わたしの創業ものがたり
FUNFAM 株式会社 編
COMPANY INFORMATION
FUNFAM 株式会社
代表者名/藤岡 康代
東京都西多摩郡檜原村本宿702-1
特許を取得した特殊木工技術による竹素材の幼児用食器の製造販売
2011年8月創業
https://www.funfam.jp/
—竹素材の子供用食器を製品化されていますが、その特徴についてお教えください。
当社がデザイン・開発を行う竹食器は、全てを国内の職人による手で製造したものです。竹が持つ自然な木目や節を活かしつつ、学校給食の食器にも使われる高品質のウレタン塗装を最新のテクノロジーも用いながら追究し、安心・安全なものづくりに挑戦し続けています。さらに人気キャラクターとのライセンス契約も積極的に行い、お子様の健やかな成長を願うお客様のニーズにお応えする中、最近は訪日外国人のインバウンド需要も急増しています。
人気キャラクターの絵柄入り商品も充実
—創業のきっかけとなった出来事とは?また、竹に着目されたのはなぜでしょうか?
以前は国際線のキャビンアテンダントをしていたのですが、結婚・出産を経て退職し、やがて子供のアレルギーに悩まされるようになりました。何とか治したい一心で厳しい食事制限を行いますが、折しも中国製メラミン食器に有害物質が含まれる事件などが報じられ、食の安全を根幹から見直す必要性を痛感したのです。
そこで着目したのが、夫の実家である家具製造メーカーが新規事業で取り扱っていた竹素材です。すぐれた抗菌性や強度を持つと知り、これで子供用食器を作れたら……。そんな母親としての思いが開発のきっかけでした。
さらに竹は成長がとても早く、放置すると他の植物を駆逐する“竹害(ちくがい)”となるため伐採が欠かせません。森林伐採と違って環境に悪影響がなく、資源として潤沢な事も、竹に可能性を感じた理由のひとつでした。
—独自のデザインで製品を開発される際にはどのようなご苦労がありましたか?
下町の職人さんに頼み込んでの試作から始まり、さらに子供モニターによるテストを経て2年ほど試行錯誤の末、最終形が完成しました。創業時は私自身がハンダゴテで焼き印を入れるなど、夢中で走り続けた日々でした。
やがてアイテム数も徐々に増えましたが、例えばお椀とカップでは、得意とされる職人さんも異なります。そのため全国各地の職人さんの元へ何度も足を運び、当社の想いに共感いただくことに、何より力を尽くしました。
—販路はどのように開拓されましたか?
当社の販売戦略は、出産祝いのギフト市場にターゲットを絞ったのが最大の特徴です。大きな契機が、大手百貨店のバイヤーに目を止めていただいた事でした。当時は食器自体のギフトも少なく、“竹のようにすくすく育つ”というイメージとともに、性別を問わず長く使え、名入れサービスがある事に目新しさもあったのか、従来の市場にひとつの風穴を開けられたような気がします。
もうひとつの転機が、当時、その開業で話題を集めた一流ホテルでの採用が決まったことです。外国人責任者による著書のサイン会を訪ねて直談判し、ご家族に贈った商品を気に入っていただけた事が功を奏しました。
いずれもポイントは、影響力のあるトップクラスのお取引先から狙いを定めた点にあります。上からの“シャワー効果”で商品のブランディングを高め、以後は先方からの引き合いによる好条件のお取引にも結び付きました。
洋食のテーブルマナーが身につくセット。一流ホテルでの採用実績も
—本社を東京都檜原村に移転されましたが、どのような経緯がありましたか? またその際、公社の創業助成事業をどう活用されましたか?
実はもともと商社勤務だった共同経営者の夫が、公社の専門家と懇意にさせていただいた事がきっかけです。古くは林業が盛んだった檜原村ですが、近年は少子高齢化が進み、人を集められる企業を誘致しているとの事でした。このお話を受け、東京にありながら自然豊かなこの地で、観光と一体化した新しい製造業の形にチャレンジすることを決意したのです。そこで元々は建材店だった物件を店舗兼ショールームとして改装し、さらに自社工場も併設するという事業に3カ月かけて取り組みました。大きな業態転換をするこの踏ん張り時に、家賃や新規雇用の人件費に対して公社の助成金をいただけた事は、とても心強いサポートだったと思います。
新設の自社工場には焼き印用のレーザーマシンを設置
—今後の事業展開やビジョンを教えてください。
過食やアレルギーの問題が言われる昨今、「食」は子供の健康な心と体を育むためにも不可欠なものです。ここ数年は百貨店やメーカーなどとタッグを組み、離乳食レシピを開発して料理教室などのイベントを開催するなど、食器と組み合わせた食育・ヘルスケア分野での活動にも力を入れています。ここ檜原村でも夏休み期間などを利用し、村の特産品を使って子供たちに食や自然への関心を持ってもらうためのワークショップなども企画中です。
—今後、海外展開のご予定はありますか?
海外への展示会へは年2回ほどのペースで出展し、まずはヨーロッパから世界市場への展開を考えています。現在はその足掛かりとしてドイツ支社の設立準備を進めながら、欧米ではなじみの少ない竹という素材にどう付加価値を付けられるかを検討中です。国ごとの嗜好性に合わせたプロモーション展開とともに、「Made in 東京」ブランドを世界に広げる戦略を立てていくつもりです。
—ご自身の経験をふまえ、これから創業を考えている方へのアドバイスをお願いします。
起業自体は簡単にできても、規模を拡大しすぎて足元をすくわれるケースを多数見てきました。先へ先へと進みたい気持ちはありますが、結局は目の前の事をコツコツと実直にやるのがいちばんです。私自身、不安や悔しい思いをすることもありましたが、共同経営者である夫という仲間と共に走り続け、何とか乗り切ってきました。思い悩む事があっても、苦しい時はいつまでも続く訳ではないと信じて、頑張り続けてほしいと思います。
現在は離乳食研究家としても活躍の場を広げる藤岡社長
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