TOKYO創業ステーション創業事例集  今村 優希さま

株式会社Zrek(ゼレック)
インタビュー風景
AIの力を物理世界へ解き放ち、モノを「知的なパートナー」へ
工作機械の自律システムで、日本の製造現場にイノベーションを。

COMPANY INFORMATION

株式会社Zrek(ゼレック)

東京都渋谷区神南1-6-12
2021年4月創業。ソフトウェアの文化をハードウェアに持ち込み、製造現場向けにAIとロボティクスの技術を融合させた「オートノマス・システム(自律システム)」を提供。特に金属加工におけるNC旋盤の自動化に強みを持ち、既存の古い機械でも後付け(レトロフィット)で自動化できるシステムを開発。

代表取締役 今村 優希(いまむら ゆうき)

早稲田大学機械科学・航空宇宙学科卒。在学中に再生可能エネルギーの最適化制御を研究する傍ら、宇宙ベンチャーを含む複数のスタートアップに参画。生産現場の課題と最先端のソフトウェア技術の両面を理解する「エンジニア実業家」として、2021年、大学卒業と同時に株式会社Zrekを創業。

①起業のきっかけ
―模索の時期を経て見出した、前へ進むための「創業」という道―
インタビュー風景お仕事風景

大学卒業を控えた2021年、世の中はコロナ禍の真っ只中。研究も思うように進まず、就職活動では全ての会社から不採用の通知を受けました。「とにかく、前に進みたい」と卒業後の進路を考える中で心に浮かんだのは、高校時代の文化祭での体験でした。仲間とともに監督兼キャストとして演劇作品を創り上げる中、「自らが主体となった表現が人の心を動かし、世の中に良い影響を与えられる」と実感したことを思い出したのです。幸いにも、在学中からスタートアップへの参画や、仲間と事業の種を形にしようと切磋琢磨した経験があり、「創り出す」一手段としての「創業」は身近なものでした。 現在、株式会社Zrekは、製造業向けにAIとロボティクスの技術を詰め込んだ自律システムを提供しています。具体的には、金属を削り出す工作機械「NC旋盤」と、協働ロボットを連結・通信させ、AIによって自動で加工物を掴み、作業を行わせるシステムです。 最大の特徴は、「ソフトウェア・ファースト」である点です。高価な専用ハードを揃えるのではなく、AIがズレを吸収して状況を判断する「賢いソフトウェア」を後付けすることで、古い機械でも低コストで自動化できる「レトロフィット」を可能にしました。これにより、大手企業にしか導入できなかった自動化技術を、中ロットの生産を支える中小企業の現場にも届けることができるのです。 ちなみに、ロボティクス事業への参入に踏み切ったのは、私が大好きな香川の郷土料理「しょうゆ豆」の工場見学がきっかけのひとつでした。地域の食文化を守る大切な生産現場にも関わらず、何十年も更新されていない古い機械が稼働し、その一部の部品が壊れるとシステム全体を丸ごと取り替えなければならない。「なぜ、ソフトウェアのように柔軟に進化し、更新し続けることができないのか」という違和感を抱きました。 一方、私にとって身近なデジタルの世界では、ソフトウェアが日々更新され、AIが急速な進化を遂げています。この「ソフトウェアの世界」と「物理的な現場」とのギャップに、私は大きな変革の可能性を感じました。もし、ソフトウェアのように機械が日々更新され、現場を一番よく知る機械と人間が対話できたなら生産現場はもっと良くなる。そう直感し、生産システムの改革に取り組むことを決めたのです。

②事業化に事業化に向けて
―「現場を知る」専門家との対話で、ビジネスモデルを劇的に転換―
お仕事風景

TOKYO創業ステーションの存在を知ったのは、スタートアップについて調べていた在学中。1階のラウンジを、事業アイデアを練り上げる拠点として使わせていただきました。「プランコンサルティング」に申し込んだのは創業後のことでした。事業モデルを大きく転換しようとしていた時期で「事業の方向性を見直したい」と考えたのがきっかけです。当時、私はロボット本体を月額プランで提供する「RaaS(Robot as a Service)」というビジネスモデルを考えていました。しかし、製造業に造詣の深いプランコンサルタントの方から「中小企業にとって、毎月何十万もの定額を払い続けるのは負担が大きい。補助金を活用できるプランにしたり、ロボット本体ではなく、AIの更新や保守、データの活用等の場面で価値を提供し続けるべきでは」と助言をいただきました。この助言により、現場に求められ、かつ自社の技術も持続的に評価されるビジネスモデルへと修正ができました。「第三者からの客観的なアドバイス」は、主観に陥りがちな創業者の視野を広げてくれます。 また、ロボティクス事業は初期投資が非常にかさみます。TOKYO創業ステーションの「融資相談」・「プランコンサルティング相談」で事業計画書をブラッシュアップできたことも、資金調達の際の力強い後ろ盾となりました。

③これからのビジョンは?
―「物理世界の翻訳家」として、宇宙をも見据えた自律化社会を創る―
インタビュー風景

人間が機械を一方的に操作するのではなく、機械と人間が「対話」してともに働いている。それが、私の描く未来の生産現場です。機械が自ら考え、判断し、不具合があれば自律的に助け合う。そんな「モノが知的なパートナー」となる世界です。 短期的には、NC旋盤のAIオートメーション市場で圧倒的なシェアを得て、グローバルなニッチトップ企業を目指します。現在、日本の製造業は人材不足に直面していますが、これをロボットによるキャパシティの解放で解決したいと考えています。中長期的には、工場全体の自律化、さらには宇宙空間や月面での製造といった極限環境への展開も見据えています。 私は「物理世界の翻訳家」でありたいと考えています。デジタルの言い分と、物理的なハードウェアの言い分の両方を深く理解してつなぎ合わせる。それによって、テクノロジーが絵空事ではなく、社会の中で実際に稼働する仕組みを作っていきたいのです。生産システムの改革は、社会構造の改革そのもの。人がもっと創造的な活動に時間を使えるよう、挑戦を続けていきます。

④創業を目指す方へ~応援メッセージ~

創業を迷っている方には、その迷いやモヤモヤ感を大事にしてほしいです。生成AIが抱えることがないその葛藤が、いざ創業に向かったときに強いエネルギーとなるはずです。そして、創業を決めたなら「もしこの世界がシミュレーションだとしたら、何をするか?」と問いかけてください。心の底から実現したいビジョンを知り、それが誰かの役に立つためだったり、何か生み出したいという「生産的な決断」であるならば、迷わず一歩を踏み出してください。そして、TOKYO創業ステーションのような良質で手厚い支援を使い倒してください。