいること、好きなこと、部活動や趣味など、今の生活の中には、自分が興味を持っていることがたくさんあると思います。「これを将来も続けてみたい」「こんなことを仕事にできたら面白そう」と考えることもあるでしょう。 仕事には、会社や組織で働くこと、自分で仕事をつくることなど、様々な形がありますが、起業はその中の一つです。そこでまずは「起業」という言葉を知り、自分の将来と少し結び付けて考えてみるところから始めてみるのはいかがでしょう。 では、実際にビジネスを考えるとき、どのようなところからアイデアが生まれるのでしょうか。
ビジネスのきっかけは、身近なところにある
ビジネスのきっかけになるテーマは、皆さんのふだんの生活の中にもあります。 自分が困った経験や、周囲の人が困っている様子、社会の中で感じた疑問など、きっかけは様々です。また、自分が興味を持っていることや、好きなことから考え始めることもできます。こうした経験や興味から、「なぜこうなっているのだろう」「もっと便利にできないだろうか」と考えていくと、ビジネスのアイデアにつながることがあります。 例えば、日本政策金融公庫が主催している「高校生ビジネスプラン・グランプリ」という大会があります。全国の高校生と高等専門学校生を対象としたビジネスプランコンテストで、2013年度から開催されています。
参考:日本政策金融公庫 高校生ビジネスプラン・グランプリのページ
https://www.jfc.go.jp/n/grandprix/index.html
過去の大会では、環境、地域、教育、健康、農業など、様々な分野のビジネスプランが取り上げられています。それらのプランを見ると、大きな社会の問題から、日々の生活の中で感じた小さな疑問まで、様々なテーマからビジネスを考えられることが分かります。
【図版2】「気になること」からビジネスを考える

例えば、「高齢者が買物に困っているのではないか」と感じたとします。まず皆さんは、「本当に買物に困っている人がいるのか」「どのようなことに困っているのか」を自分なりに調べてみることができると思います。 また、高齢者に話を聞いてみると、最初に考えていたこととは違う問題が見えてくるかもしれません。こうして調べたり、人に話を聞いたりしながら理解を深めていくと、「この問題について、何かできることはないだろうか」と考えるようになります。その解決方法の一つが、ビジネスです。 では、ビジネスとは、具体的にどのようなものなのでしょうか。
アイデアをビジネスにするには?
ビジネスでは、誰かが「欲しい」「便利だ」「役に立つ」と感じるものを考え、それを商品やサービスとして届けます。困っている人の問題を解決することも、その一つです。 例えば、高齢者の買物を手助けするサービスを考えたとします。 まず、そのサービスを必要としている人がどのような人なのかを考えます。高齢者といっても、買物のどんな場面で困っている人なのか、どのような場所に住んでいる人なのかによって、必要なサービスは変わってきます。 次に、どのようなサービスを届けるのかを考えます。例えば、買物先まで一緒に行くのか、買物を代わりに行うのか、購入した商品を自宅まで届けるのかによって、必要な仕組みは変わります。
さらに、そのサービスをどのような方法で提供するのかを考えます。サービスを提供するためには、人や車などが必要になるかもしれません。そして、サービスを利用する人に、どのくらいのお金を払ってもらうのかも考えます。 このように、「誰に届けるのか」「何を届けるのか」「どうやって届けるのか」を考えていくと、「こんなことができたらいい」というアイデアが、具体的なビジネスの形に近づいていきます。
【図版3】「アイデア」を「ビジネス」にする基本的な流れ

ビジネスを続けていくためには、商品やサービスを提供するためのお金も必要です。売上から必要な費用を支払い、利益を残すことで、次の活動につなげることができます。 このようにビジネスを考えるときには、商品やサービスの内容だけでなく、誰に届けるのか、どのように届けるのか、そして事業をどう続けていくのかまで考えます。誰かが必要としているものを考え、それを実際に届け、お金を受け取り、その活動を続けていく。その一連の仕組みがビジネスです。 そして、自分で考えたアイデアをビジネスとして形にしていくことが、起業につながります。 では、実際に高校生はどのようにビジネスプランを考えたのでしょうか。
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高校生が考えたビジネスプランの事例

