わたしの創業ものがたり
ソナス株式会社 編

ソナス株式会社

ソナスは東京大学で省電力無線センサーネットワークの研究をしていたメンバーを中心にスタート。そこで開発した技術をもとに、IoT 向け無線通信プラットフォーム「UNISONet(ユニゾネット)」を用いたソリューションをさまざまな企業に提供しています。2018年にはシリーズAで総額3.5 億円を調達。海外進出も視野に入れ、今、急成長している注目の企業です。

COMPANY INFORMATION

ソナス株式会社(Sonas, Inc.)
東京都文京区本郷5-24-2 グレースイマスビル6F
センシングに関するハードウェア、ソフトウェア、サービスの企画、設計、製造 、販売
2015年11月設立
https://www.sonas.co.jp/



Co-Founder / CEO/大原壮太郎(おおはら そうたろう)
2010年東京大学大学院工学系研究科修了後、ソニー株式会社にて5年半、半導体開発に従事。東京大学先端科学技術研究センター勤務を経てソナス株式会社共同創業、代表取締役就任。




最先端の無線技術でIoTの世界に革新をもたらす


ソナスでは無線通信プラットフォーム「UNISONet(ユニゾネット)」を使ったソリューションを提供しています。現在の主な用途は、IoT(Internet of Things)による橋梁や発電所などのインフラ、ビル、工場の機械のモニタリングなどです。


UNISONetに組み込んだ技術は「常識を越える無線技術」と呼ばれることがあります。従来、無線通信が抱えてきた「トレードオフ」の課題を解決したからです。


IoTにはWi-Fi のような無線通信が欠かせませんが、従来、トレードオフの関係がついてまわるのが難点でした。つまり、「通信範囲や通信速度を上げると、電力消費量が上がってしまう」、「省電力にすると、通信範囲や通信速度が低下する」という問題があったのです。


この限界を超える技術を組み込んだのがUNISONetです。高い通信クオリティと同時に、乾電池で動作可能という優れた省電力性を備えています。しかも安価なので、たとえば水田の用水管理など、これまで採算上、検討されてこなかったような場面でも本格的なIoT導入が可能になり得ます。


こうした最先端の無線技術を提供している当社ですが、実は当初、私が創業を考えていたのは保育事業でした。


ソナス株式会社


紆余曲折を経て創業へ


そもそも創業を考え始めたきっかけは2015年、東大大学院を修了後、ソニーに入社して5年ほどたったころのことです。ソニーには新規事業を歓迎する社風があり、当時、社内ベンチャーを募っていました。誰でも事業計画を立てて社内選考を通れば、予算がついて実際に始められるというプロジェクトです。


当時の私は半導体エンジニアとして仕事にも慣れ、何か新しいことに挑戦したくなっていました。そこで、保育園事業にIoTを導入する計画を考え、提出してみることにしたのです。


事業計画を練るかたわら、モチベーションアップのために、週末は東京都中小企業振興公社(以下、公社)のTOKYO起業塾に通い始めました。これは今振り返ると、基本から実践的な知識まで、プロの講師からひととおり学べるうえ、人脈まで得られる貴重な機会でした。そこで一緒に学んだ何人かはその後、起業し、今も情報交換したり刺激し合ったりするいい仲間になっています。


計画が具体化するほど、次第に「いっそ独立して、自分で創業してみたい」と思うようになっていきました。そこで2015年7月に退社、11月にソナスを設立したのです。


公社の創業支援相談でアドバイスを受けながら計画を詰めていきましたが、現実は厳しく、物件や保育士の確保で難航、さらに区営の保育施設が5か所展開されるなど競合環境が急速に激化してしまいました。結果的に、再就職も視野に入れて仕切り直すことにしたのです。


ただ、起業はあきらめていないので、起業の参考になりそうなベンチャーに絞って就職活動をしていました。そんなときに、たまたま大学院の研究室で先輩だった鈴木(現CTO…最高技術責任者)と飲んでいて意気投合、「起業して一緒に勝負してみないか」という話になったのです。当時、大学院で研究を続けていた鈴木がUNISONetの原型となる技術を開発していることは知っていて、「この技術なら世界でも勝負できるのではないか」という話になったのです。これがソナス本格始動のきっかけでした。



創業助成事業に採択、さらにシリーズAで3・5億円調達へ


2017年4月、プランコンサルティングを受けながら、いよいよソナスの営業を開始しました。創業助成事業にも採択されました。公社の創業支援サービスの素晴らしいところは、相談から助成金の機会まで提供してくれる点です。また、プランコンサルティングでは、自分が書いた事業計画や予想数値について、プロの視点から客観的な意見を言ってもらえるのも有り難かったです。


2018年、ソナスはシリーズA(スタートアップ企業でベンチャーキャピタル等が最初に出資するラウンド)で3・5億円の資金調達に成功しました。これをばねに今後は海外進出も視野に入れながら、ソリューションを提供する業種も広げていきたいと思っています。



創業を目指す方へ~応援メッセージ~

「少しでも早く創業したい」と思いながら、この冊子を読んでいる方もいるかもしれませんが、あせる必要はないと伝えたいです。プランコンサルタントなど専門家の力を借りながらしっかりとリサーチして事業計画を練り、ベストタイミングを見きわめるのも重要なことです。


特に学生は急がず、一度は就職してビジネスについてひととおり学ぶのもとてもいいことだと思います。私は最初、ソニーという大手企業にいましたが、ソナスのような技術系スタートアップ企業(新しいビジネスモデルで急成長を目指すベンチャー)では、顧客は大企業の場合が多いので、大企業がどういう仕事の仕方をするのか、どういう観点で取引先を選定するのか、身をもって学んだことも、今とても役に立っています。


創業する場合、最初は副業で始めて様子を見ながら拡大していく方法もありますが、スタートアップ企業の場合は短期間で駆け上がる覚悟を決めてフルタイムで取り組むべきです。そして、仲間と率直にコミュニケーションを取りながら力を合わせていくことも大事です。

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