認定インキュベーション施設オンライン座談会

「中の⼈に訊いてみた! 創業⽀援施設のリアル」(施設取り組み/事例紹介)

「中の⼈に訊いてみた!


「中の人に訊いてみた! 創業支援施設のリアル」

「中の人に訊いてみた! 創業支援施設のリアル」は、起業を目指すみなさんを応援するTOKYO創業ステーション主催のトークイベント。イベントでは、創業者をじかに支援されている創業支援施設の運営者のみなさんから「インキュベーション施設のリアル」を伺い、各施設の特徴や支援の魅力に迫っていきます!
今回は、子育て中の方でも利用しやすい「託児所付き施設」のインキュベーションマネージャー(以下、IM)をお迎えしてお話しいただきます。


今回のゲスト紹介(参加施設と支援者)

 
中島 明

中島 明さん RYOZAN PARK IM


場づくりと関係構築、共創型プロジェクトのスペシャリスト。豊島区を中心にトーキョーのローカルで「暮らし、働く」動きを推進する。


 
森林 育代

森林 育代さん Cs TACHIKAWA IM


「幸せに暮らし・働く」社会を目指し、創業・就業・子育て・地域活性化事業を行うシーズプレイス代表。


 
林田 かよ

林田 かよさん インキュベーションハウス池上 運営責任者


2020年11月1日に大田区池上でオープンする施設の責任者。商店街の中にあるインキュベーション施設で、地域との交流スペースも。


 
堤 香苗

堤 香苗さん コワーキングCoCoプレイス IM


在宅でも仕事ができ、子育て期の女性もキャリアや主婦経験を生かした働き方ができると提案することを目的に「株式会社キャリア・マム」を2000年に設立。



TALK1 多様性がキーワード。各施設の魅力に迫る!


TALK2 大切なのは「幸せに生きるため」の支援


TALK3 「未来をはぐくむ場」を運営する自負



TALK1 多様性がキーワード。各施設の魅力に迫る!

オンラインでの開催となった本イベント。早速、各施設の特徴や魅力について語っていただきます! 2020年11月オープン予定のインキュベーションハウス池上については「こんな施設にしたい」という思いをお話しいただきます。


中島 RYOZAN PARK大塚は、100%英語教育が特徴の託児所を設けています。利用者の方は、子育て環境についても自分らしい考えをお持ちの印象です。ここは、シェアハウスからスタートしたのがユニークなところ。暮らす中でカップルができて、子どもが生まれ、子育てしながら働ける場所がほしい! という自然な流れから始まった施設です。

託児所付きインキュ施設でネイティブの英語に触れられる保育は特徴的。画像はRYOZAN PARK 大塚
託児所付きインキュ施設でネイティブの英語に触れられる保育は特徴的。
画像はRYOZAN PARK 大塚


森林 多摩地域の中心にあり、自然豊かな環境がシーズプレイスの魅力です。創業・就業・子育て・地域活性化・ダイバーシティ推進事業を行う企業が運営する施設には、子育て中の方はもちろん、起業家、お勤めの方、フリーランスの方もいらっしゃいます。新型コロナの影響は大きいですが、様々なイベントも盛り上がっていたので、本格的な再開を待ち望んでいます。

林田 インキュベーションハウス池上は商店街の中にできる施設なので、地域に開かれた場にしていきたいと思っています。地域に根ざしたビジネスを育てるにもいい場所になると思います。東京都の支援制度をご紹介したり、専門家をお呼びした創業セミナーも予定していて、起業の入口支援に力を入れたいです。

 コワーキングCoCoプレイスは、子どもの様子を見守りながら仕事ができる、託児所併設のコワーキングスペースです。ひろびろとした屋外庭園で自由に遊べますし、地元多摩の木材を使ったスペースは、大人も子どもも心地よく過ごせます。貸会議室・イベントホール、カフェもすぐそばにあるので、セミナーを開いたりカフェでミーティングしたりと多様な使い方ができます。


では、実際にどんな取り組みや設備が利用者の方によろこばれていますか?



中島 「チャレンジする人の背中を見せること」は常に意識してきました。実際に活躍している人のそばにいると、自分にもなにかできそう! というイメージが湧いてきます。セキュリティ上、7階の託児所に自由に出入りはできませんが、6階はバリバリの起業家たちがいるフロア。多彩な属性の人たちと出会えるので、お互いに刺激を受けるようです。
フロアを超えた交流に一役買うのが、食を通した交流。キッチンでごはんをつくって一緒に食べているうちに、マネージャーである私が相談に乗らなくても、もやもやが解消していることはよくあるみたいです(笑)。

キッチンからは、手前側の託児スペースをガラス越しに一望できる空間。画像はRYOZAN PARK 大塚
キッチンからは、手前側の託児スペースをガラス越しに一望できる空間。
画像はRYOZAN PARK 大塚


