わたしの創業ものがたり
ユーバー株式会社 編
IoT やAI（人工知能）の進化が進み、「第４次産業革命」を迎えているといわれる今、子どもたちが生きていくために必要な力とは？―その１つが「プログラミング的思考力」といわれ、2020 年度から小学校でプログラミング教育が必修化されます。ユーバーでは楽しく身につく、プログラミング教育サービスをいち早く展開し、注目されています。
COMPANY INFORMATION
ユーバー株式会社
東京都千代田区九段南1-5-6 りそな九段ビル5F
子ども向けプログラミングスクールの運営、教育用コンテンツ開発・販売
2017年4月設立
https://www.yuber.jp/
代表取締役／中村里香（なかむら りか）
サポートエンジニア、プロジェクト管理者として四半世紀以上をICTの教育の現場で過ごす。2017年４月、ユーバー株式会社を設立。著書に『遊びながら楽しく学ぶ！ 小学生のScratchプログラミング』（ナツメ社）ほか。
誰にでも「プログラミング的思考力」が必要な時代
創業しようと思ったきっかけは、一つ目に「これからの時代にはプログラミング的思考力が大事になるのに学ぶ機会に格差がある」という現実に問題を感じていたこと、二つ目に「自分が会社員を続けることにはリスクもある」と感じていたことがあります。
まず、プログラミング的思考力というのは、情報を整理して論理的にものごとを考え、創造的に、的確な指示ができる能力のことです。これはＡＩ（人工知能）やＩｏＴ（Internet of Things）といった技術革新が進んだこれからの時代には、エンジニアなどだけではなく、誰にでも必要な力だといわれています。
その重要性は、２０２０年度から小学校で「プログラミング教育」が必修化されることからも明らかなのですが、実際には子どもが体系的にしっかり学べる教材もスクールもあまりありません。あっても、授業料が高く、経済的な負担が大きかったりします。
そうした現状を知るにつれ、もともと教育に関心があったこともあり、私自身も小学生の息子を持つ母親として、「子どもたちが等しく、無理なく、そして楽しく本格的なプログラミング的思考力を身につける機会を提供したい」と思うようになりました。そこで、長年、企業でＩＣＴ（情報通信技術）の現場に身を置き、エンジニアやインストラクタ、 管理者などをしてきた経験を生かして、２０１７年に会社を設立したのです。
当社のプログラミングスクールの授業料は大手スクールの約半額ですが、クオリティの高さは抜きんでていると自負しています。実際、子どもたち自身が企画し、制作した作品が「デジタルえほんアワード キッズ賞」（国際デジタルえほんフェア実行委員会主催）で２年連続受賞するなど、高い実績を上げています。
独立を考えたもうひとつの理由についてですが、当時勤めていた大手企業では役職定年が55歳だったことです。すでに50歳を目前にしていたので、その先の人生を考えると、「決断するならそろそろだ」という思いがありました。
順調なスタートの秘訣は創業前の準備にあり
創業への熱い思いはあったものの、準備は慎重に進めました。まず、創業前の１年間はテストマーケティングを兼ねて、無料で親子向けプログラミングワークショップを週末に開催しました。結果的に延べ５００名が参加し、その98％が「楽しい」「また参加したい」といった好意的な回答を寄せてくれたのです。
そこで２０１６年11月に退職。翌年４月には教室をスタートさせたいと思い、物件を探し始めたのですが、「子どもは騒がしい」といった理由や私に信用がないことなどから断られ続けてしまったのです。困り果てて、東京都の創業支援窓口ＴＯＫＹＯ創業ステーションを訪ねたのが２月のことでした。
これが結果的に本当によかった、自分にとって幸運だったと思うのは、総力を挙げて創業をバックアップしてくれる体制が整っていることでした。物件探しだけでなく、事業計画や法人登記、経理のことまで何でも相談できましたし、担当プランコンサルタントだけでなく、適宜、司法書士や税理士の方にもつなげてもらい、アドバイスを受けられたのです。当時教わったことは今も、実務で非常に役立っています。
そこから創業まではあっという間でした。３月にはオフィスも見つかり、４月には会社を設立して教室をスタート。８月には創業助成事業にも採択されました。
プランコンサルタントには精神的にも支えていただきました。「うまく行き始めたときほど危ない」、「まわりへの感謝を忘れずに」などハッとするひと言を言われることがあったのですが、そのタイミングが絶妙で、さすが数多くの起業支援をしてきた方だと思いました。
良質なプログラミング教育を日本全国へ
今後は教材やカリキュラムを提供したり出張講座を開いたりすることで、全国に本格的な子ども向けプログラミング教育を広げていきたいと思っています。
また、講師の育成講座も増やして、教室を開きたい方や学校の先生方のサポートをしたり、そうしたサービスを提供する企業と連携したりしていきたいですね。
創業を目指す方へ～応援メッセージ～
今振り返ると、会社員時代、いつも心のどこかに「いつかチャレンジする側に行きたい」という思いがありました。「それが今だ」と思い、創業を決断したのが2016 年です。2020 年には小学校でプログラミング教育が必修化されるとわかっていたので、自分のやりたいこと、業態を始めるには、逆算すると「今しかない」と考えたのです。
起業を実現し、軌道に乗せるためには、機が熟したときに一気に行くことが大切ですが、そのためにはしっかりとした準備が欠かせません。私たちも創業前１年間は無料でワークショップを開き、開発した教材やカリキュラムの効果、顧客の反応などを見ながら計画を練りました。
前職時代にできるだけ資金を貯めること、人の助けを借りることも大切です。私たちも多くの友人知人、プランコンサルタントを始めとするTOKYO 創業ステーションの方々に助けてもらいました。プランコンサルタントの「何でも相談してください」という言葉どおり相談させてもらったことが、結果的に素早い創業につながったと思います。頑張ってください！
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