起業に役立つ経営理論・フレームワーク:アイデアをカタチにするための思考ツールライブラリー「3C」「ジョブ理論」「リーンキャンパス」「エフェクチュエーション」

起業に役立つ経営理論・フレームワーク:アイデアをカタチにするための
思考ツールライブラリー
-「3C」「ジョブ理論」「リーンキャンパス」「エフェクチュエーション」-

起業に役立つ経営理論・フレームワーク:アイデアをカタチにするための思考ツールライブラリー「3C」「ジョブ理論」「リーンキャンパス」「エフェクチュエーション」

起業を志すとき、胸には熱い情熱と革新的なアイデアがあふれていることでしょう。しかし、その情熱を実際のビジネスとして軌道に乗せるには、進むべき方向を示す「道しるべ」が必要です。 この記事では、起業前後の初期段階で役立つ実践的な経営理論やフレームワークを、その「活用方法」や「留意点」と合わせて解説します。先人たちの知恵である理論を手に入れ、あなたの起業をより確かなものにしましょう。

市場環境の初期分析を行う「3C分析」 

1. 3C分析とは?

カリフォルニア大学教授やスタンフォード大学客員教授を歴任した経営コンサルタント大前研一氏が提唱したとされる戦略立案のためのフレームワーク。Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の3視点で分析します。

2. なぜ起業初期に役立つのか?

リソースが限られる起業初期に「戦う場所」を見極めるため。自社の強みを活かし、競合を避け、顧客に選ばれる領域(=KSF領域)を見つけます。
※KSF:キーサクセスファクター

3. 活用方法

3つの要素について、以下のような項目を列挙します。

• 顧客:誰か? なぜ買うか? 市場は成長しているか?
• 競合:代替手段は? 競合が提供できていない価値は?
• 自社:競合より優れる点は? それを支えるリソースは?

4. 留意点

項目を上げることで終わらせず、「顧客ニーズがあり、競合が弱く、自社の強みが活きる」KSF領域を見つけ、具体的な戦略(誰に・何を・どのように提供するか)に落とし込むまでを行うことが重要です。

顧客課題を深掘りする「ジョブ理論」

顧客課題を深掘りする「ジョブ理論」

1. ジョブ理論とは?

ハーバード・ビジネス・スクール教授で、コンサルティング会社の経営者でもあったクレイトン・クリステンセン氏が『ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする』を始めとする書籍等で提唱した、「顧客は製品を買うのではなく、特定の状況で“片付けたい仕事(Job)”を解決するために“雇用”している」という考え方です。

2. なぜ起業初期に役立つのか?

起業家はしばしば、自分が作りたい製品やサービス(ソリューション)から発想しがちですが、ジョブ理論は、顧客がなぜその製品を「雇う」のか、つまり根本的な動機や解決したい課題(真のニーズ)に着目させます。どのようなジョブにまだ適切なソリューションがないのか、または既存のソリューションに不満があるのかを特定することで、市場機会を見つけ出すのに役立ちます。

3. 活用方法

「大学の近くのカフェ」を創業する例として、

  • 従来の競合(学食やチェーン店)のジョブ:「空き時間に、安くコーヒーを飲んで休憩や暇つぶしをしたい」
  • 深掘りして発見したジョブ:「図書館は静かすぎて息が詰まるが、家では誘惑が多い。適度な雑音の中で、次の授業までの90分間、課題を集中して終わらせたい」というジョブがあった。また、そのジョブを雇用できる場所がないと感じている学生がいた

この場合、顧客は「コーヒーの味」ではなく「生産的な90分間」というジョブのために店を「雇用」します。 こうなると、提供すべきは「豊富なスイーツ」よりも「全席電源・高速Wi-Fi・長居しやすい雰囲気」となります。また、真の競合は他のカフェではなく「大学図書館」や「自宅」であることが見えてきます。 このように、「どんな状況で?」「どんな進歩や変化を求めている?」「機能面だけでなく、感情面・社会面のジョブは?」と問いかけることが重要です。

4. 留意点

顧客の「ジョブ」はアンケートだけでは見えにくいことが多いです。顧客の行動を「観察」し、「なぜ?」を繰り返すインタビューでの深掘りが不可欠です。顧客も言語化できていない本質的な動機を探ることが鍵です。

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リーンキャンバス:最初のプランをまとめる

リーンキャンバス:最初のプランをまとめる

1. リーンキャンバスとは?

『Runnig Lean(ランニング・リーン)-実践リーンスタートアップ』の著者で起業家のアッシュ・マウリャ氏によって提唱されたフレームワークです。ビジネスモデルの「仮説」を1枚の紙に簡潔にまとめるツールで、スタートアップ向けに「ビジネスモデル・キャンバス」を改良したものです。

2. なぜ起業初期に役立つのか?

