事業計画書で一番差がつく「競合分析」の書き方── 「競合がいない」は一番危ない

事業計画書で一番差がつく「競合分析」の書き方
── 「競合がいない」は一番危ない

事業計画書で一番差がつく「競合分析」の書き方── 「競合がいない」は一番危ない

起業に向けた一歩を踏み出す際、避けて通れないのが「事業計画書(ビジネスプラン)」の作成です。自分のアイデアを形にするプロセスの中で、多くの起業志望者が頭を悩ませる項目があります。それが「競合分析」です。商品の内容、価格、ターゲットとする顧客層についてはスムーズに書けても、「競合との違いは何ですか」という問いに直面すると、途端に手が止まってしまう──。そんな経験を持つ方は少なくありません。 中には、「自分の事業はユニークなので競合は存在しない」と記載してしまうケースもみられます。しかし、これは事業計画書を作成する上で、最も注意すべき「落とし穴」のひとつです。今回は、起業準備においてなぜ「競合分析」が重要なのか、そして専門知識がなくても事業の強みをロジカルに整理できる具体的な手順をご紹介します。

事業計画書の「競合分析」欄、なぜ手が止まるのか

競合分析の記載が進まない最大の理由は、起業準備における時間の多くを「自分の事業をどう作るか」に費やしているためです。起業を志す多くの方が、

  • 商品・サービスの設計
  • 価格の設定方法
  • プロモーションや集客方法の検討

など、「自分の事業をどうするか」に時間を費やし、「外の世界」、つまり他社や市場の動きに目を向ける視点は、後回しになりがちです。 また、「身近に同じような事業をしている人が見当たらない」という理由から、主観的に「競合は存在しない」と思い込んでしまうケースもあります。しかし、視野を広げて市場をみてみると、全く同じ業態ではなくても、「顧客が抱える同様の課題を解決している存在」が必ず見つかります。 競合分析が手薄な計画書はと、外部に対する説得力が低下するだけでなく、市場における自社の立ち位置(ポジショニング)を見失う原因にもなります。

「競合はいません」が一番危ない理由

あなたは今、競合をこう説明できますか?

事業計画書に「競合はいない」「差別化できている」という記載がされていてるのを見た時、融資を審査する金融機関や、起業支援機関の担当者はどう受け止めるでしょうか。 多くの場合、審査の現場において「競合がいない」という記述は「市場調査や顧客理解が不十分である」というシグナル(黄色信号)として受け取られます。

どれほど革新的で独自性のある事業であっても、顧客が抱える悩みやニーズに対して、何らかの形で対応している既存の選択肢(既存の製品・サービス、あるいは顧客自身の工夫など)が存在するのが通常です。それが見えていないということは、顧客視点やマーケットの理解が浅いと判断されてしまうのです。

反対に、競合の状況を具体的に把握し、その中で自社がどのようなポジショニングを選択するのかを論理的に説明できれば、「市場環境を正しく理解し、客観的にビジネスを設計している」という安心感と信頼を与えることができます。 競合分析とは、自社の弱点を探すネガティブな作業ではありません。むしろ、市場に対する自社の理解の深さを論理的にアピールする前向きな項目なのです。

あなたは今、競合をこう説明できますか?

具体的な整理の手順に入る前に、一度立ち止まって現在の状態を確認してみましょう。以下の4つの問いに、明快に答えられますか?。

  • 「3つの競合(直接競合・間接競合・代替手段)」を明確に区別して説明できるか
  • 競合と比較した自社の「独自の立ち位置(ポジショニング)」を一言で定義できるか
  • 競合の弱みを指摘するのではなく、「自社の優位性」を軸に差別化を語れるか
  • 価格やサービス内容だけでなく、多角的な軸で他社と比較できているか

すべてに即答できた方は、競合分析の土台ができています。ひとつでも回答に「うーん」と迷った項目があった方は、ぜひ次のステップに沿って整理を進めてみてください。

競合分析の基本:3つの競合を見分ける

あなたは今、競合をこう説明できますか?