 設備でいうと、お子さんものびのび遊べる託児所と、落ち着ける仕事場の環境がよろこばれていますね。屋上庭園や公園も近く、都心とは一味違う働き方を選択できると思います。利用者の方は、教育関係の仕事や、豊かな感性を活かした仕事をされている方が多くて、感度の高い方同士の交流から新しい仕事が生まれていたりします。会員さん向けのセミナーなども、積極的に活用されています。

多摩の木をふんだんに使った保育室も特徴。画像はコワーキングCoCoプレイス
多摩の木をふんだんに使った保育室も特徴。
画像はコワーキングCoCoプレイス


林田 起業の相談を受けて必ず行うのは「その事業が、ご本人と社会のためになるか」を、相談者と一緒に深く考えること。世の中に必要とされる見込みが薄いと、事業を続けても虚しくなる可能性が高いので、「本当に社会に役立つ? 役立つにはどうしたらいい?」と問いかけを繰り返し、考えを深めてもらうことを大事にしています。

森林 シーズプレイスが大切にしている取り組みは、多様な人がつながりあえる工夫。マネージャーを起点にちょっとした雑談をして、日常的に会員さん同士が知り合うきっかけをつくったり、参加しやすい交流会を企画したりしています。あと、託児所が併設なので、自宅で仕事をしていた方は特に仕事に集中できるようになり、クライアントからの信頼もアップしているようです。

雑談も交流のきっかけを作る重要ポイント。
雑談も交流のきっかけを作る重要ポイント。
画像はCs TACHIKAWA



TALK2 大切なのは「幸せに生きるため」の支援

11月オープンの施設にはこれまでの創業支援経験も生かす。画像はインキュベーションハウス池上
11月オープンの施設にはこれまでの創業支援経験も生かす。
画像はインキュベーションハウス池上


森林 林田さんが懸念されるとおり、現状、子育て中に起業される女性は少ないです。まれに起業される場合も、自宅でできる業態や規模感を選ぶケースが多い。シーズプレイスもオープン早々、子育て中の女性に特化した支援は経営的に難しいと悟りました。女性だけ、ベンチャーだけ、若者だけと対象を狭めすぎると、補助金なしの経営は難しいと思います。

 ある意味「余分なもの」を抱える施設は、利益追求が目的では運営できないですね(苦笑)。子どもを預け、そのすぐそばで仕事をするというスタイルが根付くには時間がかかるかなと感じています。今、子育て中の会員もいらっしゃいますが、今後は、大人数の保育園などではケアが難しいお子さんを迎える体制を整えるなど保育受け入れの幅を広げ、より多くのお母さんの助けになれたらとも考えています。


――では、女性会員の支援で心掛けていることはありますか?


森林 起業にこだわらず、自分のことを自分の意志で決めるための後押しをしたり、幅広い生き方を提示して、「どうしたら幸せに生きていけるか」を考えるためのサポートを重視しています。マネージャーは会員さんのお話にじっくり耳を傾けます。コワーキングスペースにいると、頑張っている人を見てやる気が高まったり、自分の未来を応援してくれる人がいる。そんな環境に身を置くことは価値があると思います。


身近に見れる子どもの成長は何よりの応援。画像はCs TACHIKAWA
身近に見れる子どもの成長は何よりの応援。
画像はCs TACHIKAWA


林田 起業の相談を受けて必ず行うのは「その事業が、ご本人と社会のためになるか」を、相談者と一緒に深く考えること。世の中に必要とされる見込みが薄いと、事業を続けても虚しくなる可能性が高いので、「本当に社会に役立つ? 役立つにはどうしたらいい?」と問いかけを繰り返し、考えを深めてもらうことを大事にしています。

 森林さんと近いですね。「人生を謳歌できるなら、どんな選択肢もあり!」と伝えたいと思っています。起業に強くこだわらず、女性の生き方支援をしているイメージです。子育て中の方には、この場を通して「子どもがいても、自分のやりたいことを諦めなくてもいいよ! できるかもよ!」って伝えたいですね。


TALK3 「未来をはぐくむ場」を運営する自負

想像以上に託児所付き施設の経営は大変だというリアルを教わった気がします。それでも、運営しようと思える原動力はなんでしょうか。

 まずは、自分の経験ですよね。私は子どもが2歳のときに起業し、その後次男は0歳から保育園に入れたので、「歩いた」「喧嘩した」「ご機嫌でした」といった子供の成長については、全て保育園のノートで知る事になり、もう少し普段の子どもの様子や成長ぶりが見たかったなぁという後悔がありました。託児所のそばで働けるなら、そんな後悔をするママたちが少しは減るんじゃないかと。

