わたしの創業ものがたり　
合同会社３．１４　編

上野動物園や葛西臨海水族園などで、生き物を描いたオリジナルの扇子を見たことはありませんか？デザインして、商品を作っているのは、2017年12月に創業したばかりの2人組。扇子の製作会社から独立して、現在はデザイン会社として広くものづくりに携わっています。そのものづくりの信念と楽しく働く姿に多くの人が魅力を感じ、いま順調に仕事が舞い込んでいます。

得意先との仕事を続けるために

髙橋

私はデザイナーとして、中村はイラストレーターとして扇子を作る会社で働いていたのですが、私たちが開拓した市場から会社が撤退することになり、退社して一緒に創業しました。取引先にあいさつに行くと、「会社を作って、今後も一緒にやろう」と言ってもらえたことが、後押しになりました。

創業当初から取引先のある恵まれた状況でしたが、中村のイラストがお客様に好評だったことから、季節物の扇子だけでなくグラフィックデザイン会社として広くスタートしました。おかげでひとつの図案から複数アイテムの注文が入るようになり、仕事はたくさんいただいています。日本だけではなく中国や韓国にも提携の工場があるので、すべてをまとめて、デザインから製造、パッケージングを請け負うこともできます。

ストーリーのある物づくりを楽しむ

中村

東都生活協同組合さんの紙袋のデザインは、創業後初めての図案の仕事だったこともあり、計７案も提案した中から選んでいただきました。会社勤めと違って、いまはすべてが自分自身の仕事という気持ちがあり、やりがいを感じます。大変なこともありますが、楽しく絵を描いています。

髙橋

私たちはそれを持ったとき、人に話したくなるようなプラスアルファのものづくりをしています。例えば（公財）東京動物園協会さんとの仕事で作った上野動物園の扇子には、パンダ柄は黒い部分に、ハシビロコウ柄は背景に、小紋の模様が入っています。近くで見ないと気付かない程度のものですが、外国からの観光客の方も購入するので日本らしさを加えました。

いまは自然素材を使って、地球環境にまつわるストーリーを加えた新しい商品の企画を考えているところです。

自分に見えない点を指摘してもらい相談できる相手がいる安心感

髙橋

創業を考え始めた頃に下調べをしようと渋谷区役所に出向きました。そこで東京開業ワンストップセンターを紹介され、ＴＯＫＹＯ創業ステーションのことを知ってプランコンサルティングを受けることにしました。担当プランコンサルタントには、親身になって相談にのってもらい、苦しむことなく事業計画書が完成しました。

創業するにあたっては自分では見えない点が多々あり、客観的な目で指摘してもらえる相談相手が一人いるだけでも、とても助かります。私は10回以上プランコンサルティングを受けて、さらには専門相談で司法書士の方に指導してもらったり、融資相談も利用したり、ＴＯＫＹＯ創業ステーションにはたくさんお世話になりました。

なにより楽しく作ることを大切に

髙橋

新しい案件の注文が増えていますが、製造は外部に委託しても出荷するまでの作業は２人でこなしているので、夜遅くまで作業に追われる状態です（苦笑）。そろそろ限界を感じてます。

中村

パンダのチャームが大人気で、ひと晩かけて１０００個近くを検品しながら袋詰めしたこともありました。自分たちで詰めたらこれだけ稼げるからと思って作業をしていますが、時給で換算すると微々たる金額です（笑）。

髙橋

袋詰め作業も楽しいけれど、ゆとりがないと新しい物が作れないので、人員を増やすことは考えています。それから、これまで固定費を抑えるために自宅ですべて作業をしてきましたが、在庫置き場や検品などもできる事務所兼作業場を探しているところです。

中村

ただ、この先も作ることを大事にしたい。ムリして合わない相手とお付き合いして会社を大きくするより、楽しく仕事ができるお客様とどんどん良い物を作っていきたいですね。また、ペンギンをモチーフとした３．１４のオリジナルキャラクター「もこぺん」シリーズの新商品も作っていきたいと思います。

髙橋

確かにかっこいいもの、かわいいものを作ることがなによりの基本です。やりたいことをよく言葉にしているから、賛同してくれる人があつまり新しい仕事につながっています。出会いに恵まれた環境に感謝しています。

創業を目指す方へ～応援メッセージ～

髙橋

創業して多くの方が廃業しているとよく聞きます。計画が甘かったり、自分のエゴで運営したりではダメなのでしょう。そうならないために、プランコンサルティングなどを活用して相談役の助けを借りるといいと思います。信頼の置ける人に初めから自分と逆の立場で状況を見てもらっていれば、なにか指摘を受けたときに受け止めて、柔軟に対応できるのではと思います。

失敗例も聞いて、それを反面教師として自分でもっていたら、進むだけでなく危ないと気付いて立ち止まることもできるでしょう。何もかも願ったとおりを実現しようと思えば、ムリが生じて失敗すると思います。自分たちは、ものづくりの譲れない点以外、格好や体裁は気にしません。

それから具体的な話ですが、創業の際に銀行の口座を作るのに時間がかかって、自分たちは2ヶ月近く要しました。先を見越して計画的に手続きを始めておかないと、せっかく注文が入っても先払いしてもらえず、商機を逃すハメになりかねないので気をつけて下さいね。

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