増田 雅好先生インタビュー(TAMAプランコンサルタント)

増田 雅好先生(TAMAプランコンサルタント)インタビュー

「こんなこと聞いたら笑われるかな」という質問こそ、大歓迎!起業のことを最初からわかっている人なんて、一人もいません。ちょっとずつでも一緒に進めていきましょう。

増田 雅好先生

TOKYO創業ステーションTAMAの相談員にインタビューを行う本企画。第三弾はプランコンサルタントの増田先生をお招きしまして、プランコンサルティングについてインタビューしてみました!
起業を目指す悩める女性からのご相談と事業計画書策定支援を通して、多くの創業者、起業者を輩出してきた増田先生の相談極意を探ります!

― 現在のご自身の事業や手掛けられていることを教えてください。

 依頼内容で分けますと、中小企業へのコンサルティング(経営全般に関するアドバイス)と人材育成の2種類です。
 顧問先として継続的に支援させていただくか、単発でお願いされるか、いずれかです。

①中小企業のコンサルティング

 事業を拡大したいというご希望もあるが、最近多いのは二代目の事業継承。
二代目として事業承継をしていくとき、その業界の事情に詳しい方はそんなに多くはなく、まずは経営状態を確認します。実際には番頭さんがいてその社会が出来上がっているところに後から加わるため、閉塞感があります。二代目としてどういう風にやっていったらいいか、会社の環境、番頭さん対策、考え方、人材育成など、経営の周りや人材を含めて、考え方を全て変えていく必要があり、お金の話だけではなく、社長になる前のことがもっと大事になってきます。

②講師業

 社会人階層別研修と就労支援をやっています。
割合としては、大学での社会人対象のものが1/3、自治体は2/3くらいですかね。
大学側は目指すレベルやゴールが明確になっているが、自治体はゴールが不明確なのが課題だと思います。
相談者の中で美容業界の人がいれば、美容業界の相談もしています。

― これまでの経歴を教えてください。

 美容業界でプレーヤーとして6,7年働いた後、管理者(マネジメント)になったので、会社サイドからものを見ることができました。それが起業するときに役に立ちましたね。プレーヤーと経営者の視点は全然違います。

 また、過去の営業経験を基に美容業界のマーケティング相談にお答えしています。
20代前半は広告代理店に向けて、カメラマンを紹介する仕事をしました。
 広告代理店では色んな広告展開をしていく中でどういうスタッフがいたらいいか、そしてどんなカメラマンを持っていったらいいかということを広告代理店、デザイン会社の方にご紹介していました。クリエイターが200~300人いるようなデザイン会社に行き、カメラマンが撮影した写真を色々見せながら事前仕込みをしておくと、何か案件があるときに、あのカメラマン使いたいなと引き合いが出てきます。その時のために日頃から情報収集等を行う「ルートセールス」のような仕事です。広告代理店と制作会社に写真を見せて、車やファッションなど、ニュアンスやトーンなど、クリエイティブにあった提案型営業を心がけていました。

増田 雅好先生

― 起業相談での得意分野は?

 美容系、生活関連サービスの、特に目に見えないサービス系が得意です。
特に美容系、サービス系の方で多いのですが、技術を身に着けると売れると思っている方が多い。それは違います。勉強をして技術を極めようと頑張るのでなく、まずは「お客様を見ること」が重要。そこの思い込みが大きいんです。製造業がいいものを作れば売れるという神話と同じ。お客様は上手いか下手かはわかる。下手では困るけど、上手いだけでお客様は選ぶのかということです。

 ここはスペックだけでは見えない部分です。ということはお客様が何を望んでいるか聞きださなきゃいけないということ。ちゃんとそこを聞いて、的確に提供できるといいのですが、それがちぐはぐになってしまうと、どんなにいいものでもちょっと違う、という話になります。
 ここの違いが製造業とサービス業との大きな違い。お金をそんなに払いたくない人もいれば、これに関してはもっと出してもいいという人もいます。サービス業は技術だけでなく、お客様のニーズと価格の設定がきちんとマッチしているかどうかが特に重要です。顧客ニーズと価格設定の掛け違いが多いかと。営業時間やサービスの内容、価格など、お客様に見えるように、聞かれる前に明確にしてあげるとお客様も選びやすいと思います。

 性別による特徴のようなものでいくと、男性は今まで働いてきた業界の延長線上で起業する方が多いです。反対に女性はこれから新しく始める方が多く、社会やお客様のニーズをとらえていないことが多いので、余計に自分の技術を高める方向に走る方が多いです。リサーチをきちんとすること。お客様の気持ちで最低5社は自分の足で行き、実際にサービスを受けてお客様として体験することが大事です。

― これまでの相談で印象に残っている相談内容があれば教えてください。

 化粧品の製造をやりたいという方がいて、通算30回以上いらっしゃいました。
OEM先の選定が難航しましたが、現在、実際に材料を輸入されて試作品を作られ、売るというところまで進んでいらっしゃいます。

 その方は、元々観光業でお客さんに色々なところをご紹介するお仕事をされていましたが、コロナで特に外国人が全く入ってこなくなったため、前々から思っていた仕事を形にすることに。事業内容は、一番品質の良いバラを使ったローズウォーターを海外に向けて、日本製としてドバイで販売する計画です。
 ご自身でOEM先を見つけて、そこの社長とお話をして契約を取ってこられました。その方はアドバイスをしたら必ずやってみる。ダメだったらその次をやってみる。とにかく行動力がある方です。色んな壁にぶち当たるけれど、そのたびに質問の嵐。これはどうだろう?と相手に聞いて話をして持ってくる。最終的にはテストマーケティングまで行って、製品までできている。

