わたしの創業ものがたり　
株式会社家撮り部　編

-きっかけ-
創業という道しかこのサービスを残すことができなかった

「家撮り部」では、工務店さんやリフォーム会社さんが自社サイトなどで紹介する「施工写真」を撮影しています。ただし、基本的にプロのカメラマンが撮るのではなく、建築や写真を勉強している学生やアマチュアのカメラマンにより撮影するのが大きな特徴です。アマチュアのカメラマンは建築写真に興味があっても、なかなか実際の家を撮る機会がありません。一方、工務店さんなどは、自社の施工写真を撮影するのに大きいコストを捻出してプロのカメラマンに依頼するしかなく、現実的には、クオリティ面を妥協して自分たちで撮っている場合が多いようです。その間を埋めるサービスで、両者の想いをリンクさせた形が「家撮り部」。アマチュアのカメラマンは謝礼をもらいながら建築写真を勉強できて、工務店さんは安価で質の高い写真を得られるわけです。建築写真に特化しているサービスは他にもありますが、アマチュアカメラマンでの撮影システムは「家撮り部」だけのものです。

実は、「家撮り部」のサービスのベースは、創業前に在籍していた会社で、私が立ち上げ、セールスから運営まで行っていたという経緯があります。しかし、会社そのものが別会社に営業譲渡することが決まって「家撮り部」が消滅する可能性が高くなりました。自分が生み育てたサービスに「強い思い」がありましたので、MBO（マネジメント・バイアウト：事業部門統括者が当該事業部門を事業譲渡されるなどして独立すること）により引継ぎ、起業して運営する道を選択したのです。

-準備-
不透明だった部分をズバリ指摘してくれたプランコンサルティング

事業を受け継ぐ形での、いきなりの起業だったため、当初は資金繰りなどに悩んでいました。そこで、色々と調べてみると、東京都が創業者向けに様々な支援をしていることを知り、TOKYO創業ステーションへ相談に行きました。融資についての相談に素早く対応していただき、プランコンサルティングでは、まだ掘り下げていない部分を的確にダメ出しされました。ダメ出しと言っても、親身になって細かく事業内容を見てくれている証拠で、それが非常に嬉しかったことを鮮明に憶えています。「向かっていく方向は間違っていない」ということを、指標を示しながら裏付けしていただき、さらに強みと弱みを客観的に見てもらったことで、それまでの悩みが一挙に吹き飛んだ気がしました。また、人材を雇うときの雇用契約書や就業規則などを社会保険労務士に相談できたのも非常に助かりました。

-展望-
さらに付加価値の高いサービスを提供

今後は、建築写真を通じてより付加価値の高いサービスを事業化していく予定です。在籍している学生やアマチュアカメラマンには、講習会やワークショップを通じて撮影技術の向上を図ると同時に、建築写真の魅力を伝えることに力を入れています。また、「家撮り部」と並行してプロカメラマンによる建築写真サービス「ふぉとり住む」も立ち上げました。さらに、工務店からのリクエストが増えている動画撮影やフォトブック制作などもオプションサービスとして始めていますし、工務店のコンサルタント業務もスタートしました。ビジネスプランが沢山ありすぎて、優先順位をつけるのが大変です。

私の場合は色々な要因が重なり、とても悩みながらの創業でした。サラリーマン時代とは異なり、創業するということは全てが自己責任となり精神的にも苦痛なこともありましたが、全く後悔はしていません。営業、事務処理、カメラマンの面接や教育、新企画の立案など、やらなければならないことは山ほどあります。でも、もし、創業せずにあのまま会社勤めを続けていたらと考えるとゾッとします。いま、毎日がとても楽しいです。