今回紹介するのは、高校3年生のときに「高校生ビジネスプラン・グランプリ」に挑戦し、ベスト100に入選した方の事例です。考えたのは、退職後のシニアが持つ経験や知識を、次の世代につなげるビジネスプランでした。 その背景には、長年仕事をしてきたシニアの経験や知識を、若い世代が知る機会をつくりたいという着眼点がありました。では、このプランを「誰に・何を・どのように」という視点から見てみましょう。
誰に届けるのか
届ける相手として考えたのは、高校生などの若い世代です。仕事についてまだ知らないことが多い時期に、シニアの経験に触れることで、仕事や将来の働き方について考える機会をつくろうとしました。
何を届けるのか
届ける内容は、シニアが長年の仕事や人生を通じて培ってきた経験や知識です。仕事の進め方や営業の経験など、長い仕事人生の中で身につけたことを、次の世代につなげようと考えました。
どのように届けるのか
その方法として考えたのが、教育機関での講演活動です。シニアが学校などで自身の経験を伝えることで、高校生や若い世代が仕事について知り、自分の将来を考える機会につなげようとしました。
これを整理すると、このプランは、シニアの経験・知識を教育機関での講演を通じて若い世代に届け、仕事や将来の働き方を考えるきっかけをつくるビジネスとなります。ただ、最初からこの形が完成していたわけではありません。 プランを具体化する過程では、関係する人に話を聞いたり、起業家や専門家にも相談したりしながら、誰に、何を、どのような方法で届けるのかを一つずつ考え、自分の考えを少しずつ具体的にしていきました。
さらに、このプランを作成し、グランプリに挑戦した経験を通じて、インターンシップやピッチイベントなどに興味を持ったとき、「やってみよう」と考えることが自然になったそうです。この事例の方のように、ビジネスプランを考える経験は、事業の形を考える機会になると同時に、自分が何に興味を持っているのか、どんなことをやってみたいのかを知る機会にもなるでしょう。 では、高校生の皆さんが自分自身で何かを考え始めるとき、どこから始めればよいのでしょうか。
まずは「気になること」から

高校生の皆さんも、ふだんの生活の中で、自分が「気になること」に目を向けてみてください。 例えば、学校で使っているものについて「もっと使いやすくならないかな」と思った経験や、部活動の中で「こんな道具があったら便利なのに」と感じた経験はないでしょうか。友達との会話の中で、何げなく聞いた「困っている」という一言が、気になることのきっかけになる場合もあります。
「なぜ、こうなっているのだろう」「もっとこうなればいいのに」「こんなものがあったら便利なのに」。そんな疑問が見つかったら、詳しそうな人に話を聞いたり、友達や家族と話したり、インターネットや本で調べたりしてみましょう。そうした中で、今まで知らなかったことや、自分とは違う考え方に気づくことがあります。 さらに、「こんな方法なら解決できるのではないか」「こんなものがあったら便利なのではないか」と考えてみることもできます。その方法を必要とする人に届けるときには、ビジネスという方法がありますが、ボランティアや地域活動など、別の方法で誰かの役に立つこともできます。
最初から大きなことを考える必要はありません。身近なことに気づき、自分なりに考えてみる。その中で興味を持ったことを調べたり、人に話を聞いたりする経験が、将来の仕事や新しい挑戦につながることがあります。 高校生の今は、これからどんな仕事をするのか、どんなことをしてみたいのかを考えていく時期でもあります。そして、いつか「自分で何かをやってみたい」と思ったときには、まず自分の身の回りにある「気になること」から考えてみるのはいかがでしょうか。
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著者:小松田 誠一
TAMAプランコンサルタント
建設コンサルタントなどで営業・経理・総務などを経験した後、2015年からは創業支援を中心に活動を開始。現在、TOKYO創業ステーションTAMAのほか、秋葉原のワンストップ総合相談窓口や埼玉県の公的支援機関などで、年間800件以上の創業・経営相談に従事。これまで延べ520社を超える創業支援に携わる。学生の起業支援としては日本政策金融公庫 高校生ビジネスプラン・グランプリにエントリーするためのビジネスプランの支援や、高校での起業講演などを行っている。中小企業診断士・一級販売士
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