吉野 太佳子先生(TAMA専門相談員 デザイン・ブランディング担当)インタビュー

吉野 太佳子先生インタビュー(TAMA専門相談員 デザイン・ブランディング担当)

吉野 太佳子先生

こんにちは!TOKYO創業ステーションTAMAの相談員にインタビューを行う本企画、第6弾はデザイン・ブランディング相談の吉野先生をお招きしまして、インタビューしてみました!今回は「Webデザインとは?」というテーマで吉野先生の相談極意に迫ります!

― 現在のご自身の事業や手掛けられていることを教えてください。

二つの事業を行っています。
会社はそれぞれ別会社で、ひとつは私自身が行っているコンサルティング事業、もう一つは、役員という立場でデジタル人材育成の事業です。
主たる事業は中小企業向けのコンサルティング事業で、経営支援に携わっています。
経営戦略や事業計画策定等の全般ではありますが、Web関連の仕事が長かったためか、Webに関する戦略的なところや、Web制作、Web広告等の実践的な支援をさせていただくことが多くなっています。企業の方針によって異なりますが、販売促進のためのWebサイト運用やECサイト強化ということに加え、事業のあり方として企業ブランディングのための価値創造など多岐に渡っています。
最近は、これまでWebマーケティングの実務を外注してきた企業が、内製化を進めるケースが増えており、運用のための社内の体制づくりも支援しています。背景として最近よく耳にするリスキリング(新たにスキルを身につけること)が影響していると感じており、新型コロナ感染症拡大以降、自走できる組織を目指す企業が増えています。仕事は、公的機関や金融機関を通じて、また個別にお話しをいただくこともあり、年間約2〜300社の中小企業を支援させていただいています。

デジタル人材育成については、デジタルマーケティング関連を含むITスキル全般です。企業の生産性向上に向けたデジタル人材育成を長期的な視点で計画的に実施させていただいています。私が講師として登壇するケースもありますが、基本的には会社の経営に携わっています。

吉野先生

吉野先生の相談を無料で受けることができます
(毎週火曜日10時~17時担当・1回45分以内)

― これまでの経歴を教えてください。

芸大でデザインを学び、その後、経営に興味を持ち大学院でMBAを修了しました。
新卒時は大手不動産会社に就職し、配属先の大阪支店で、宣伝部としてマンションの商品企画を担当しました。調達した土地にどのようなマンションを建てて販売をするのか、市場調査を行い、収益性も含めて企画を作る、いわばマーケティングの仕事です。当時はバブル期であったため、高級マンションが多く販売されていましたが、ファミリー向け等の物件に関わりました。
結婚・妊娠を契機に退職し、出産後は子育てをしながら不動産の市場調査の仕事を開始しました。その一方で世の中は、インターネットが普及し始めたところでした。日本に居ながらにして、パリコレ等の情報がいち早く手に入ると友人から聞き、興味を持ったことをキッカケに、Webデザインを独学で学び始めました。しかし少し早すぎたのか、Webデザインを学ぶための情報がとにかく乏しく、独学は諦めてマルチメディアスクールに通いました。
スクール卒業後は、Web系のベンチャー企業にてインターンシップを経験しましたが、子育てのことを考え、個人事業主として開業しました。スクールに通ったことで専門家の方々とネットワークができ、仕事の紹介をいただけました。本やネットでは得られない情報を提供いただけるなど、学ぶ環境も整っており、Webデザインの仕事に就くことができました。ちょうどこの頃、Googleが日本で検索サービスを開始したという時代でした。

