「リーンスタートアップとは ~目新しいビジネスの成功確率を高めるための科学的アプローチ その1~」
リーンスタートアップとは ~目新しいビジネスの成功確率を高めるための科学的アプローチ 【その1】~

「リーンスタートアップ」は、スタートアップビジネスの成功確率を高めるための方法論として、広く活用されている手法です。現在では一般化してきた「MVP(=ミニマム・バイアブル・プロダクト)」「ピボット」などの特徴的なキーワード(考え方)があります。大企業・中小企業・ベンチャー企業を問わず、目新しい製品やビジネスモデルに取り組む際に、押さえておくべき起業のアプローチです。
目次
リーンスタートアップとは何か
リーンスタートアップは、米国の起業家のエリック・リース氏がベストセラーとなった著書「The Lean Startup」(2011年刊)で提唱したスタートアップビジネスの進め方で、日本でも2010年代から、大学の講義や起業支援の現場で広く取り入れられるようになりました。 スタートアップに取り組む際の大きな悩みは、「市場にない、目新しい商品やビジネスに取り組むため、調査をしても顧客のニーズが拾えないこと」です。
スティーブ・ジョブズ(アップルの創業者)は、雑誌のインタビューで「多くの場合、人は実際に見せられるまで、自分が何を欲しいのか分からない。)と語っています。また、盛田昭夫氏(ソニーの共同創業者)は、著書の中で、「私たちは、人々に何が欲しいかを尋ねるのではなく、新しい製品で人々をリードする。どれだけ市場調査をしても、ソニーのウォークマンが成功するとは分からなかっただろう。」と述べています。
これまでは「優れた発明家がいれば、顧客の声を聴く必要はない」と思われがちでした。しかし、リーンスタートアップは、このような成功事例を科学的に分析し「顧客に答えを聞くのではなく、顧客から答えを学ぶ」ことで、再現性のあるプロセスとしてまとめ直したものです。
「構築・計測・学習」のサイクル

既に顧客ニーズが発生している(顕在ニーズ)場合とは異なり、全く新しいコンセプトの製品やサービスを開発する場合は、「顧客自体が気づいていない」潜在ニーズを掘り起こすことが必要になります。そのためのアプローチが、リーンスタートアップの中心となる「仮説検証型」のサイクルです。このサイクルは以下の3つのステップから成ります。
構築(Build)
「顧客はこんなものを求めているはず」という仮説を立てた後、事業アイデアを実際に見込み客が試せるように最小限の製品(MVP:ミニマム・バイアブル・プロダクト)を作りますが、、その解説については次回、詳しく触れさせていただきます。計測(Measure)
仮説の正しさを検証するために、そのMVPを顧客に実際に使ってもらい、顧客の反応や行動をできるだけ定量的に測定します。リーンスタートアップでは特に事実に基づく判断を重視しています。学習(Learn)
測定した結果を見て、事実から学び、最初に立てた仮説が正しかったかを判断します。このプロセスのポイントは、「MVPを作る前に、何を測定してどう判断するか」を先に決めておくという点です。なお、顧客ニーズの仮説は1つではなく複数考えられますので、このサイクルを「いかに早く回せるか」が重要です。大切なことは、複数の仮説に対して優先度付けをして「前向きにダメ出し」することで、短時間で正解にたどり着くことです。言い換えると「失敗するなら早く安くしておく」という意味で「Fail fast, fail cheap」と呼ばれています。
製品開発と顧客開発を同時に進める
リーンスタートアップでは、MVPという「製品を作ること」と、MVPを通して「顧客を見つけること(顧客開発」」が同時に進むという特徴があります。これには2つのメリットがあります。1つ目は、製品開発と営業活動が同時に進むため、市場投入までの期間を圧縮できることです。これにより大手企業にまねされたり、資金が枯渇したりする前に、ビジネスの立ち上げを行うことができます。2つ目は、反応の良かったMVPの試用客がそのまま最初の顧客になってくれるため、導入効果が実証された状態で製品のリリースができることです。これは実績の無いスタートアップについては信頼獲得のための大きな力となります。
ピボットと事業継続の判断
仮説検証サイクルの「学習(learn)」の結果、MVPを改良して現在の見込み客に受け入れられるようにするのか(現在の戦略の継続)、それともターゲット顧客層自体を変えるのか(新しい戦略へ転換)、の判断を素早く行います。他の顧客層や顧客ニーズにターゲットを転換することを「ピボット※」と呼びます。多くのスタートアップでは、初期仮説がそのまま順当に進むことは少なく、数回のピボットを経て、収益性の高い市場を見つけています。
※ピボット(pivot)・・・回転軸という意味で、バスケットボールの競技用語としても知られる。Excelで縦横の軸を自由に変えながらテーブルを作るピボットテーブルも同一の語源。完全にゼロからやり直すのではなく、軸足を残して次に進むのが、特徴です。「小規模な起業」で実践する際のポイント
経営資源や資金力に劣るスタートアップにとって最大の武器は「スピード」です。サイクルを早く回して成功確率を高めるというリーンスタートアップの考え方は、正にこの強みが活かせる手法です。
なお、顧客開発の提唱者スティーブ・ブランク氏は、「社内に事実はない。外に出よ。」と強調しています。スタートアップ(=社内)が持っているのは仮説にすぎないので、それを検証するためには「とにかく外に行って顧客と対話すること」に重点を置くべき、ということです。
特に、技術先行・アイデア先行の起業では、つい研究開発や特許取得などの「内向きの活動」に時間を使いがちになるのですが、経営者や技術者自身が見込み客と直接対話することが、とても大事であるということを言っています。リーンスタートアップはビジネスの成功確率を高めるための科学的アプローチではありますが、そのためには理論ではなく実践が重要ということです。
まとめ

著者:TOKYO創業ステーションTAMA プランコンサルタント 松井 淳(まつい じゅん)先生
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著者:松井 淳(まつい じゅん)
TAMAプランコンサルタント
日本HPほかIT企業にてマーケティング・営業・商品企画に携わり、執行役員として新事業立上げを担った経験あり。製造業、IT、食品分野に精通。十数年に渡る支援経験の中で、500人の創業希望者の相談に乗りながら、年間150件の事業計画の作成をサポート。大学で創業講座も持ち、学生からシニアまで広く創業の相談に対応。イベント集客、WEB運営、融資取付、会社登記、契約書作成といった、すぐに役立つ実務支援も得意。
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