起業初期のアイデアはあくまでも「仮説」です。重厚な事業計画書を作ることに時間を掛けるより、まず1枚のリーンキャンバスでビジネスアイデアの全体像を可視化・共有し、最もリスクの高い仮説から素早く検証(実験)していくことができます。

 

3. 活用方法

リーンキャンバスでは、以下のような項目を列挙します。

  1. 課題:顧客が抱えるトップ3の課題。
  2. 顧客セグメント:課題を持つターゲット顧客。(特に、新しい製品やサービスを早期に採用する傾向がある「アーリーアダプター」を設定する)
  3. 独自の価値提案 (UVP:ユニークバリュープロポジション):なぜ自社が選ばれるのか?
  4. 解決策:課題を解決する主要機能。
  5. チャネル:顧客へのアプローチ方法。
  6. 収益の流れ:課金モデル。
  7. コスト構造:主なコスト。
  8. 主要指標:成否を測る最重要の数字。
  9. 圧倒的優位性:模倣困難な強み。
 

4. 留意点

リーンキャンバスは「仮説の塊」です。作成後すぐに、「課題」と「顧客」が正しいかをインタビューやプロトタイプ(商品やサービスのイメージを、コンセプトシートや試作品などの形で見える化したもの)で検証します。得られた学びをもとに、キャンバスを何度も書き換えていくことが前提です。

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エフェクチュエーション:限られた資源の中で、手持ちの手段で動く・始めてみる

エフェクチュエーション:限られた資源の中で、手持ちの手段で動く・始めてみる

1. エフェクチュエーションとは?

バージニア大学ビジネススクールのサラス・サラスバシー教授が、優秀な起業家の思考プロセスから見出した理論で、書籍『エフェクチュエーション―市場創造の実効理論』で紹介されています。「目的」から「手段」を選ぶ(コーゼーション)に対し、「手持ちの手段」から「目的(未来)」を創造していく思考法です。

2. なぜ起業初期に役立つのか?

起業初期は資源が限られ、未来の予測も困難です。完璧な計画を待つより、「手持ちの手段で動く」ことが求められます。リスクを抑えながら第一歩を踏み出すための行動原理がエフェクチュエーションです。

 

3. 活用方法

エフェクチュエーション的行動を特徴づけるのは、次の5つの行動原則です。

  1. 「手中の鳥」の原則:「自分は何者か? 何を知っているか? 誰を知っているか?」から始める。
  2. 「許容可能な損失」の原則:「いくら儲かるか?」でなく、「いくらまで損しても大丈夫か?」で決める。
  3. 「クレイジーキルト」の原則:協力者を巻き込み、パートナーシップを築きながら事業を作る。
  4. 「レモネード」の原則:予期せぬ偶然や失敗(レモン)を、新しい機会として活用する。
  5. 「パイロット」の原則:外部環境をコントロールしようとするのではなく、自分がコントロール可能な行動に集中し、未来を「創造」する。
 

4. 留意点

「計画(コーゼーション)は一切不要」という理論ではありません。起業の超初期段階や予測不可能な事態ではエフェクチュエーションが、事業が軌道に乗れば計画が重要になります。状況に応じた使い分けが肝心です。

まとめ

今回は、起業初期に役立つ4つの経営理論・フレームワークをご紹介しました。

  1. 3C分析で戦う場所を見定め、
  2. ジョブ理論で顧客の本質的な課題を掴み、
  3. リーンキャンバスでビジネスプランを素早くまとめ、
  4. エフェクチュエーションの思考で、リソースが無くても一歩を踏み出す。

これらは「思考の道具」です。重要なのは、行動し、顧客に学び、修正し続けることです。

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著者写真 辰野 博一(たつの ひろかず)著者:辰野 博一(たつの ひろかず)
TAMAプランコンサルタント 


大手電機メーカーでオーラルケア商品の商品企画を担当し、20・30代OL向けの携帯型電動歯ブラシが、市場規模を2倍にするヒット商品となる。メーカー退社後独立し、早稲田大学アントレプレナーシップセンターや公的インキュベーション施設などでの起業相談、経営相談に従事し、研究者や学生、研究開発型企業の経営者、スタートアップ企業の経営者との面談に年間延べ100件以上対応している。2020年からはNEDO NEP事業のカタライザーとして、研究シーズの事業化支援にも従事。 また、2015年より現在まで埼玉県本庄市での「ゼロから始める創業スクール」の講師として、プログラム検討・講義・ビジネスプランへのフィードバックを担当し、起業を目指す方々をサポートしている。 中小企業診断士。修士(エネルギー科学/商学)。ユニコーンファーム社Startup Advisor Academy認定スタートアップアドバイザー。専修大学経営学部兼任講師(「デザインと経営」)。

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