わたしの創業ものがたり
株式会社FREA
COMPANY INFORMATION
株式会社FREA
代表者名/山川 奈々
東京都千代田区麹町2- 6-10 麹町フラッツ 4C
中所得者層の外国人に特化した不動産仲介サービス及び付随業務
2015年9月創業
https://tokyo-apartments.jp/jp/service/
—中所得者層の外国人に特化した不動産の仲介業をされていますが、業務内容にはどのような特徴があるでしょうか?
都内の定住外国人は、この数年で10倍に急増したと言われています。ところが、企業による手厚いサポートや既存市場のあるエグゼクティブ層、若者向けのシェアハウス物件などが充実しているのとは対照的に、中所得層の物件探しは適切な仲介会社がほとんどなく、ハードルが高いものとなっておりました。その大きな壁となっていたのが、保証人、審査など日本の不動産業界特有の慣習、さらに言葉や各種書類取得の煩雑さによる手続き上の問題でした。たとえ優良企業の社員でも、外国人というだけで難色を示す貸主も少なくなかったのです。
当社はこうした不動産業界の状況に一石を投じ、来日を控えた外国人クライアントに対しては物件情報のほか、日本の特殊な不動産事情なども資料提供して、綿密な事前準備を行っています。来日後は物件の内覧から契約まで、またオプションとして電気や水道、携帯電話など生活インフラの整備、家具家電のリースなど、外国語に堪能なスタッフによる全面的なサポート業務を行っています。
―起業された理由を教えてください。また、当初はどのようなご苦労があったのでしょうか?
不動産仲介会社でアルバイトをした際、前述の問題に直面した事がきっかけでした。力になりたくても他業者すらあてにならない現状に驚き、この需要に対して自分が何とかできれば……。そんな一心から、当社を創業しました。以前は証券会社でREIT という不動産投資信託を扱うことに関連して、業界知識を習得するために宅建を取得したことも、思い がけず役立つことになりました。
創業当時は文字通り手探りで、不動産管理会社に片っ端から電話をかけ続けるも、外国人の受け入れをOK してくれる業者は100件中3件といった有様でした。
そんな中でも諦めず、コツコツと続けてきたのが功を奏したのか、最近では管理会社からのアプローチにより、当社であれば外国人OK という紹介物件も増えてきています。空室率の増加に加え、急増する外国人市場を押さえたい業者の思惑もあったのでしょうか。外国人専門の先駆けとして当社の認知度が上昇するとともに、大手業者から声が掛かるようになったのは、大変ありがたい事だと感じています。
―外国人クライアントへの対応で難しさを感じる点や、工夫されている事はありますか?
日本人と比べて自己主張の強い方が多く、手間も根気も必要な場合もあります。賃貸契約に関わる段取りには状況に応じて臨機応変に対応したり、クライアントの希望に対しシビアな金額交渉が必要なこともありました。価値観の違いを認識し、精神的にもタフでいることが必要だと思います。
何より、当社の使命はクライアントの信頼を得て、その方にとってベストな物件を探すことです。そんな中で最近は口コミによるご紹介も増え、当社の業務を評価いただけたという自信にもつながっています。
―公社の創業助成事業を利用された事で、事業にはどのような変化がありましたか?
一人で創業した当時はとにかく忙しく、半年後に助成金をいただく事ができたのは抜群のタイミングでした。当社の業務には語学力、コミュニケーション能力が不可欠ですが、有能な人材に出会ったタイミングで迷わず採用できたのは、業務拡大の上でも、自分自身が安心して仕事をする上でも大きな転機になったと思います。
人件費のほかには広告費、賃借料で等分に使わせていただきました。これがなければ、自ら大きなリスクを負ってチャレンジすることは出来なかったと思います。
―創業直後から複数の賞を取られていますが、受賞後に変化した事はありますか?
創業から1年弱で、まず外国人向けに住宅情報を提供する「Real Estate Japan BEST AGENT AWARD」の第3位、続いて「女性起業チャレンジ制度」のグランプリをいただく事ができました。これらが弾みとなったのか、創業2年後には大手不動産会社が主催する「Corporate Accelerator Program」の特別賞を受賞しました。
日本で新生活を始める外国人と、不動産オーナー様が安心できる賃貸システムのプラットフォーム作りを目指して起業しましたが、地道に仕事をするだけで先が見えない日々に漠然とした不安を感じていたのも事実です。そんな時に客観的な評価をいただけた事が心強く、また同じ業界内へアピールできた効果もあって、新しいビジネスチャンスにつなげる事もできました。
―今後の課題や、将来的に目指されている事業展開について教えてください。
業務提携や投資などのお話をいただけるのは大変ありがたい事ですが、経営者としての基礎知識や相談相手が少なく、自分では判断がつきかねるのが目下の悩みです。
ただ私自身、新しいニーズを見つけて企画・発案する事には大きなやりがいを感じます。現在、当社はオフィスの賃貸業務も行っているのですが、そこから派生した業務が外国人への起業スタートアップ支援です。事業内容に魅力はあっても法的な要件が不足して諦めるケースを目の当たりにし、事務的な支援で貢献したいと考えたのです。こうした展開を視野に、インキュベーション・マネジャーの認定資格も取得して将来に備えている所です。
―これから創業を考えている方へ、ご自身の経験をふまえてメッセージをお願いいたします。
起業してわかったのですが、経営者は自分で判断すべきことが多く、常に悩みや不安と対峙している孤独な存在です。そういった意味で、私にとって起業とは自分がチャレンジすると決めたことに対して戦っていく側面が強いですが、起業した当初の信念を忘れず、ひたすらに努力し継続していれば、手を差し伸べて一緒に戦ってくれる人、また取り組んできてくれたことを評価してくれる人、いろんな人が起業信念を支えてくれることになるはずです。孤独な中にも光は差し、大きな学びや喜びとなって自分を成長させてくれると思いますよ。
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