中島 確かに、うちに入居される女性の中には、「第一子の成長を見守れなかったことに悔いが残って、二人目は、出産後の働き方を見直したかった」と話す人もいます。

林田 託児所を持つ施設側も「子育ての現場がすぐそばにある働き方っていいよ!」とPRできるといいのかもしれませんね。自転車で施設に子どもと来て、子どものそばで仕事をして夕飯前に帰る。そんな「身の丈起業」を提案できる気がします。

職場と居住地が身近でのびのびした施設を目指す。インキュベーションハウス池上
職場と居住地が身近でのびのびした施設を目指す。
インキュベーションハウス池上

中島 あと、起業家がたくさんいる環境は、子どもが育つ場としていいなと思うんです。子どもって、そばにいる大人から言葉や振る舞いを学びますよね。昔は、親以外の町の大人と触れ合う機会も多かったけど、今はなかなか難しい。昔の当たり前が、今は託児所つき施設で起きているんじゃないかな。自立した起業家はユニークな人が多いし(笑)。
逆に、子どもがいない会員さんが「子どもがほしくなる」って話してくれるのもうれしい変化でした。


最後に、施設のこれからについて、そして起業を目指す女性、働き方を見つめ直している女性へメッセージをいただきました。


 CoCoプレイスは、2019年度にキッズデザイン協議会会長賞を受賞しました。『コワーキング施設に保育士・看護士が常駐する保育室を併設することで、「預けるか、手元に置くか」ではない、第三の選択肢を実現した』と評価されたんです。かっこよく言うと、子どもたちの未来を育みながら、これからの働き方をつくっていけることが託児所付き施設を運営する醍醐味ですし、会社員よりも守られない立場でチャレンジする起業家に、よりそいたいという思いがあります。託児所付き施設での働き方を広めたいし、コワーキングCoCoプレイスをしっかり維持したいです!

充実した保育体制で利用者に寄り添う。コワーキングCoCoプレイス
充実した保育体制で利用者に寄り添う。
コワーキングCoCoプレイス


中島 RYOZAN PARK大塚にいた3組の起業家が、「地方で同じような施設をつくりたい」と巣立っていきました。挑戦者たちが集まる施設で多様な大人に触れる機会が、子どもの豊かな成長につながると思います。育てる、働く、住むは全部つながっていることをここから発信したいです。

林田 インキュベーションハウス池上も、地元の方や多様な起業家が交流できる場にしたい。お庭や屋上といったオープンスペースを生かして池上というローカルに馴染んでいけたらと思います。会員さんや地元の方のご意見も反映させながら、少しずつつくっていきます。起業という選択肢が浮かんでいない方も大歓迎なので、オープンしたらぜひ気軽にいらしてください!

森林 運営は大変ですが、「子どもたちを育てることで、大切な未来をつくりだせる」というやりがいがあります。働き方を見つめ直したい女性には「マネージャーの私に会いに来てくだされば、モチベーションアップできます!」と伝えたいです。やってみたいことや働き方のお悩みなどがあれば、ぜひご相談ください。


最後は、オンライン上で記念撮影! 各施設が抱く支援への思い、子育て中の方にうれしいサポートなど、リアルな一面を伺うことができました。気になる施設、お近くの施設など気軽に覗いてみると、新しい世界が広がりそうです。



参加施設のご紹介

RYOZAN PARK 大塚 東京都豊島区南大塚3丁目36−7 T&Tビル7F

RYOZAN PARK 大塚


CsTACHIKAWA 東京都立川市錦町1丁目4−4

CsTACHIKAWA


インキュベーションハウス池上 東京都大田区池上7丁目2-7
≪2020年11月オープン(予定)≫



コワーキングCoCoプレイス 東京都多摩市落合1丁目46−1 ココリア多摩センター7F

コワーキングCoCoプレイス



 
岡島 梓

ライター 岡島 梓

150名を超える経営層・事業家へのインタビューを行い、ビジネス系メディアでの執筆多数。記事の作成、キャッチコピーの開発を通じ、取材対象 者の思いや魅力を伝わりやすく再構築している。
早稲田大学第一文学部卒業後、2007年東京地下鉄株式会社へ入社。人事業務に従事し、退職後にライターとして活動。2020年、インタビュアーとグラフィッカーがお客さまの思考の言語化をサポートする「ビジュアルインタビュー」をスタート。



※ 本座談会レポートは『認定インキュベーション施設IM座談会』に参加した当時の情報を、レポートとして掲載したものです。実際にご利用される場合は、各施設にお問い合わせの上ご利用ください。

※認定インキュベーション施設は、優れた創業支援を行う計画を定めた施設を、東京都が認定した施設です。東京都中小企業振興公社は、認定インキュベーション施設のうち要件を満たす施設に対し、施設を整備する際の補助金などを交付し、事業の充実を支援しています。