 また素晴らしいのは、起業に向かうマインドです。絶対に自分はできると思っていらっしゃる。変な自信でなく、絶対自分はできるという軸をもっているので、できないという話は一回もされない。できるということでしか話をしないのですごく早いです。
 この金額では安いというアドバイスをしたとき、「他でもちゃんと売ってもらうことを考えて、その人たちにもマージンを出すことを考えると、手取りがこれだけしか残らないので、もっと高い価格で売るか原材料を下げないとダメ。」と説明すると、話しているときはなかなかピンと来ない様子でした。その方自身が進めていくと現実が分かってきて「やっぱり駄目だね。」と方向転換していく。
 行動量と、自分はできるという気持ちが大事です。

― 起業相談の際に心掛けていることは?

 女性の場合、ライフステージごとに変わります。子どもから手が離れたのでこれからどうしようかという方もいるし、せっかく身に着けた技術を生かしたいという方もいますが、皆さん共通して言えるのはここに来て「背中を押してもらいたい」という女性の相談者さんが多いこと。
 今こういう風に思っているというところから、行動につなげる、一歩でも二歩でもまずアクションに向かせるというような背中の押し方をしています。具体的には、背中を押して、こういうことをやってねと宿題を出します。私は相談者の方から「スパルタチック」と言われているんです。(笑)

 自己肯定感を高めて、できるという気持ちを前に向けて背中を押す。やり方がわからない方にはこれをやるとここまで見えるよねと、少し先を見せてあげる。だからコレをやってきてねという風に言うと、そうかそういう風にやればいいんだと。この道はこう行けばいいんじゃないと示してあげます。これだったらできそうと思ってもらえれば自分で進んでくれるんです。

 女性は抽象的でなく、より具体的なアドバイスをする=宿題を出すように心がけています。
ビジネス用語を言ったときに、伝わっているのかどうか?特に女性はイメージがしづらいようです。社会経験の長さがそこを物語っているんでしょうね。なんとなく男性と女性の違いかなと思います。

増田 雅好先生

― 起業相談の前に準備しておいたほうがよいことは?

 自分の棚卸しですね。自分の強みの棚卸しと言っているが、それをできるだけやって欲しいです。
過去の自分と比べるのはいいが、人と比べるのはダメです。女性起業家というとキラキラしている方が多いイメージがありますが、そういう人と自分を比べたらダメです。
そうではなく、過去やってきたことの積み重ねで現在があるので、今まで何をやってきたのかと、できていること、できないことをしっかり区別していくという意味でも「自分と比べる、自分を見る」ことが大事です。

 私も実際に起業するまで、2年はかかっています。1回仕事を辞めてからすぐやったが、小さく失敗しています。これではダメだな、もう一回「起業」を知らないとダメだと思い、創業セミナーに2ヶ所に行きました。
会社のルールは知っていても、起業のルールを知らないとダメなんです。会社の延長戦上では失敗するということがよくわかりました。よく言われるのは、「会社勤めの鎧は、おろさなきゃいけない。前の看板は捨ててくる。」この言葉には大いに共感し「腹落ち」しました。

― 起業相談をしようか迷っている方へのメッセージ

 「こんな質問したら恥ずかしいと思っている質問」を、ぜひ尋ねて欲しいです。
誰でもが通る道だから「こんな質問したら恥ずかしいから行けない」という心配は全くいりません。
男性は割と質問を用意して相談にきますが、女性起業は逆にそこまで来るのに道のりが遠いので、「こんな質問したら恥ずかしい」ということを思わないで来て欲しいです。プランコンサルティングは、それでOKな場所だということをぜひ言いたいです。そして、相談に来た人に「ああよかった」と帰ってもらいたい。
「あ、そうか、こうやればいいんだな。」っていうことがわかったとか、今日は相談して、ここまでやればうまくいきそうな感じがするとか。今日相談に来て良かった、次の一歩が見えてきた、そういう気持ちになってもらいたい。
 最初からできる人がいたら、プランコンサルティングなんて必要ありません。前を向いて一緒に進んでいきましょう!

略歴・相談情報

増田 雅好

増田 雅好(ますだ まさこ)
TOKYO創業ステーションTAMA プランコンサルタント
月曜日 10:00~17:00担当


全国展開する美容系企業にてマーケティングに従事。チラシ、Webなどを活用した集客、顧客管理、販売促進、新店舗の立ち上げの経験豊富。独立後、起業セミナー講師、起業相談を通じ400人以上の起業に関わり、起業準備から成長の過程で直面する課題に寄り添い支援する。特に、女性の起業希望者の支援実績を豊富に有している。中小企業診断士。


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著者:TOKYO創業ステーションTAMA Planning Port 事務局 土門 洋子
公益財団法人東京都中小企業振興公社入社、通算25年程。事務局の小野と同世代の子どもが2名いる。 設備支援、販路開拓支援等の業務を経て、2020年7月の開所からTOKYO創業ステーションTAMA Planning Port 事務局に着任。