競合を分析する際は、競合を一括りにせず、次の3つの層に分類して整理するのが実務的なアプローチです。

直接競合

自社と類似した商品・サービスを、同様の顧客ターゲット層に対して提供している事業者です。

例えば、「地域密着型のオーガニックカフェ」を開業する場合、近隣地域に存在する同価格帯・同コンセプトのカフェや喫茶店がこれに該当します。最も認識しやすい競合ですが、ここだけに意識を奪われると、価格競争やサービスの同質化に陥るリスクが高まります。

間接競合

提供する商品・サービスの形は違っても、結果として「顧客の同じ課題・ニーズ」を解決している事業者です。

例えば、多忙なビジネスマンの「食事の負担を軽減し、手軽に栄養を摂りたい」という課題に対しては、飲食店だけではありません。「持ち帰り専門の惣菜店」や「ミールキット配送サービス」、「冷凍食品」や「栄養ドリンク」など、顧客の「有力な選択肢」として並び立つ存在がすべて間接競合となります。

代替手段

事業者が提供する商品・サービスを利用するのではなく、顧客が自ら、あるいは別の方法で課題を解決する「行動そのもの」を指します。

例えば「自炊する」「家族に調理してもらう」「食事自体を我慢する」といった選択肢も、立派な代替手段です。ここを見落とすと、「なぜ顧客は、お金のかからない手段ではなく、わざわざお金を払ってまで自社サービスを選ぶのか」という、自社ビジネスの根本的な意義に答えられなくなります。

この3層で整理すると、「競合がいない」と感じていた事業であっても、顧客の財布(シェア)を競う競合対象がはっきりと見えてきます。重要なのは、単に競合をリストアップすることではなく、「これらの選択肢があるのに、顧客はなぜあえて自社を選ぶのか」を言語化することです。

【自問してみましょう】あなたの事業の直接競合・間接競合・代替手段を、それぞれ1つ以上挙げられますか?顧客は今、その課題をどうやって解決していますか?

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ポジショニングマップで「立ち位置」を可視化する

競合を3つの層で整理したあとは、市場で自社の優位性を一目で示せる「ポジショニングマップ」を作成します。これは、2本の直行する軸を組み合わせ、自社と競合の位置関係をマッピングするフレームワークです。 軸の選び方に決まったルールはありませんが、自社に都合の良い基準ではなく、「顧客が実際に購入・利用を決定する際の重要な判断基準」を軸にすることが重要です。例えば「価格の高さ・低さ」と「専門性の高さ・低さ」、あるいは「利便性・納期までの長さ・短さ」と「カスタマイズ性(オーダーメイド・既製品)」といった組合せが考えられます。

ポジショニングマップ

図の上に競合と自社を配置してみると、他社がどの領域に密集しているか、あるいは、競合が手薄な領域を確認することができます。そして、競合がいない「空白地帯」を見つけた場合は注意が必要です。なぜなら、「誰もいないのは、単にそこに顧客の需要(ニーズ)が存在しない」可能性があるためです。 空白地帯をターゲットとする場合、「なぜそこに競合がいないのか」を検証し、「にもかかわらず、自社がその需要を開拓できる」ことを論理的に説明できて初めて、説得力のある事業計画書となります。

【自問してみましょう】自社にとって重要な軸を2つ選んでみましょう。その軸の上に、競合と自社を置いたとき、自社はどのあたりに位置しますか?

まとめ──問いかけることが、決断への第一歩

今回ご紹介した競合分析の整理法を、もう一度振り返ってみましょう。

  • 直接競合 ── 同じ商品・サービスを同じ顧客に提供する存在
  • 間接競合 ── 違う形で同じ悩みを解決している存在
  • 代替手段 ── 顧客が取りうる「別の方法」
  • ポジショニングマップ ── 2つの軸で自社の立ち位置を可視化する方法

競合分析は、「競合に勝つための武器探し」ではなく、「顧客が自社を選ぶ理由を言葉にするための整理作業」です。3層の整理とポジショニングマップを組み合わせることで、「競合がいません」という曖昧な記載から、根拠のある差別化の説明へと変えていくことができます。

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倉島先生
著者:TOKYO創業ステーションTAMA プランコンサルタント 倉島 悠輔(くらしま ゆうすけ)先生

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会社員時代に長く法務部門に属し、【丁寧なヒアリング】と【わかりやすい言語化】をモットーとする。 副業から独立に至り、独立後は経営理念・経営戦略の策定支援を中心に支援を行い、クライアントから高評価いただき長期契約も多数。小手先ではなく、戦略を大事にする支援が得意。好きな言葉は「夢なき者に理想なし、理想なき者に計画なし、計画なき者に実行なし、実行なき者に成功なし。故に、夢なき者に成功なし。」(吉田松陰) 中小企業診断士

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