吉野先生

対面・電話の他、オンライン(zoom)でも気軽に相談できます

はじめて携わったWebデザインの案件は、神戸のファッションビル一棟まるごとECサイト構築、という壮大なものでした。当時は「ネットでモノを買うなんて信じられない!」そのような時代でした。実際に商品を購入するためには銀行振込が必要で、今思えばプロモーションの意味合いが大きく、ブランディングの一環としての取り組みでしたね(笑)。
その後、ポータルサイトの運営やケーブルTVの動画制作などに携わる機会をいただきましたが、大手商社系のマーケティング会社でブランディング業務の話をいただけたことをキッカケに、再び企業で働くことを選択しました。子供の成長に伴って外で働ける環境が整ったこと、年齢的にもまだまだ経験を積む必要性を感じたことが理由です。
そこでの業務は、ブランドライセンス事業の運営でした。ブランドを磨きあげて、アパレルをはじめとする多様なメーカーに貸し出して、収益を得る事業です。貸し出したブランドが、メーカーに手によって、魅力ある世界観を維持・創造できているかどうか、そのためのマネジメントを行う仕事です。具体的には、ブランドアイデンティティに加えて、春夏(SS)秋冬(AW)と年に2回、トレンドを踏まえた情報発信を行い、商品のデザインを管理します。ファミリーブランドを含め契約先のメーカーは約80社、ブランドイメージの統制を図りつつ、契約や売上の管理を行う仕事でした。とても楽しい仕事でしたが、会社自体が東京に本社を移転することになり、子供がいたので地元に残るため転職しました。

その際、取引先の企業のなかで、ものすごく企業文化が素晴らしいと思っていた会社のひとつにナショナル自転車(パナソニックグループ)がありました。パナソニックっていい会社だなぁと思っていたので、パナソニックのグループ企業に就職し、パナソニックの本社に勤務することになりました。そこはこれまでの経験にはない規模の大きな組織で、内部の仕事としてWeb推進、働き方改革、オフィス改革を担当させていただくと同時に経営に興味を持つようになりました。約11年お世話になった後、中小企業診断士として独立しました。

吉野先生

TOKYO創業ステーションTAMA・業種別セミナー
Webサイト制作・Webデザイナーで独立・創業を考えたら…
『価格競争に巻き込まれないための戦略的ビジネス思考』を身につけよう!
」登壇(2022/07/21)

― 「デザイン」相談について教えてください。

中小企業のWeb支援を行う中で、企業のWebデザインへの意識が非常に弱い点が気になっていたことが背景にありました。そうした中、TOKYO創業ステーションTAMAで新たにWeb「デザイン相談」を設置するということを知り、迷わず手を挙げさせていただきました。Webに関する「デザイン相談」自体、支援機関にないのが現状でしたので、非常に画期的と感じました。
「デザイン」とは何か、非常に分かりづらいものです。広義には経営デザイン等にあるように設計等が含まれ、また狭義にはWebデザイン、商品デザイン、パッケージデザイン等々、いろいろな考えがあります。そうした中でデザインに関する話を聞いていますと、「アート」と「デザイン」を混乱されているケースが多いと感じています。私が考える、「アート」は「自己表現」であり、「デザイン」は「他者(への)表現」です。Webマーケティングの世界で考えると、お客様にどう感じて、どう動いてもらうか、それを「デザイン」で実現する、いわば「機能」としての役割です。簡単にいえば、お客様にとって「わかりやすさ」だと考えています。
たとえば、百貨店に行ったときに、お手洗いはどこかなと思った時、「トイレ表示」を見て、すぐにどちらの方向に行けばよいか、わかりやすく表示されています。図形や色を使って表現されている、それも「デザイン」のひとつです。また文字情報であっても、使用するフォントや色で印象をコントロールすることができます。そしてWebサイトを訪れた瞬間に、何の会社なのか考えなくてもすぐに理解できることで、魅力と映ります。それを実現するのが「デザイン」であり、デザインが生み出す「機能」です。
逆に、何かよくわからない、という印象を与えてしまうと、人は理解すること自体を避けてしまいます。Webサイトも対人と同じで第一印象が大事ということです。
そしてそうしたお客様の判断を知ることができるのが、Webサイトの魅力です。Webサイトを訪れたお客様の姿は見えませんが、行動は把握できるので、改善が必要かどうか判断できるのです。つまり、Webテクノロジーによって、デザインを客観的に評価することができるのです。

吉野先生

「アート」は「自己表現」、
「デザイン」は「他者(への)表現」

― これまでの相談内容について教えてください。

様々なケースがありますが、典型的なものを紹介させていただきます。
企業で現場経験を積んだベテランの女性が、経営コンサルタントとして起業の準備をしているという方がご相談にいらっしゃいました。
Webサイト構築にあたり、制作会社から、「女性らしく(?)ピンクっぽい、柔らかい印象のウェブサイトを」と提案されたとのことでしたが、今ひとつ決めきれない、というご相談でした。その方のターゲットは男性経営者。「お客様から、どんな風にみられたいのか、相手から見た時にどう思われたいのか」という問いに、「落ち着いたイメージで見ていただきたい」と、ご自身の考えるイメージが湧き出てきました。そうすると、「安心安定感のある冷静な色が良いのではないか」、また「経営コンサルタントという職業柄、とくに信頼されやすさが必要」という話をさせていただき、色味を変更することとなりました。選択する色だけで人に与える印象が大きく変わります。そうした「機能」を上手く活用することをアドバイスさせていただきました。
他には、ロゴはこうしたい、Webサイトはこうしたい、いろいろな考えをお持ちの方がいらっしゃいました。
デザインの「機能」のひとつとして、いかに覚えていただけるかも重要で、ブランディングの知識でもあります。記憶していただきやすいロゴや、デザインで、そしてそれが統一感を持たせることはとても重要です。Webサイト、名刺、チラシ、店舗設計を、1つのイメージとして繋げることで、お客様にとって、親しみや愛着といった感情に結びつけていく、そうしたデザイン戦略を考えることが大事であることをアドバイスさせていただきました。

吉野先生

何を相談していいのかわからない、大丈夫です!
気軽に、デザイン相談を利用してみてください。

― 相談の前に準備しておいたほうがよいことはありますか。

事業のコンセプト「誰に、何を、どのように」が自分なりに整理されていると、理想的ですね。そこに、強みが具体的に含まれていると尚よいです。しかしそうした相談は稀で、話をする中で頭が整理されていきます。そこを私のほうで見落とすことなく、Webデザイン戦略に落とし込んでいく支援をさせていただいています。
また、Webテクノロジーを利用する手段をご存知でない方も多いため、どのようなことができるのかを紹介させていただいています。できることがわかれば、手段も違ってきますので。
例えば、販路開拓のための広告あり方も、今までの折り込みチラシやDMとかとは、まったく考え方が違います。Webアドテクノロジーを使った広告により、ターゲットを容易に絞り込むことができます。そうした特性を活かした取り組みが重要であり、有効ですので、ぜひとも知っていただきたいですね。

― 相談するか迷われている方へのメッセージはありますか。

相談する際に、相談の内容を書かなければいけなかったりすると思いますが、何を相談していいのかわからない、という方も多いことと思いますし、むしろそれが素直な意見だと思っています。わかっていたら相談しに来ないでしょうし、自分で調べることもできますのでね。何を相談していいのかわからない、その状態で相談に来ていただいて大丈夫です!気軽に、デザイン相談を利用してみてください。

相談員紹介

相談員紹介TOKYO創業ステーションTAMA
専門相談員(デザイン・ブランディング担当)
吉野 太佳子(よしの たかこ)


1996年〜Web事業に携わり、Webブランディング専門家として、年間200社以上を支援する。京都芸術短期大学 造形芸術学科 インテリアデザイン学部 卒業、明治大学大学院 経営学研究科 修了。大手不動産会社、大手総合商社ブランディングコンサル会社、大手電器メーカー IT・Webシステム会社を経て、2015年に独立。中小企業庁が設置する経営相談所サブチーフコーディネーター、東京都中小企業振興公社 デジタルマーケティング・営業のDXサポートプログラム デジタルマーケティングアドバイザー、Webブランディングの(株)アイコンテンツ 代表取締役、デジタル人材育成の(株)アイクラウド 取締役。

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著者写真著者:TOKYO創業ステーションTAMA Planning Port 事務局 村岸 伸樹

食品メーカーにて法人営業、監査業務に従事。
2022年4月に公益財団法人東京都中小企業振興公社に入社し、TOKYO創業ステーションTAMA Planning Port 事務局に着任。

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